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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
6:デートラッシュ・夏編
239/499

239:名前で呼ぶ

 俺と護国さんはカフェで食事を終えると、そのままショッピングモール内を巡った。

 主に見たのは武器のエリアで、薙刀を始め、刀、槍、槌など、様々な物を護国さんと共に手に取り、感触を確かめ合った。


「そう言えば護国さん」

「どうしましたか? 翠川様」

 そうして見て回っている内に時間は過ぎていき、もう直ぐ解散の時間と言うところまで来ていた。

 そこで俺は一つ護国さんに質問をする事にした。


「あー、その、俺が言うのも何なんだと思われそうだけど、護国さんのご両親の様子はどうなんだ? 『パンキッシュクリエイト』の件の頃に一度接触があったのは覚えているけど」

「その事ですか。翠川様のおかげで、余計な干渉をされずに平穏無事に過ごせている。と言うのが現状です。ありがとうございます、翠川様」

「そうか、なら良かった」

 どうやら俺の提案のせいで護国さんが不利益を被る、と言う状況にはなっていないらしい。

 その事に俺は微笑んで……。


「そうですね。最近は、『コトンコーム』社が大きな隙を晒してくれたから、そこで自分の利益を得られないかと画策していたので、言葉でもって無理やり止めたところです」

 そのまま頬が引き攣るかと思った。

 『コトンコーム』社の隙ってのは、綿櫛の起こした問題の事でいいだろう。

 そこで自分の利益を得られないかと画策するのは……まあ、無くはないのだろう。

 ただ、護国さんの言葉からして、止めないと拙かったんだろうな、たぶん。


「父も母も揃って策謀に何て向かないのに、どうして手を出そうとするのか……これが分かりません」

「なんというか、お疲れ様。護国さん」

「はい。本当に。本当にです。そう言うのがもっと得意な方が身内に居るのに、どうして……」

「……」

 大丈夫なのか護国家と言いたくなってくるな。

 本当に。


「あーうん、いざと言う時は俺たちにも相談してくれ。スズたちも交えて話をすれば、きっとどうにかはなる」

「そうですね。本当にいざと言う時はお願いいたします」

 ちなみに護国さん曰く。

 護国さんの両親も昔は学園に通っていて、その時は二人揃って虎卯寮の寮生だったらしい。

 で、二人揃って決闘での立ち回りが第一で、決闘の外での立ち回りは周囲がやってくれていたそうだ。

 それで卒業して、決闘者として活躍して、最前線からは引退して……何故か策謀に手を出し始めたのがここ最近だそうだ。


「後は羊歌さん辺りに相談して、ご両親に変な事を吹き込んでいる人間が居ないかを探った方がいいかもな」

「そちらは大丈夫です。既に羊歌さんなら動いてくれていますから。たぶん、誰も居ないでしょうけど」

「むしろ誰かが居てくれた方が助かる話?」

「かもしれませんね」

 後、羊歌さんの家とは、両親が現役時代から仕事上の付き合いがあったとかで、護国さんと羊歌さんの関係は幼馴染に近いものだったそうだ。


「つまらない話はこれくらいにしましょう。折角の翠川様との時間を、こんなつまらないことで潰したくはありません」

「そうだな。そうしておこうか」

 まあ、この話についてはこれくらいにしておくべきだな。

 護国さんの表情は明らかに不機嫌なものであるし。


「そ、それよりもですね」

「ん?」

 護国さんの表情が変わる。

 強い決意を秘めているように思えるものへと。

 どうやら何か言う事があるようだ。

 なら俺がするべきなのは、しっかりと話を聞く事だな。


「み、翠川様……」

「うん」

 俺は護国さんの正面に立ち、護国さんの顔をしっかりと見ようとする。

 対する護国さんは俺に視線を合わせようとせず、決意は秘めていても、決心はついていないと言う表情をしている。


「……」

 そうして緊張している護国さんの表情は、やがてどうしたらいいのか、と言う顔に変わってしまい、更には狼狽えると言う表現に相応しいものになってしまう。

 これは……助け船が必要そうだな。

 問題は護国さんが話そうとしているのはどういう話なのかだけど……。


「護国さん。そう言えば、今日の決闘で思ったことがあるのだけど、今後も二人で決闘に臨んで、連携を深めようと思うのなら……お互いの事をもっと呼びやすい名前で呼ぶのはどうかな?」

「!?」

 護国さんが驚いた顔をしている。

 これは正解だったかな?

 ならいいのだけど。


「で、では……私の事を巴と……」

「許してくれるのなら」

「ゆ、許します! 勿論許します! ですから私も翠川様の事をナル様とお呼びしても……」

「構わない。何なら呼び捨てでも」

「い、いえ! そこはその、様付けはそのままにさせてください! その、私が保ちませんので!」

「そ、そう?」

 護国さん……いや、巴はいつの間にか顔を真っ赤にして、俺の言葉に応じている。

 これは夏の日差しによるものでは無いけれど、無理はさせない方が良さそうだ。


「それじゃあ、これからは巴と呼ばせてもらうよ。よろしく、巴」

「は、はい! よろしくお願いします! ナル様!」

 なんにせよ、俺と巴は、これからお互いの事を名前で呼び合う事にした。

 そして時間も来たと言う事で、俺と巴のデートは今日の所はこれで終わりと言う事になった。


 巴が最終的に俺との婚約をどうするかは分からないけれど、とりあえず仲良くなれた事だけは間違いないとは思う。

以下、章開幕時の駄文に続くような文章。


護国「な、『名前で呼び合う』のカードを得て、私のターン終了です!」

スズ「そのカードは私が15年前に得たカードだ」

マリー「温いですネェ。でモ、このタイミングだからこそではありますよネ」

イチ「本当になんなのでしょうか。これは」

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― 新着の感想 ―
駄目照(ニヤニヤ) 明日にはスズたちが護国嬢を巴呼びしてて、「どこまで知られてるんだ」ってなりそう。
>つまらない話はこれくらいにしましょう 護国パパ「そんな(ショック)」 食いしん坊皇女「娘にウザがらみしてくる父親の価値なんて、財力や権力などの力だけで、人格面に価値なんてないですよ。あ、サタ、新しい…
>薙刀を始め、刀、槍、槌など、様々な物を護国さんと共に手に取り、感触を確かめ合った 盾以外にナルがしっくりくる武器があれば火力不足も少しは解決するんですけれどね。 >余計な干渉をされずに平穏無事に…
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