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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
4:サークル編
159/499

159:決闘を受けての戦力確認

「では、情報を確認していくね。サークル『パンキッシュクリエイト』のメンバーは四人だけ。今日、決闘を仕掛けに来た時に居たメンバーで全員だよ」

「私から補足すると、全員、申酉寮でもあるね」

「なるほど」

 スズの言葉に彩柱先輩が軽く補足する中で、俺はスマホに映し出されている『パンキッシュクリエイト』についての情報を確認する。

 サークルのメンバー数は四人。

 これはサークルを結成、維持できる最低限の人数である。

 そして、メンバーの内訳は三年生が二人に、二年生が二人で、一年生は居ない。

 なので、このまま行くと、三年生の卒業と共に消滅してしまうサークルであるらしい。


「それと、昔……と言っても、去年の話になるけど、その頃はサークル内にパンクロックバンドも内包していて、文化祭でステージに立ったりして、パンクで合法な事ならだいたい何でもやっているサークルだったんよね」

「今は違うと?」

「今は服飾一本になったみたい。残っているメンバーの傾向と都合って奴だね。だから天草ちゃん……二年の女子だけど、彼女ともう一人の二年は三年生が卒業するまでに新規メンバーが入らなかったら、必要な資料を持った上で服飾サークルに移る事をもう決めているんだって」

「なるほど」

 どうやら『パンキッシュクリエイト』はそれなりに歴史のあるサークルのようで、服飾、音楽、芸術、それこそ必要なら専用の整髪剤の調合をしたり、決闘を演出できるようなスキルを開発したり、パンクな見た目のデバイスを開発したりと、何でもやっていたようだ。

 が、時の流れと言うべきか、流行の移り変わりと言うべきか、少しずつ部員の数が減っていき、今の状況になったようだ。

 知名度……ではないんだろうな、本当にシンプルな趣味嗜好の話だから、誰かが悪かったり、助けられるような話ではなさそうだ。

 とは言え、サークル消滅後の身の振り方もしっかりと考えている辺り、間違っても考えなしなんて評価は出せない訳だが。


「となると、『パンキッシュクリエイト』的には、今回の決闘は最後の一花を咲かせよう的な?」

「そうだねー。そう言う面はあると思うよ。なにせ、パンクなものを作り上げるサークルなんだから。色々なところから支援を受けていて政府寄りと言える『ナルキッソスクラブ』を打ち破るなんてシチュエーションは燃えるなんてものじゃないと思うよ」

「でモ、それをブラックな組織からの支援を受けてやるなんテ、なんとも残念な話ですネ。パンクではない気がしまス」

「そこはもう割り切るしかなかったんじゃない? 勝ち目のない決闘はどうかと思っただろうし、ブラックな組織と言っても、今回に限ってはドホワイトだし」

 なるほど、『パンキッシュクリエイト』視点では、そう言う部分もあるんだろうな。

 他にも依頼って事はお金とかも動いているだろうし……。

 まあ、深くは考えないでおこうか。


「で、話がサークルの歴史に流れちゃったから戻すけれど。彼らの実力は個人で見れば、それぞれの学年では真ん中ぐらい。でも、小隊戦なら上位に入る」

「それだけ連携能力に優れているし、能力の相性がいいって事か?」

「そう言う事だね。順番に挙げていこうか」

 スズが話の方向性を戻す。

 決闘で重要なのは、それぞれの仮面体がどんな能力を持っていて、どんなスキルを使えて、どんな立ち回りを好み嫌うかだ。

 今回は相手が四人も居るので、きちんと確認して、覚えておかないと、実戦での反応が遅れる事になりかねない。


 スズが部屋に備え付けのモニターに画像を出す。


「一人目、サークル『パンキッシュクリエイト』のリーダー、アサルトアントン。見ての通りなパワータイプでバリバリの前衛だね」

 映し出されたのは、マスカレイド発動前はトゲトゲとした頭を持つ男子生徒で、マスカレイド発動後は筋骨隆々の肉体を持つ男性。

 ただし、その仮面体の肌色は緑または青であり、ツギハギの跡が幾つもあって、ボルトも何本も突き刺さっている。

 そう、筋骨隆々の男性は男性でも……これはゾンビ、マッスルゾンビである。

 ちなみに特殊な機能は確認されておらず、スキルの方もシンプルなバフと攻撃が大半との事。

 後、三年生だそうだ。


「二人目、サークル『パンキッシュクリエイト』のサブリーダー、スキンドーラ。情報通りなら支援タイプで後方が基本位置」

 続けて映し出されたのは、マスカレイド発動前はスキンヘッドにドクロの入れ墨をした女子生徒、マスカレイド発動後はマントを着用し、杖を持つ、動く骨格標本……つまりはスケルトンだ。

 仮面体の機能は自分を含む対象に防御と反撃のバフをかける事であるらしく、バフをかけられた相手は刺々しいオーラを纏っている。

 なお、スキルでも同じような事が出来るらしく、二重のオーラがかかると、見た目も効果も派手な事になるらしい。


「マスカレイド発動前、俺ほどじゃないが綺麗な女性だな」

「あ、翠川君ってそう言うの褒められるんだ?」

「? 当然の事では?」

 それと彩柱先輩から妙な事を言われたが、美しいものを美しいと認められるのは、当然の事ではないだろうか?


