表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
8:文化祭編
337/499

337:文化祭二日目・魔力による変色現象

「お疲れ様、翠川」

「諏訪も対応ありがとうな」

 俺の父親たちが去ったところで、俺、スズ、マリーの三人はブースの中に戻る。

 そして、ブースの中に居る人間の内、イチ以外が何か言いたそうな顔をしていると言うか、周囲の人たちも一部は何か質問したそうにしているな。

 なので、俺は諏訪に視線だけで言葉を促し、諏訪も軽く頷いてくれる。


「失礼な話になってしまうかもしれないけれど、翠川とそのご両親って本当に似ていないんだね」

「そうだな、似てないぞ。おかげで、小学生ぐらいの頃はスズ共々、取り換え子(チェンジリング)だの、何処かからか浚われてきただの、散々に言われた」

「懐かしいね。私も髪を染めただとか、お婆さんだとか、色々と言われた覚えがあるよ」

 俺とスズの言葉に諏訪は苦笑いをする。

 まあ、この話を聞けば当然の話ではあるな。


「あー、翠川の地元の人たちって、魔力の影響で容姿に変化が生じる事を認識してなかった人が多かった感じ?」

「どうだろうな?」

「うーん、微妙に田舎だった分だけ、その手の知識の伝達が都会より遅れていたのは確かじゃないかな。後、多くは無かったと言うか、段々と減っていったと言うか……私たちが中学生になるくらいには、そう言う事を言う方が白眼視されるようになってたし……総合して普通くらいじゃない?」

「なるほど」

 諏訪の言う魔力の影響で容姿に変化が生じると言うのは、俺たちの世代……より正確に言えば、俺たちの二つ上、麻留田さんの世代で生じ始めた変化だ。

 変化の内容としては、スズの白色の髪や巴の赤い髪のように、あるいはイチの赤い目の色のように、それまでの世代の純粋な日本人ではほぼ現れなかったであろう色が、遺伝とは関係なく現れる現象と言う事になる。

 変化が起きる対象も様々で、髪や目の色が変化するのが一般的ではあるけれど、肌の色や爪の色だけが変わるパターンなんてのも存在するらしい。

 おかげで、俺たちの世代からは他人の髪の色や目の色でどうこうと言うのは、一部のどうでもいい連中のどうでもいい言動でしか見られなくなった。


 なお、俺の容姿については、基本的にはユニークスキル『恒常性(ホメオスタシス)』によって保全されたおかげではあるが、親の遺伝を感じさせないほどに整っているのは、この現象もあるのではないかと言われている。

 だから、今この話題を出しているわけだしな。


「ま、この件で色々とトラブルを被った人たちに比べたら、俺たちは気にするレベルじゃない」

「そうだね。酷いところは本当に酷いって聞くし。気にしている人は……気にしているからね。それに比べたら、私たちはって感じ」

「そうなんだね」

 さて、この現象だが、未だに原因も過程も良く分かっていない。

 魔力量の多寡に関係ないのは確実なのだが、逆に言えば、他に魔力のどんな要素が関わっているかは分からない。

 ただ、最初の一人目が産まれてから、三か月ほど経ったところで、女神によって魔力の影響なので気にしなくていいと言う通知が世界中にされただけである。

 とは言え、この情報が広まる前には生まれた子供の目の色や髪の色を巡ってアレコレあったそうだし、中には命を奪われた子供も居たそうだし……世界中を巻き込んだトラブルだったのは確かだ。

 そして、今でも一部の地域では、この話が知られていないと聞くので……まあ、厄介な話でもあるな。


「ちなみに俺の親父曰く『で? 鳴輝が取り換え子だったとして、それの何が問題なんだ?』だそうだ」

「強いなぁ。翠川のお父さん」

「後、もう一つちなみに、取り換え子じゃなくてオカンの不倫を疑う声があった時にはこう言った。『俺を選んだ女が顔が良いだけの男に誘われるとでも?』だそうだ」

「本当に強いね。戦闘力と言う意味ではなく、心がだけど」

「だから俺は親父を尊敬してるし、ああなりたいと思っている」

「うん。それは分かる」

 これは余談となる分野の話だが。

 俺と母親に対する各種疑惑に対して、躊躇いなくこう言い切ったから、俺の父親は本当に格好いいと思う。

 なお、更なる余談としては、これを言った後、両親の距離が数か月ほどやけに近かったのは覚えてる。

 まあ、俺には妹も弟も居ないのだけれど。


「ところでスズのご両親の方はどうだったのですカ?」

「私の髪の色がこうだと分かった時点で調べて、それで現象の事は知ったと言ってたよ。だから、学校の教師に染髪疑惑を掛けられた時は、比喩表現だけど、真正面から殴り込んではっ倒した」

「ロジカルにバイオレンスですネェ」

「ですが、それで正解だと思います」

 なんにせよだ。

 この件はマトモな親なら、きちんと調べて、子供にきちんと話をして、教えられるものだ。

 逆に言えば、それが出来ていないのなら……まあ、色々とお察しではある。


「「「ーーーーー!?」」」

「ん?」

「遠くのブースの方で何か起きたみたいだね」

 と、此処で遠くの方から大きな声と言うか、ざわつきが伝わってきた。


「既に収まったようです。大した問題ではなかったのでしょう」

「ですネ。気にする必要も無いと思いまス」

「そうだね。後で風紀委員会のお知らせだけ確認しておけば良さそう」

 だが、直ぐに収まったあたり、トラブルだったとしても大したものでは無いようだ。

 なら、気にしなくても良さそうだな。


「おっす。戻って来たぞ、お前ら」

「岩上先輩」

 それよりも岩上先輩たち『Rock On YYY』の四人が無事に戻って来てくれた方が大切だな。

 これで俺たちは次の予定の為の行動が出来る。


「それではブースの方、よろしくお願いします」

「ああ、任せておけ」

 と言うわけで、俺たちは岩上先輩たちにブースを任せると、戌亥寮の出し物に関わるべく、大ホールの方へと向かった。

05/04 誤字訂正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
実際そういうことがあるっていう事前情報のなかった世代だと純日本人に生まれるはずのない色彩を持ってる子が生まれて母親の不貞が疑われて離婚、そこから「お前が生まれたせいで」って母親に恨まれて殺されたり育児…
ナルのイケメン力は父親譲りみたいですね。
>生まれた子供の目の色や髪の色を巡ってアレコレあったそうだし、中には命を奪われた子供も居たそうだし 某コズミック・イラの「目の色が違うわ!返品!」みたいな事が起きてたのか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