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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
6:デートラッシュ・夏編
257/499

257:本屋に並ぶのは

「それじゃあナル君。行こうか」

「ああ、行こうか。スズ」

 夏季合宿から帰って来て一週間ちょっと。

 これまでに俺は巴、マリーの二人とは明確にデートをして、イチとも実質的にデートのように過ごした時間があった。

 となれば、公平性の観点から見て、スズともそう言う時間は作るべきだろう。

 そんなわけで、今日の俺はスズとデートである。

 とは言え、学園内にそう何個もデートスポットがあるわけではないし、何か用事もあるとかで、今日向かうのは毎度おなじみ学園内ショッピングモールなのだが。


「それでスズ。何処へ行きたいんだ?」

「まずは本屋だね。もう並んでるはず」

「並んでる?」

 スズが向かった先にあるのは本屋。

 学園内にある図書室……と言うより、図書館が実用的な書物を中心に並べているのに対して、こちらの本屋に置かれているのはマンガや小説、ファッション誌と言った娯楽の要素が強い本が中心となっている。

 なお、俺はどちらも利用したことは殆ど無い。

 ちょっとした調べものぐらいなら、インターネットで済んでしまうし、専門的な事ならイチやスズに聞いた方が早い場合が大半だからだ。


 余談となるが、イチとマリーは諜報員として、一般的な常識や流行を知っておくために、本屋は定期的に利用しているそうで、時々ファッション誌を覗いている姿を見かける事もある。


「うん、ちゃんと並んでるね」

 そんな事を考えている俺はさておき、目的の物を見つけたらしいスズはスマホでそれが陳列されている様子を撮影している。


「あー、そう言えば、しばらく前に見本と言うか献本が『ナルキッソスクラブ』に届いていたな」

「そうそう。ちゃんと並んでいてよかったー」

 そう、それは俺……正確に言えばナルキッソスが着飾って、表紙となっているファッション誌であった。

 相当無理のあるタイミングだったと思うのだけれど、どうやら『シルクラウド』社の関連企業は間に合わせて見せたらしい。


「……」

「ナル君?」

「いや、流石はプロ。しっかり撮れているなと思うと同時に、こうして実物が本屋に陳列されているのを見ると、なんだか感慨深いものがあるなっと思ってな……」

「ふふふ。そうだよね。そう言う感想にもなるよね……」

 うん、なんだか嬉しくなってくるな。

 ちなみに、表紙以外にも中身で何枚か写真を使ってもらえたらしい。

 俺の圧倒的な美しさならば無理や無茶ではない成果だろうけど、だからと言って嬉しいことに変わりはない。

 うん、本当に上手くいって何よりだ。

 関係者の人たちには感謝しかないな。


「あ、そうそう。そんなナル君にお知らせです」

「ん?」

「九月に入ったら、第二回撮影会です。今度は秋物と冬物だって」

「お、おう……分かった」

 どうやら次は既に決まっているらしい。

 しかし、秋物と冬物か……どちらも夏物に比べると厚着になると言うか、露出が減るよな……。

 そうなると、俺自身の美しさを嫌でも隠すことになってしまいそうだし……美しさ以外の面でも磨き上げないと行けなさそうな気配があるな。

 とは言え、俺に出来る事は自身を持って撮られる事ぐらいな気もするけれど。


「……」

 しかし……今後も忙しくなりそうだな。

 決闘者としての活動としては、イチとの体術訓練、『ドレスパワー』の検証、『ドレッサールーム』への登録、スキルの開拓、小隊の連携訓練、それから『シルクラウド・クラウン』関係も一応あるか。

 『ナルキッソスクラブ』の活動についても第二回撮影会が決まった。

 他にも学園のイベントとして、秋には文化祭があるとは聞いているし、そもそも毎月の決闘だってある。

 ざっと思いついただけでもこれなら、実際には何かしらのトラブルも起きて、さらに増える事もあり得るだろうし……やはり忙しくはなりそうだな。


「さて、本屋の中に入ろうか」

「あ、ちゃんと買いたいものもあったんだな」

「うん。色々とね」

 そう言うとスズは奥の専門書が並んでいる方へと向かって行く。

 先述した通り、この本屋にある本は娯楽の要素が強い本が多い。

 だが、それ以外の本も少なからず並んでいる。

 並んでいる理由としては、学園内の図書館にある本は結局のところ皆の物なので、占有したいのならば何処かで購入する必要があり、その購入方法の一つとして、この本屋がある、と言う事である。


「あー、薬の本か。スズだと仮面体関連だな」

「そうなるね。私のマスカレイドはどうにも私の知識や発想を元にして材料や器具の種類を増やしているみたいだから、こうして新しい知識を仕入れると、それだけ新しいことが出来るようになるの」

「ただ、調合の難易度は上がるし、欲しい材料が来る可能性は下がる、と」

「そうなるね。でも、そこで足踏みしてたら、私の仮面体の真価は発揮できないから」

 スズが購入してきたのは薬の本だった。

 色々な薬の名前、構造、作用などが載っているらしい、分厚い辞典のような本である。

 なお、魔力が関与しない範囲に限られたものである。


「ちなみに最近見つけた調合結果の中で一番面白かったのは、効果時間は短いけれど、薬を被った人が受けたダメージを製造時に混ぜた魔力の持ち主に押し付ける薬かな。色々と悪用出来そうだったんだよね」

「あー、確かに使い道はありそうだな。俺の魔力を混ぜておけば、俺が遠くに居ても身代わりみたいになれる」

「うん。そう言う使い方もあるね。シンプルに攻撃を跳ね返してもいいけど」

 なんか地味にとんでもない薬をスズが見つけてしまっているように思えるのは気のせいではない気がする。

 それ、相手によっては初見殺しどころではないのでは?


「さてと、それじゃあ次のお店に行こうか。ナル君」

「分かった」

 とりあえず俺たちは次の店へと向かった。

スズ「トリは私。まずは『一緒に成果を確認する』からだよ!」

巴「無難な一手ですね」

マリー「ここからどう展開してくるカ。見てやりますヨ」

イチ「それよりもスズが調合した薬の方が気になるのですが……いえ、なんでもありません」

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― 新着の感想 ―
そういえばドレッサールームって服じゃなくても取り込めるんですか?ブレスレットとかネックレスとか、極端なこというと局部に貼り付けた絆創膏とか。できるならいっそ腕にピストン装置的なのつけといて不意打ちズド…
>ナルキッソスが着飾って、表紙となっているファッション誌 巴「10冊ください」 >秋物と冬物か……どちらも夏物に比べると厚着になると言うか、露出が減るよな……。 撮影の合間の度にキャストオフしそう…
さてスズさんに巴さんや 観賞用、保存用、布教用で一体何冊確保したのかね?
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