「続けるよ。三人目、二年生、チェーンベルタ。タンク役も拘束役も務められるって話だね。立ち位置は前より。ちなみに鎖の下はミイラだってさ」

 三人目は、マスカレイド発動前は鏡のようによく磨かれた鋲や鎖を好んでいるくらいしか分からない男子生徒で、マスカレイド発動後は全身を包帯ではなく、よく磨かれた鎖でグルグル巻きにされたミイラ男。

 仮面体の機能もこの鎖を操る事で、盾を生み出して攻撃を受け止めたり、相手を縛って拘束できるようだ。

 それと、未確定情報だが、この鎖は魔力に対して妙に強いそうで、少し注意が必要なようだ。

 スキルについては自己バフ系統が中心。


「最後の四人目、二年生、バットシャーロット。蝙蝠使いのヴァンパイア。立ち位置は中衛。蝙蝠については自立式だから、本人の意識が何らかの理由で途絶えても、予め込められた魔力が尽きるまでは行動し続けるみたい」

 四人目は、マスカレイド発動前は全体的に色素が薄めの女子生徒で、マスカレイド発動後はゴスロリと呼ばれるような衣装を身に着けた少女。

 ただし、ヴァンパイアらしくと言えばいいのか、血色は悪めだ。

 仮面体の能力は使い魔や眷属とも呼ばれるものの使役で、バットシャーロットの場合はデフォルメされた蝙蝠を十数匹生み出し、基本は命令に沿って、命令が無い場合は蝙蝠自身が考えて飛び回り、噛みついてくるそうだ。

 スキルについては仮面体の機能で消費する魔力が重くて余裕がないのか、使っている様子はこれまでに見られていないらしい。


「とまあ、これが『パンキッシュクリエイト』の四人だね。何か感想や質問は?」

「ゾンビ、スケルトン、ミイラ、ヴァンパイア……ホラーかハロウィンか……もっと単純にアンデッドか? なんにせよ、よくもまあ、そんな共通項を持った四人が集まったものだな」

「ですネ。しかシ、アンデッドですカ……」

 うーん、俺の感想としては、一対一なら間違いなく勝てるんだろうな、と言うところだな。

 でも、小隊戦の方の成績がいいと言う情報も合わせて考えると、確かに一対四で戦ったら、連携による何かで俺の方が負けそうな気配はするな。

 しかし本当によく集まったものである。

 アンデッドの仮面体なんて初めて見た気がする。


 で、マリーには俺が抱いているような感想とは別に何かあるようだ。


「そうなるとやっぱリ、マリーとナルの二人で相手をする方がマシ、と言う話になりますカ?」

「そうなのか?」

「そうなるね。私の調合には相手が生きていることが前提の物が少なからずあるし、イチにしても能力相性が悪い。と言うのもね、ナル君」

 スズ曰く。

 アンデッドの仮面体と言うものは、死んでいるものをモチーフとした仮面体であるがために、厄介な点を備えているらしい。

 そう、致命傷が致命傷になるとは限らない、だそうだ。

 具体的に言えば、頭部が半分欠ける、胸を穿たれる、その程度では、元から死んでいると言うイメージがあるためにマスカレイドが解除されない場合があるらしく、『パンキッシュクリエイト』の四人は正にそれであるらしい。


 他にも、血流が止まっているから毒が全身に回りづらかったり、幾つかの生理的な反応を起こさなかったり、痛覚が最小限と言った特徴も備えているとか。

 代わりに一般的な回復スキルを受け付けないだとか、仮面体の維持に必要な魔力量が多かったりと言ったデメリットも備えているようだが……。

 総評すれば、スズとイチにとっては相性が悪い相手、と言う事になるようだ。


 と言うかだ。


「俺も決して相性がいいとは言えないよな? たぶん、首の骨を折ったくらいじゃ駄目だろ」

「勿論駄目だよ、ナル君」

「マリーも実を言えバ、そこまで相性がいいわけではないんですよネ。うーン、よく見つけて来ましたネ。『パンキッシュクリエイト』へ依頼した誰かさんハ」

「本当にね。敵ながら感心しちゃう」

 うん、これは思った以上に難敵かもしれないな。


「でも翠川君たちは決闘に臨むんだよね?」

「それはもう当然」

 と、ここで彩柱先輩が言葉を挟んでくる。


「では一つ先輩からアドバイス。アンデッドをモチーフにしているからこその弱点もある。それが天草ちゃんたちの泣き所だよ。それを翠川君たちが突けるかは私が知るべきところではないけどね」

 なるほど、アンデッドモチーフだからこそ、かぁ……。

 うーん、映画とかだと聖水とか杭とかが良くあるものだけれど……そう言えば、アレの進捗とかどうなっているんだろうな?


「そう言うわけだから、私はこの辺りで失礼させてもらうね」

「あ、はい。今日はありがとうございました」

「補足と第三者としての目撃、ありがとうございましタ」

「ううん、こちらこそだよ」

「彩柱先輩。私たちは正攻法だけで動きますので。先輩もそのようにお願いします」

「うん、分かってるよ。じゃあねー」

 そうして俺が悩んでいる間に、彩柱先輩は部屋から去っていった。

 さて、どうしたものだろうな?

余談ですが。

スキンドーラのマスカレイド前の容姿は、新・女神転生3の妖魔ディースを思い浮かべていただければ分かり易いと思います。

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〈アンデッドの仮面体と言うものは、死んでいるものをモチーフとした仮面体であるがために、厄介な点を備えているらしい。 一般的な不死者のイメージの影響をかなり受けるのか。 不死者といえば光に弱いイメー…
アンデッドの弱点。日光とか貴金属とか? 全裸時の謎の光は神様製だから実質聖なる光なのでは? 元凶の綿櫛には決闘で負けたら『ナルキッソスと同じ服・同じ構図・同じ設備で同時に写真集を出す刑』とかをしたら…
>『パンキッシュクリエイト』 スパルプキン達「「来年のハロウィンでまた会おうね!」」
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