180:第一回スキル『ドレスパワー』検証会-後編
「では、衣装変更」
俺は結界の中で『パンキッシュクリエイト』との決闘でも使ったシスター服に衣装を変更する。
うん、相変わらずソワソワすると言うか、ムズムズすると言うか……長く着ていると脱ぎたくなってくる衣装だな。
「ナル君が脱ぎたそうにしているから急ごうか」
「ア、やっぱりそうだったんですネ」
「ナルさん……」
「いやこれに関しては、俺の美貌を隠す衣装の方に問題があってだな……」
そんな俺の考えが何故かスズにも伝わってしまったようなので、俺は急いで話を進める事にする。
と言うわけで、言い訳をしつつもポーズを取って、写真を撮影。
「『ドレスパワー』発動」
それからスキル『ドレスパワー』を発動する。
さて結果は?
いやまあ、シスター服については知っているのだけど。
「えーとね、燃詩先輩曰く、バフ自体はアンデッド特効。ただし、同効果を有するスキルたちよりも高い効果を示している。だって」
「へぇ。そこまで高い効果が出ているんだな」
「ナルの攻撃力であの威力になったのは奇妙だと思っていましたガ、そう言う事でしたカ」
「なるほど。『ドレスパワー』がアクティブスキルである事、シスター服と言う限定的な条件でしか発揮されない事、この二点が重なった結果でしょうか?」
「うん、たぶんだけどイチが言った通りだと思う」
どうやら通常よりも効果が高いアンデッド特効であったらしい。
これは俺たちだけでは知れなかった事実だな。
ただまあ、アンデッド特効……と言うより特攻系統はなぁ……『パンキッシュクリエイト』の先輩たちみたいに突き刺さる相手なら極めて有効なのだろうけど、そうでない相手には効果が無いからな。
扱いが難しい。
普通のスキルではなく『ドレスパワー』を介して使うのなら、それが出来る衣装を探すところからになるので、なおのことだ。
アンデッド特効は宗教関係で良さそうだと言うイメージがあったから、簡単に引き当てられたけれど。
「とりあえず次に移るぞ」
「うん、分かったよ。ナルちゃん」
では次。
三タイプほど『ドレッサールーム』に登録してある水着の一つ。
白のビキニ上下だ。
「すぅ……ふぅ……」
「今回は大丈夫なようですネ」
「そうみたいですね」
「あー、うん。そうみたいだな」
なお、これを前回着た時には、スズは立ったまま気絶していた。
が、今回は深呼吸を素早くすることによって堪えたようだ。
成長が窺えるな、うん。
「『ドレスパワー』」
それはそれとして『ドレスパワー』を発動。
ちなみに『ドレスパワー』がその時に来ている衣装に応じてバフを与えると言う効果であるためか、着ている衣装が変わると、効果時間が残っていても『ドレスパワー』は解除される仕様になっている。
俺以外には関係ないであろう仕様だが、俺は覚えておかないといけない仕様だな。
「スズ」
「えーとね。未知のバフが二種類。だって。ただ、バフの片方は暑さ耐性や寒さ耐性に近い挙動を示しているみたい」
「水着なのですシ、水場でないと効果を発揮しないバフとかでしょうカ」
「かもしれませんね。屋内プールの類はありましたか? 流石に無い……では、次回か、夏季合宿の間にでも検証ですね」
白のビキニの上下は未知のバフが二種類か。
ただ、この場では効果は分からない、と。
「じゃあ次だな。『ドレッサールーム』からの『ドレスパワー』」
写真を撮影したところで次の水着へ。
今度はスポーティーなタイプ……と言っても、二の腕と太ももまで外気に晒しているものだ。
まあ、俺の仮面体だと、この格好でも主に胸の部分が抵抗となって、速く泳ぐことは出来ないとは思う。
「ちょっとだけだが身体能力が上がってるな」
「うん、こっちでもそう言う解析結果が出てる。後はさっきも出てた耐性系のバフも乗っているみたい」
