372:11月に関わる通達事項
「諸君。文化祭お疲れ様だ! 幾つかのトラブルもあったが、またこうして全員無事にミーティングに集まる事が出来て、先生は非常にホッとしている。本当に良かった!」
本日は2024年10月28日月曜日。
10月にある月曜日の最後であると同時に、文化祭が終わって最初の一年生のミーティングの時間となった。
と言うわけで、いつもの面々がいつもの教室に集まって、味鳥先生の言葉と共にミーティングが始まる事となった。
「さて、諸君らも知っての通り、今週の金曜日からは11月に入る。そして、決闘学園の11月だが、体育祭や文化祭ほどではないものの、他の月に比べると少々通達事項が多い。そのため、今日のミーティングでは、それらについて一通り話す事になる」
「……。しっかりと聞いておいてくださいね。皆さんにも関係のある話が多いので」
通達事項が多いのか。
あー、でも、うん、俺でも幾つかは思いつくし、確かに他の月に比べると多いかもしれないな。
とりあえず、俺も含めて教室に居る全員がしっかりと聞く態勢を作る。
「一つ目。現在は仮加入となっていた生徒会と風紀委員会の一年生メンバーが、11月に入ると共に正式加入となる」
「そう言えば、まだ仮だったか。忘れてた」
「適性のない子は仮加入もさせてもらえないから、正式メンバーにさせてもらえなかったは滅多にない事だけどね」
この教室に居る生徒だと……。
吉備津が生徒会に、羊歌さんと大漁さんの二人が風紀委員会に正式加入、と言う事になるようだ。
とは言え、三人が正式加入になったからと、俺たちとの付き合いが大きく変わるようなことは無いだろうけど。
「合わせて、各委員会とサークル、それと寮の役職にて、来年度に向けた引継ぎを開始してもらう事にもなる。とは言え、引継ぎに主に関わるのは引継ぎ先である二年生と教える三年生なので、大きな影響がある生徒は少ないだろう」
「へー」
「まあ、私とナル君には関わりが薄い話だね」
各種引継ぎも11月に入ったら始まるらしい。
そうか、文化祭が終わった時点で、学校行事の中で委員会やサークル単位で関わるべきイベントも無くなるから、此処から三年生が卒業する3月までの間に引継ぎをしてしまうんだな。
ただ、スズの言う通り、俺には関わりが薄い話だな。
サークル『ナルキッソスクラブ』は俺が在学している間だけのサークルになるし、メンバーも全員一年生で、引継ぎとは無縁。
委員会や寮の役職との関わりも薄いし……うん、この件については何もないな。
「二つ目。これまでは学園がセッティングし、授業として行っていた決闘は一対一のみだったが、11月からは小隊戦も開始される。特に11月については必ず全員が小隊戦となるので、メンバーが決まっている生徒は訓練を重ねておくように。メンバーが固定でない生徒も、備えておくように」
「小隊戦か……」
「訓練の積み重ねを見せる時だね」
小隊戦……6月に結成して、それから暇を見ては訓練をしていた奴だな。
俺の場合、俺、スズ、イチ、マリーの四人で学園に登録してあるので、この小隊で、他の小隊に当てられることになるだろう。
「……。この小隊戦ですが、一つ緊急で伝えておくべき事項があります」
「緊急事項?」
「……。皆さんも知っての通り、文化祭で決闘学園の生徒である燃詩さんがコマンダー戦の発表を致しました。このコマンダー戦ですが、既に世界各国へ理論や理念、必要な機械の輸出などが始まっており、将来的には国際戦でも用いられることがほぼ確定となっています」
コマンダー戦……俺とドライロバーが決闘する時に使った奴だな。
コマンダーと言う結界の外から支援を行える専用の役職を用意した決闘方式だ。
その特性上、必ず複数人の決闘者が必要になるのだが、今ここで、その話を出してくると言う事は……。
「……。そして開発者が学園の生徒であるおかげで、学園には既に必要な設備の導入が済んでおります。これは非常に大きなチャンスです。先駆者になれる機会でもあります。よって、学園では11月に入って以降ならば、コマンダー役を置くための機械を希望者に貸し出す準備があります」
「樽井先生。それは練習だけでなく、決闘でも使ってよいという事ですか?」
「……。その通りです」
「「「ーーーーー~~~~~」」」
樽井先生と巴の言葉に教室が軽くざわつく。
だが俺としては、やっぱり、と言う感想しか出て来なかったので、落ち着いている。
と言うのも、これは一応の経験者としての感想となるのだが。
小隊そのまま四人でも、一人をコマンダーにして残りの三人で戦うにしても、個人の適性を抜きにして考えるなら、戦力的には両者にそこまでの差は生じないだろうと感じているからだ。
まあ逆に言えば、小隊の中に一人コマンダーの方が明らかに向いているメンバーが居る場合は、コマンダー役が居る方が強くなるのだけど……。
結局やる事に変わりはないのだから、ざわつくほどのことは無い。
これが俺の感想である。
「静粛に。まだ通達事項はあるぞ。三つ目、魔力量の一斉検査並びに『ドレスパワー』の試用と解析も11月中に行われる事になる」
「……」
「スズ。落ち着くようにな」
「……。大丈夫だよ、ナル君」
さて、まだ通達事項はあるらしい。
魔力量の一斉検査は……日本全国の中学三年生、学園の生徒、現役の決闘者を対象とした奴だな。
去年受けたこれで俺の魔力量が甲判定である事が判明し、学園の入学が決まったんだよな。
で、その時のショックやら何やらを思い出しているのか、スズが割と形容しがたい感じの顔をしていた。
学園の生徒と現役の決闘者も対象にしているのは、成長のデータが欲しいとか何とかだったはず。
ちなみに、それなりのお金を払えば、全国何時でも、上記の枠に入っていない人間も魔力量の検査をする事は可能だったはずだ。
やる人はそう多くないはずだが。
それと、『ドレスパワー』の試用と解析と言うのは……少し前に話が出てた奴だな。
まあ、俺は常日頃から使っているので、特に気にすることは無い話だな。
「最後に四つ目。これは学園行事ではないが、『ペチュニアの金貨』と呼ばれる危険物についてだ」
最後は『ペチュニアの金貨』についての注意事項。
もしも見かけたら、教師に通報。
もしも持っているなら、教師に提出。
との事で、具体的にどう危険なのかは語られなかった。
とは言え……今この場に居るメンバーなら、ペインテイルやドライロバーと俺がした決闘については知っていて当然だし、少なからず情報は得ている事だろうから、危険な事までは把握しているだろう。
「重ねて言うが。決して、自分一人で対処しようとは思わないように。『ペチュニアの金貨』は非常に危険な代物なのでな」
ちなみに、スズ曰く。
闇のオークション(合法)で『ペチュニアの金貨』を競り落とした人物は既に判明している。
が、この人物はペインテイルの決闘風景を見た時点で、その恐怖から学園近くの山に廃棄。
ならばと教師たちと警察が山の中を捜索したが見つからず。
状況から見て学園内の誰かが隠し持っているのではないか、と言う話になっているらしい。
中々に困った話である。
「以上で大きな通達事項は終わりとなる。では続けて……」
いやしかし……本当に通達事項が多かったな。
まあ、俺の個人的な要件も含めて、一つずつ確実にこなしていくとしよう。