172:撃沈バカルテット
現在は2024年7月9日火曜日は昼休み。
つまり……。
「終わった……」
「終わったな……」
「色んな意味でな……」
「もう駄目っす……」
期末テスト明けの昼休みである。
そんなわけで、俺、徳徒、遠坂、曲家の四人は食堂の机に揃って突っ伏していた。
理由?
そんなの決まってる……。
「揃って死んでますネ。これはそう言う事ですカ」
「そう言う事らしいよ。ナル君、余裕そうだと思ったら、やっぱり忘れてて、月曜日の朝に私に泣きついてきたし」
「それは……もう匙を投げるしかないタイミングですね」
自己評価でも分かるくらいに出来が悪かったからである。
「そんなこと言われても、難しいんだよー……決闘学園の授業……」
「オレたち甲判定組にはもう少し手心をくれー……」
「ワイは伊達に鳥頭とか言われてないんやぞー……」
「すっすー……すっすー……無理なものは無理っすー……」
言い訳はしない。
先週の金曜日に『パンキッシュクリエイト』との決闘があって、そっちの準備で勉強時間が準備できなかったとか、そこで勝利を収めた喜びで頭の中からテストの事が吹っ飛んでいたとか、期末テスト後には『ドレスパワー』の検証で色々とやることが決まったとか、マリーの誕生日が来週の木曜日に迫っているだとか、色々と要因になり得そうな話はあるけども、そもそもの話として日頃の勉強が追い付けていないのが原因なのだから。
難しかったとは言わせてもらうが。
「そう言うわけだからマリー。夏休みはナル君の補習授業がある前提で予定を組んでおこうか」
「そうですネ。そうしておきまス。撮影や検証、特訓と色々ありますガ、上手い事調整しましょウ」
「お手数おかけいたします……ガクッ」
「イチはこうならなくて本当に良かったです」
とりあえず、今後必要な調整についてはスズたちにやってもらい、詫びと言うか感謝の品を夏休み中に時間を見つけて見繕い渡すとしよう。
「と、そう言えば、『ドレスパワー』の検証って何時やるんだ? 期末テスト後に色々とやるとは聞いたけど」
「うーん、私たちが勝手にやる分にはご自由になんだけど。いつの間にかサークル『スキル開発部』が色々な人を招いて、大々的に検証をやるって話になっているんだよね。スキル『ドレスパワー』の製作者もリモートで顔を出すつもりみたいだし、この分だと学園の研究開発部も出て来るだろうから……そっちでやりたいなら、来週の月曜日以降の何処かかな?」
「その件についてですが、イチから一つ。今朝の時点で既に国の方にも『ドレスパワー』の有用性と将来性についての話は流れていまして、もしかしたら国家事業にもなるかもしれません」
「イ、いつの間にカ、とんでもない規模になっていますネ。国ですカ……製作者の方は今頃てんやわんやになっていそうですネ」
俺は顔を上げてスズに確認したのだが、なんかいつの間にか『ドレスパワー』の件が大事になっていた。
イチから詳しく話を聞いたところ、これまでにないバフが確認できれば、そこから幾つも新たなスキルを作る事が出来るかもしれないと言う事で、国が現役、引退済み問わずに決闘者を集めて、一度『ドレスパワー』を使わせてみようなんて話になりつつあるらしい。
「とは言え、流石に学園外で実際に確認作業が行われるのは、早くても秋以降になると思いますが」
「それはそう」
「でも学園内に限定すれば、夏季休暇中には行われると思います」
「早い……」
まあ、この件で俺がする事は『ドレッサールーム』で色々な服を呼び出してから、スキル『ドレスパワー』を使って、どんなバフを得られるかを確認していくだけだからな。
大して負荷はかからない。
むしろ、記録の為に写真撮影もしつつやるそうなので、それを利用してサークル活動を進めるいい機会ですらある。
大変なのは……うん、考えるまでもなく、製作者の方だろう。
俺は誰だか知らないが。
「それではナルさん、徳徒さんたち、イチたちはこれで」
「今日は女子で集まって食べる予定なので失礼させてもらいますネ」
「ナル君。じゃあねー。ちゃんとお昼ご飯は食べてね」
「ああ、じゃあな」
とりあえず話は済んだと言う事で、スズたちは去っていく。
去っていく先に護国さんや獅子鷲さんを含む女子生徒たちの姿が見えるので、そちらの方で色々と話があるのだろう。
「で、『ドレスパワー』ってアレだよな。この前の決闘でナルが使ってた奴」
「そうそう」
「アレってワイらが使ったら、また別の効果が出るんだよな?」
「そうなるはずだな」
「うーん、じゃあ、ウチらも一度使ってみて検証してみるっすかね。あ、データ募集のページは見つけたっす」
「それでいいんじゃないか? 自分の決闘スタイルにあったバフが引けていたら当たりって事で」
さて、『ドレスパワー』の話については、どうやら徳徒たちも乗り気であるらしい。
どんな効果が発揮されるかは分からないが、だからこそ試してみる価値があると判断したようだ。
それはそれとして、そろそろお昼に何を食べるのかを選んで注文しにいかないといけない訳だが……。
「お、翠川か。それに申酉寮一年の甲判定組じゃねえか」
「ん? あー、『パンキッシュクリエイト』の」
「安藤先輩。どうしたんですか?」
と、ここでトゲトゲとした髪の毛の男子生徒が声をかけてきた。
うん、徳徒が名前を言ってくれたが、名前を言わなくてもこの人が何処の人なのかは忘れないくらいには特徴的なトゲトゲの髪。
『パンキッシュクリエイト』のリーダーである安藤先輩だな。
「偶然通りがかっただけだ。だけなんだが……あー、そうだな。折角だから礼を言っておく、ありがとうな。翠川。おかげでサークル『パンキッシュクリエイト』はとりあえず来年は存続できそうだ」
「と言いますと?」
なんか急に礼を言われた。
心当たりは……無いわけではないが、きちんと確認をした方がいいな。
「『ナルキッソスクラブ』との決闘のおかげで名前が売れてな。一年生の部員が入ってくれたんだ。それにスキル『ドレスパワー』の影響で仮面体が身に着ける衣装にも見直しが入るかもって事で、服飾サークルとは別の方向性で服を作っている俺たちにも注目が集まってな。一過性のものかもしれないし、衣服専門になってしまいそうでもあるが、色々と先の展望が開けた感じでな……」
「なるほど。でもそれは安藤先輩たちがしっかりとした服を元から作っていたからだと思いますが」
「だとしても、って奴だ。俺が礼を言いたいから言う。これはそう言う話だ。ああそうだ、お前たち四人とも昼飯がまだなら奢ってやろうか? 今日の俺は気分がいいからな。一人一品くれてやるぞ」
「「「是非!」」」
「よしっ、付いてきな!」
「「「うっす!!」」」
とりあえず貰えるものは貰っておこうと言う事で、本日の俺たちの昼食は安藤先輩の奢りとなった。
後、『パンキッシュクリエイト』の連絡先もいただいたので、もしかしたら今後利用させてもらうかもしれないな。
反省会は掲示板と似た感じだったので、期末テストは絶望している光景だけなので、スキップです。