「つまり耐性系の未知のバフは水着共通のバフと言う事ですカ。こうなると逆ニ、白ビキニのもう一個のバフの正体が気になりますネ」
で、解析結果としては、さっきとは少しバフの内容が違う、と。
こうなると、マリーの言っているように水着と言う大きなカテゴリーに基づいて与えられているバフと、それぞれの水着の形状やイメージと言った細かい部分に基づいて与えられるバフの二種類があると言う事になりそうだな。
そして、ほぼ間違いなく、この法則は他の種類の衣服でも適用できるだろうから……うん、組み合わせが凄まじいことになるのだけは確かだな。
「もう一つあるから出すぞ。『ドレスパワー』発動」
では三つ目の水着。
色と柄の違うビキニの上から、パレオを着用したモデルだ。
とりあえず、自己診断した感じでは、身体能力の向上は感じられないな。
「ふむふむ……解析結果としては、耐性系の未知バフが一つに、エンチャント系列のバフが一つだって。ただし、どちらも条件を満たしていないのか、今は効果を発揮していないみたい」
「やっぱり水場限定なきがしますネ」
「そうですね。ここまで一緒なら、もうそれで確定とみていいと思います」
「まあ、水着だしな。水場で使えってのは分からなくもない話だ」
俺はスズたちと解析結果について一言ずつ交わす。
しかし、エンチャント系列か……スキル『エンチャントフレイム』のように、拳や盾、ブーツに何かを纏って、攻撃力を増すことが出来ると言う事だろうか。
もしそうなら、何かしらの方法で決闘の舞台上に水場を作って……いや、そこまでやるのはちょっと面倒そうだな。
スズとのタッグマッチとかだったら、スズに頼めばそれぐらいはやってくれそうな気もするけど。
「じゃあ、今日はこれくらいかな?」
「そうだな。衣装はまだまだあるが、今回のでだいたいの傾向は掴めた」
話を戻して。
スキル『ドレスパワー』の傾向はだいたい分かった。
日常で使う衣装なら、全体的な能力向上。
特定のシチュエーションで使うような衣装なら、そのシチュエーションで有利に働く能力の向上とバフ。
特定の職業が用いるような衣装なら、その衣装に対して抱かれているイメージが全面的に出たバフ。
で、細かい装飾品やパーツの種類の違いで、バフの内容にも細かい違いが生じる事になる。
スズとマリーが使った時の効果とも食い違わないように思えるし、これでだいたい合っているはずだ。
「……」
「スズ、どうした?」
「あーうん、ちょっと思っただけ。シスター服と言っても裾が極端に短いものとかあるけど、アレとかで『ドレスパワー』を使ったらどうなるのかなって」
「それハ……コスプレ用と言う奴ではないですカ? いエ、試してどうなるかが気にならないかと言われたラ、気になるのですガ」
「ゲームや漫画のキャラクターのコスプレ衣装と言う事ですか? 確かに気になるところではありますね」
「あー……コスプレイヤーって奴か……どうなんだろうな? 物によっては確かに『ドレッサールーム』に入れられるだろうし、何か面白いバフが出そうなのもあるが……スズ、どうした?」
「う、ううん。何でもないよ、ナルちゃん」
さて、これで今日の所は終わり。
と言う話の流れだったのだが、そこでスズが零した言葉にみんなで繋げていったら、どうしてかスズの様子がおかしい。
いや、周囲のスタッフさんたちも一部は様子がおかしいな?
どう言う事なのだろうか?
うーん、なんとなくだが深くは突っ込まないでおいた方が良さそうだな。
誰も彼も聞かないでくれって感じの表情はしているし。
その後は何事も無く、サークル活動終了となった。
で、次回の検証時にスズが試してみたい衣装については、それまでにスズが用意してくるとの事だったので、俺は気にしなくてもいいとの事だった。
まあ、俺の美しさを損ねるようなものでないなら、別に構わないか。
11/30誤字訂正




