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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
7:文化祭前の日常編
288/499

288:羊歌の表明

「それでは定例のミーティングを開始する」

 月曜日の午後。

 魔力量甲判定者限定ミーティング改め、成績優秀者限定ミーティングが何時ものように開催された。

 面子に変わりはなく、大きな知らせは先週の内にやったとなると……今日のミーティングは今週の決闘予定の再確認に、マスカレイド関係の座学で終わりだろうな。


「なのだが、まずは羊歌から重要な発表があるそうなので、そちらからだ」

 と、思っていたら、何かあるらしい。

 教室内に居る全員の視線が羊歌さんへと向けられる。


「では~お時間いただきますね~」

 羊歌さんに向けられる目は……殆どは何の話をするつもりだろうかと言う困惑と疑念の目だな。

 察しがついているのは、羊歌さんと小隊を組んでいる、巴、瓶井さん、大漁さんの三人くらいか。

 そして、その三人の目に動揺や悲しみ、怒りと言った負の感情が浮かんでいるようには見えないので、悲観的な話でもなさそうだ。

 じゃあ、俺はじっくり聞けばいいな。


「突然の事ですが~萌は明日の午後に~生徒会長と決闘する事にしました~」

「「「!?」」」

 羊歌さんの言葉に教室が明確にざわついた。

 生徒会長と言うと……ウィンナイトか。

 俺が直接見知った範囲だと、四月に麻留田さん……シュタールと決闘しているのは見たな。

 その時は際どい決闘だったはずだが、ウィンナイトが勝っていた。

 そうか、あのウィンナイト……あれと!?


「羊歌、勝算はあるのか? 魔力量も技量も経験も、此処にいるほぼ全員の上位互換と言っていい相手だぞ。あの生徒会長は」

「普段は自信満々な縁紅らしくないセリフですね~。勝算があるから挑むんですよ~少なくとも~無様な戦いにはならないはずですね~」

 縁紅が真剣に心配そうな表情と声音で羊歌さんに尋ねている。

 実際、生徒会長の強さは別格であるはずなので、その心配は妥当な物だろう。

 なにせシュタールとの決闘は今思い返しても別格であったし、夏季合宿の時も徳徒たち三人がかりで挑んだのに一蹴されたと言う話は聞こえてきている。

 今年に入って学園内で行われた決闘の記録を見ても、公式に発表されている範囲では無敗だったはずだ。


「いやいや、勝算がある程度でどうにかなる相手じゃないだろ、あの生徒会長は」

「コケー……正気か? いや、一人じゃないとか?」

「マトモにやり合って勝てる相手じゃないっすよねぇ……

 対して羊歌さんは……俺視点だと良くは分からないな。

 デビュー戦は徳徒と決闘していたはずだが、攻め手を失った時点でギブアップしていたはず。

 その後の決闘も……俺の耳目に入ってくるほどの話は無かったな。

 スズとの付き合いからして頭は良いんだろうけど、逆に言えば、それしか分からない感じだ。


「羊歌さん。僕から質問。決闘をする理由は?」

「試したいものがありまして~。それの性質を考えると~生徒会長にお相手していただくのが一番だった~と言うところですね~。ですので~特に賭けるものはない~普通の生徒間の決闘ですね~」

「なるほど」

 吉備津の質問に羊歌さんが答える。

 その答えで、俺にも羊歌さんが何をしたいのかが分かった。

 羊歌さんは先日のオークションで競り落としたアビスの宝石を試すつもりなのだろう。

 なるほど、そう言う事なら分からなくもない。


 アビスの宝石を使えば、魔力量は倍になる。

 魔力量甲判定である羊歌さんが使ったなら、最低でも発動後の魔力量は2000オーバーで、もしかしたら3000にも届くかもしれない。

 となれば、生徒会長相手でも魔力量は互角か、羊歌さんの方が多いぐらいになるはず。


 あー、うん、これほどの魔力量の持ち主を相手に出来るとしたら、生徒会長か、麻留田さんか、あるいは俺ぐらいになってしまうかもしれない。

 他の生徒では、力を試すまでもなく終わってしまうだろう。

 だったら、相性で生徒会長を選ぶのは……納得はできるな。


「今更なんだが、羊歌さんの魔力量が倍になっても俺に届かないのか」

「そうだよ。おまけにナル君は状態異常や低火力だとどうしようもないし、アレとの経験も豊富だから、試すのに一番向かないと思う」

 俺の小声にスズが小声で返してくれる。

 うん、羊歌さん視点だと、俺はどうあっても戦いたくない相手なんだな。

 よく分かった。


「そういう訳ですので~。萌は明日戦いますので~、見に来れる方は見に来ていただけると嬉しいかな~と言うところですね~」

「ナル君、どうする?」

「当然見に行く。と言うか、見に行かない理由がない」

「だよね」

 見る事は確定でいい。

 アビスの宝石の実際の働きがどんなものなのか、羊歌さんがやる気を見せたらどれだけの力を発揮するのか、生徒会長の実力をどこまで引き出すことが出来るのか。

 見たいものは幾らでもあるのだから。


「萌からは以上です~では~味鳥先生~お返ししますね~」

「うむ、分かった」

 と言うわけで、羊歌さんからの話はこれで終わりらしい。


「それでは、改めてミーティングを開始する。それとマスカレイドの授業もだな」

 さて、その後のミーティングについては特に重要な話は無し。

 羊歌さんの決闘予定が変わった事で、多少の予定変更はあったけれど、それぐらいのようだ。

 マスカレイドの授業については……まあ、色々とやった。

 やったのだが、その最中で一番気になったのは、縁紅が妙にソワソワとしていた事だった。

 うーん、そう言えば夏季休暇中に痴話喧嘩のような決闘もしていたし……まあ、色々とあるのだろう、たぶん。

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― 新着の感想 ―
ちょっとした事ですが >「マトモにやり合って勝てる相手じゃないっすよねぇ…… ここ閉じカッコ抜けのようですね。
>タイトル 縁紅との婚約発表かと思った。 アビス玉の検証とデータ取りなんでしょうけど、精神面の影響が心配ですね。 >縁紅が妙にソワソワとしていた事だった。 羊ちゃんが善戦するも追い詰められた所…
アビスの宝石。入手してソッコーで使用するって、凄い勇気あるなぁ。ラストエリクサー症候群には、絶対無理。まぁ……盗難にあう可能性もあるからかなぁ。 普段より感情的になると分かっていて、対戦相手に会長を…
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