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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
6:デートラッシュ・夏編
265/499

265:国からの緊急決闘依頼 VSハクレン -後編

「ど、どうなっていやがるんだ。そいつは……」

「スキル『ドレスパワー』withサークル『パンキッシュクリエイト』製衣装のバフだよ。身体能力上昇効果もあるが……」

 ナルはハクレンの言葉に応える。

 そうして答えている間に、ユニークスキル『恒常性』の働きによってナルの体は修復されていく。

 内臓は元の形に戻り、骨は繋がって、肉は埋まり、皮膚は張り直されて、元の美貌を取り戻していく。


「一番大きいのはハーフアンデッド化とでも言うべき効果か。おかげで、脳幹と心臓に、それらを繋ぐ部位が生き残っていれば御覧の通りだ」

「ただの化け物じゃねえか……」

 ただし、服は直らない。

 ハーフアンデッド化と言うあまりにも強力な効果故か、あるいは『パンキッシュクリエイト』の技術の模倣を仕切れないのか、服の再生は遅々として進まず、胸部と股間の再生が済むと同時に該当部位はスキル『P・Un白光』によって生じた謎の白い光によって隠されるだけだ。


「ハクレン。自分が生き残った仕組みについての説明は要る?」

「要らねえよ。どうせお前が何かしたんだろう? スズ・ミカガミ」

「うん、正解」

 ナルの後ろにあった小さな枝葉のドームからスズが姿を現す。

 完全な無傷とはいかなかったのか、衣装の端々には多少の焦げ目が見えているが、それ以上の傷はない。

 そして、先ほどの場面でスズがやったことは非常に多岐にわたる。


 一つ目はハクレンを生存させた薬品を浴びせた事。

 薬品の正体は、短時間ではあるものの、薬品を浴びたものが受けるダメージを、薬品生成時に混ぜた魔力の所有者……今回の場合にはナルに押し付けると言うものだった。

 この薬品を『カーブスロー』を使ってハクレンに当てる事で、ハクレンを無理やり生存させたのである。


 二つ目は自身の生存のために能力をフル活用したこと。

 流石のナルと言えども、先述の薬品をスズ自身にも使って三人分のダメージを押し付けられたら耐えられない。

 よって、スズ自身は別の方法で生き延びる必要があった。

 その手段が、防御能力に優れるも完全一人用の枝葉のドームに籠った上で、スキル『アンチスリップ』によって、自分と舞台とドームの間の摩擦力を大幅に増し、吹き飛ばされないようにすると言うものだった。


 三つ目は攻撃に耐え切った後の準備。

 今回の決闘の勝利条件は、ナルの手によってハクレンにトドメが刺される事。

 よって、耐え切るだけでは勝利とはならない。

 だから、ハクレンの攻撃に耐えつつスズは必要な薬品を調合し……。


「ナルちゃん。後は任せた!」

 今ここでナルに注入する。


「おう! 任せておけ!」

「ガハッ!?」

 スズの薬品を注入されたナルが動き出す。

 その動きはこれまでとは比べ物にならないほどに速く、一瞬でハクレンの目前にまで迫っていた。

 ナルとハクレンの間には、パチンコ玉が幾つも転がっていて、迂闊に踏めば足を取られて転がる事になるはずだったのだが、微動だにしていなかった。

 それはつまり、スズの注入した薬品によって、ナルの身体能力が爆発的に上昇している事を示していた。


 そして、ハクレンがそこまでの事を認識し、体を動かそうとした時には、既にナルの拳はハクレンの腹へと突き刺さり、その両足を地面から浮かせていた。


「ハクレン。お前はギャンブラーで決闘者だ。最後の最後まで、勝ちの目がある限り、全力で足掻いてくると、俺は信じてる。だから……全力でぶちのめす」

 そうして浮いたハクレンの両足が地面に再び着くよりも早く、ナルはハクレンの背後へと回り込む。


「ははっ。その通りだ。全力でやりな。でなけりゃあ……俺は足掻くぜ?」

 すると『P・敵視固定』の効果でハクレンの顔はナルの顔を最短距離で追えるよう動き、空中で、無防備な体勢なままに、首から下だけが回転を始める。


「すぅ……」

 その状態のハクレンをナルは……。


「おらららっらららあっ!!」

「ーーーーー~~~~~!?」

 殴る。

 ひたすらに殴る。

 首から下の回転を速めるように殴り続ける。

 ハクレンの首から下が、高速回転する独楽の模様が帯のように見えるほどに殴り飛ばして加速する。

 殴られたハクレンが両手からパチンコ玉をばら撒き、ばら撒かれたパチンコ玉が爆発や電撃を周囲に放つのも気にせずに、ナルは殴り続けて回転させていく。


 当然、そのような回転を行えるようには通常の人体はなっていない。

 ハクレンの体は首を起点に切断されて、分かれることとなり、やがて落ちる。


「おっらああぁぁっ!!」

 そして、最後の一撃がハクレンの顔面へと突き刺さって、吹き飛ばす。


「ぷっ……さあ、ラストゲームだ……」

 吹き飛んで行くハクレンの口から一発のパチンコ玉が零れ落ちていく。

 それはナルとスズが見ている中で、舞台へと落ちていく。


 やがてハクレンの頭も、パチンコ玉も舞台に触れて……。


「残念、ハズレだ」

 何も起きなかった。

 パチンコ玉もハクレンも、ハクレンのマスカレイド解除に伴って、舞台上から姿を消していった。


『決着! 勝者はナルキッソスとスズ・ミカガミ!!』

「いよっしゃあああぁぁぁっ!」

「ほっ……」

 そうして舞台上に残ったのが、ナルとスズの二人だけになったところで、二人の勝利が告げられたのだった。

Q:ハクレン強すぎない?

A:とんでもなく上振れた結果です。後は特殊ルールが上手く働いたのもあります。普段の決闘なら、フィーバーの時点でただの自爆となって終わってますし。

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― 新着の感想 ―
>ハーフアンデッド化と~服の再生は遅々として進まず、 もしかして:きあいのタスキ クソルールにはクソキャラをぶつけるんだよ!と言わんばかりの勝ち方。 実際それで釣り合いが取れると判断されてしまったの…
>ひたすらに殴る トビィ「まだまだ甘い」 >服の再生は遅々として進まず、胸部と股間の再生が済むと同時に該当部位はスキル『P・Un白光』によって生じた謎の白い光によって隠されるだけだ シュタール「ナル…
首から上だけになっても短時間であれば生存判定出る仮面体マジやべぇ。 下手したら最後っ屁で負けてたとかホントに今回のルールはダメダメ過ぎる…。 生成は手からだけって書いてあったから普通に逆転の機会狙って…
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