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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
8:文化祭編
318/499

318:予定合わせ

「ナル様。お隣よろしいでしょうか」

「構わないぞ、巴」

 文化祭の為の顔合わせをした翌日。

 スズたちと一緒に食堂で昼食を取っていると、巴がやって来た。

 どうやら何か話があるようだ。


「その……ナル様の文化祭の予定はどうなっているでしょうか?」

「そうだな……今のところはこんな感じだな」

 とりあえず文化祭の予定を聞かれたので、現状どうなっているかをスズとも確認しつつ、巴に見せる。

 俺の予定を確認した巴は一瞬嬉しそうな顔をして……それから、とある時間を指さす。


「実は文化祭二日目の大ホールで、私は演武をお見せする予定があります。そ、その……見に来ていただけませんか!?」

 うん、予想通りと言うか、予定通りだったな。

 そこでなくとも、虎卯寮が大ホールで出し物をする時間については、巴が出てくる可能性を考えて、予め空けておいたので、俺のこの後の答えは決まっている。

 だがここで重要なのは、裏側で実はそうなっていたのを一瞬たりとも疑わせない事。

 だって巴が勇気を振り絞り、覚悟を以って、俺に尋ねて来た事実は何ら変わりないのだから。

 俺に求められているのは、その行動に相応しい態度と答えであって、知ってたなどと言ってマウントを取る事ではない。

 なので俺はこの辺の感情は隠しきった上で、口を開く。


「勿論。喜んで、見に行かせてもらうとも」

「ナル様……」

 うん、喜んでもらえたようで何よりだ。

 実際、楽しみではあるんだよな。

 聞くところによれば、マスカレイドを用いた演武であるらしいので、仮面体の機能とスキルをフル活用するらしく、演武だからこそ出来る見せ場もあるとかで、見ていて楽しそうな予感がしているのだ。


「ところでナル様。ナル様は戌亥寮の出し物で何をするのでしょうか? 見たところ三日間、常に出る事になっているようなのですが」

「あー……ルーレット係をやる事になった。宣言決闘の奴な」

「ルーレット係……」

 巴の視線がスズに向かう。

 対するスズは笑顔で親指を上げている。

 それを受けた巴は……何かを察したかのように、嬉しそうな顔で親指を上げた。


「二人の仲が良くてナニヨリダナー」

「そうですね」

「これを仲が良いで済ませていいんですかネ?」

 巴とスズの間には言葉のやり取りは何もなかった。

 スマホなどを操作した様子も見られない。

 だが、通じ合いはしたようだ。

 でもそうか、巴は俺のバニーガールを望む側なんだな……。

 なお、イチとマリーは若干呆れ気味である。


「それでスズ。具体的なところは?」

「あ、うん。こんな所。当日まで漏らさないでね」

「勿論です」

 と思っていたが、流石に細部まで伝わっていなかったらしい。

 巴にだけ見えるように、スズがスマホの画面を見せて、あれやこれやと言っていて……なんか巴の顔が微妙に赤くなりつつあるな。


「流石に全部が伝わっている訳じゃなかったのか」

「みたいですネ」

「でも、同じ穴の狢、と言う熟語は思い浮かびます」

 そうして最終的にはスズと巴はガッチリと握手を交わしていた。

 まあ、仲が良いことに変わりはないから、問題は無いな。


「コホン。ところで巴、他に文化祭の最中に一緒に回りたい場所があるとか、そう言う話はあるか? 今ならそう言う話があっても、戌亥寮の出し物がある場所でなければ、予定の調整も出来るはずだから、教えて貰えれば付き合えるけど……」

 さて、巴の話はまだあるのだろうか?

 そう思って俺は巴に質問したのだけど……今度は微妙そうな顔をしているな。

 いったいどうしたのだろうか。


「実はその、三日目にほぼ妹のような子と父が文化祭に来ることになっていて、そこでナル様と会いたいと言っています」

「ほぼ妹?」

 巴の父親が来るのは分かる。

 文化祭の二日目と三日目は一般開放されているし、娘である巴が居るのだから、来るのは自然な事だ。

 親子間の仲は微妙かもしれないが。

 それよりも気になるのは、ほぼ妹と言う、普通なら使わないような語句が使われた事だ。

 どういう意味だろうか?


「その……父の(めかけ)の一人である女性と、母と親しい付き合いがある男性。その間の子で、幼少期から護国家内で育てられ、実質的に護国家の一員のように育っている子です。私も妹のように可愛がっていて、悪い子ではないのですけれど……」

「ああ……」

「護国家はそう言う事をしているからね……」

「彼女の事ですカ……」

「外から見るとどうしてもという奴ですね……」

 なるほど、それは確かに、ほぼ妹、などと言う微妙な表現になってしまう。

 血縁的には間違いなく他人であるし、法律上も他人であるのだろうけど、付き合い的には家族って奴か……。

 巴が言い淀むのも分からなくはない。

 俺としてもどう反応すればいいのか、ちょっと分からないな。

 と言うか、護国家の内部事情が色々な意味で恐い事になっている気がする。


「ちなみにあの子は今年15歳になって、魔力量も甲判定なので、来年には確実に決闘学園に来ます。文化祭でやってくるのは、下見も兼ねての事かと」

「あーうん、それなら一緒に来るのは当然以外の何物でもないな」

 そして、俺たちの後輩になる事が既に確定している相手でもあるらしい。


「それでその、ナル様どうしましょうか? ナル様が会いたくないと言うのなら、断りを入れて、それで終わりですが」

「うーん……いや、会おう。どうなるかは分からないけれど、巴の家族だって言うなら、一度は会うべきだ」

「ナル様……。ありがとうございます。あ、もしも当日、父が馬鹿な事を言った時には殴ってしまって構いませんから。今ここで先に言っておきます」

「あ、うん。分かった」

 うん、とりあえず会いはしよう。

 用件は分からないが、何かあったら、その時はその時で、巴と協力すれば何とかなるだろう。

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― 新着の感想 ―
>ほぼ妹 巴と仲が良いあたり悪い子じゃないんだろうけど、多夫多妻の価値観に慣れちゃってるとナルを見て「私とお姉様の旦那さま(はぁと)」とかやりそうで怖いなあ。
>だがここで重要なのは、裏側で実はそうなっていたのを一瞬たりとも疑わせない事。 >だって巴が勇気を振り絞り、覚悟を以って、俺に尋ねて来た事実は何ら変わりないのだから。 >俺に求められているのは、その行…
>うん、予想通りと言うか、予定通りだったな デスヨネー >虎卯寮が大ホールで出し物をする時間については、巴が出てくる可能性を考えて、予め空けておいたので、俺のこの後の答えは決まっている 婚約者と…
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