179:第一回スキル『ドレスパワー』検証会-前編
「えー、それではスキル『ドレスパワー』の検証を始めたいと思います」
午後。
スズ、俺、マリー、イチの四人は、サークル『ナルキッソスクラブ』が入っている建物の一階部分にあるスタジオに集まっていた。
また、俺たちだけでなく、スタジオのスタッフさんに、お隣さんならぬ、お上さんなサークル『カラフル・イーロ・サポーターズ』の人も、何人か居る。
流石にカラフル・イーロこと彩柱先輩は居ないが。
「ではまずは『ドレスパワー』の基本的な説明について」
で、今はスズがこれからどのような実験……検証を行うのかを、記録用として実験の終始を撮影するカメラに対して説明しているところだ。
なので俺もスキル『ドレスパワー』について、スズの話を聞きつつ再確認しておく。
スキル『ドレスパワー』は、俺の要望を受けて、学園の先輩……スズ曰く燃詩先輩だったかな、その人が作ってくれたスキルだ。
効果としては、仮面体が身に着けている衣装に応じたバフなどを自身に付与すると言うものである。
「ですが、このバフと言うのが曲者でして、既存のスキルである『ハイストレングス』に似た効果が発揮されるものもあれば、類似例すら確認されず効果も分からない、完全に未知のバフが発生する事もあります」
実際、マジで効果不明のバフが発生する事もあるらしいと言うか……お試しで使ったスズとマリーは、妙な音が聞こえただとか、妙なものが見えただとかで、かなり困惑した様子を見せていた。
「今後の研究は国が主導していく事でしょう。ですが、基礎的な資料と私たち自身の確認作業として、今日の検証を行っていきます」
まあ、国とか新規開拓だとかは、そっち方面に詳しい人に任せよう。
俺がやるべきは色々な衣装でスキル『ドレスパワー』を発動してみて、その結果をまとめると共に、写真集にしてしまう事である。
様々な衣装を着た俺の美貌とスキル『ドレスパワー』の効果をセットで載せた写真集となれば、売れ行きは大変良く、それは即ち俺の美しさを世間に広める事にも繋がるだろう。
うん、やる気が出てくる事しかないな。
「ちなみに本日は本スキルの開発者である燃詩先輩はリモートで参加。ナル君が発動させたバフについてリモートで解析を行い、既知であるか、未知であるか、未知であるにしても類似例が存在するかどうかなどを素早く教えてくれる手はずとなっております。それではそろそろ始めていきましょう。ナル君」
「分かった」
俺はスズと入れ替わりにカメラの前に立つ。
そして、万が一の事故に備えて結界を起動して、安全を確保。
「マスカレイド発動」
それからマスカレイドを発動して、学園の女子制服を着た状態の仮面体に変身する。
「ナルさん、撮影します」
「ああ」
俺はポーズを取って、そんな俺をイチがカメラで撮影する。
「解析機器オールグリーンでス」
「では、『ドレスパワー』発動!」
撮影が終わり、マリーが解析機器に問題が無いことを確かめたところで、俺は『ドレスパワー』を発動。
俺が身に着けている制服へと魔力が注ぎ込まれ、同時に仄かに輝き始める。
ちなみに、この仄かに輝くのは、俺が使った場合の反応で、反応の一例に過ぎない。
なので、他の人が使った場合にはよく目を凝らすとオーラのようなものを纏っているのが見えたり、表面上は何も起きていなかったりと様々である。
「ナルちゃん、調子はどう?」
「うーん、体の反応は普段より少しいい感じだな。たぶんだけど、筋力とかも少しだけ上がっているんじゃないか?」
「ふむふむなるほど。燃詩先輩? ああ、なるほど……」
俺はスズの質問に答えつつ、その場で軽く跳ねてみたり、踏み込んでみたり、正拳を繰り出してみたりする。
なんとなくだが、普段よりも高く飛んでいたり、切れが良かったり、力がこもっている感じがあるな。
で、俺としてはそんな感じなのだが、スキルの専門家っぽい燃詩先輩の解析結果はどうなのだろうか?
リモートかつ音声で話す気もないようなので、スズは送られてきた文章を読んでいる。
「スズ。先輩は何と言っていますカ?」
「解析結果としては、全ステータスの微量上昇……一項目の強化量としては一般的なスキル『ハイストレングス』の三分の一くらい。が発生しているって。それと」
「それと?」
「系統不明の未知なるバフが一つ、微量だけど発生しているみたい」
「早速ですか……」
なるほど。
つまり、学園女子制服の『ドレスパワー』には全体的なステータス上昇と未知のバフが入っている。
しかし、効果範囲が多様である分だけ、一項目当たりの強化は控えめと言う事か。
でも、控えめな分だけ急激な身体能力上昇に悩まされる感じもしないし、これは普通に有りではなかろうか?
「それじゃあナルちゃん。この調子でバンバンやっていこうか」
「分かった。じゃあ次はライダースーツで」
「では撮ります」
「解析機器はしっかりとチェックしておきますので、安心してください」
さて、その後の検証結果についてまとめておこう。
ライダースーツは敏捷性、反応速度、体幹と言ったステータスの上昇に加えて、これまた未知の……ただ、乗り物に関係してそうなバフが出た。
踊り子の衣装も同様に敏捷、反応、体幹を上げつつ、服をいい感じに揺らすためなのか、周囲に気流を発生させる謎のバフが出た。
ブルマでは極めてシンプルに身体能力の上昇のみ。
ワンピースに麦わら帽子と言う夏っぽい装いなら、シンプルに暑さへの耐性が得られるだけ……と思ったら、また効果不明のバフが出た。
ジーパンにシャツと言うラフな格好をしたら、学園女子制服と同じようなステータス上昇……ただし、未知のバフが無い分だけ、耐性関係のバフが出たっぽい。
とまあ、こんな感じで、確かにそれぞれの衣服からイメージされるようなバフを得られるのだが、詳細不明のバフも同時に何処からか湧き出てくる感じだ。
「うーン。これっテ、シャツの柄でも変わったりするんですかネ?」
「可能性はあるが……その辺はこの後のでも検証できると思う。そこ次第だな」
「ナルさんの『ドレッサールーム』に一般的な決闘者が使っているような鎧やプロテクター、軍隊の装備が無いのが残念に思いますね」
「その辺の検証は一般の人たちに任せておけばいいよ。国がやってくれるって話だし」
さて、問題は此処から。
次は『パンキッシュクリエイト』との決闘でも活躍してくれたシスター服。
その次からは先日の撮影で使ったこともあり、三タイプほどある水着である。
では、引き続き検証をしていこう。




