153:七月の予定確認
今日のマスカレイドの授業は無事に終わった。
今後は各個人、各小隊ごとに、マスカレイドの授業中に個人練習を行うか、小隊での練習を行うか、ホールで行われている決闘を見に行くかを選ぶことになるだろう。
場合によっては授業を早めに切り上げてサークル活動を始める生徒も出てくるかもしれないが……まあ、それも含めて個人の自由だな。
最終的には決闘の実力と言う形で以って、嫌でも示すことになるわけだし。
「さて、それで俺たちの小隊練習はどうしようか?」
「うーん。可能なら週に一度くらいは機会を設けたいとは思っているかな」
「そうですネ。せめてそれくらいは連携訓練をしておいた方がいいと思いまス」
「イチたちだと、何処かで必要になるでしょうからね」
で、今は放課後。
俺たちはサークル『ナルキッソスクラブ』の事務室に集まって、これからの予定を確認する事にしている。
「でも個人での練習、情報収集、その他用事とあるし……出来れば授業時間内には入れたくないけど、協力してくれる外部の人の関係でサークル活動が割り込むこともあるかも」
「なるほど。つまり、きちんと予定を立てないといけない訳か」
「そうなるね」
とりあえず、今後の予定はきちんと立てないといけないようだ。
幸いにして、小隊で行う決闘を学園の授業で行うようになるのは早くても夏休みが終わった後のようだから、余裕自体は有りそうだ。
「と言うわけで確定している予定を三つほど挙げちゃおうか。で、それからどういう風に訓練していくかを決めようね」
「三つ?」
俺はスズの言葉に首を傾げる。
はて、確定している予定は三つもあっただろうか?
一つは思い浮かぶのだけど。
「一つ目、実を言えば早速だけど、サークル『ナルキッソスクラブ』の予定が授業時間に食い込む予定になっています」
「学園の外務部広報課に出す宣材写真の撮影だったか」
「加えて『シルクラウド』社とその関連企業が求める写真の撮影もありますネ」
「イチたちのサークルの初めての本格活動ですね」
スズが予定表の7月3日……つまりは明後日の所に写真撮影と書き込む。
うん、これは俺も知っている確定していた予定だな。
なお、当日は俺は言われるがままのマネキンになるだろうし、初めてという事でスズたちも自分が将来担当したい部分のスタッフさんに付き従って動き回る事になるだろう。
「二つ目、ナル君は忘れているかもしれないけれど、来週の月曜日と火曜日の午前中は期末テストです」
「ひゅっ」
「この様子……これは忘れていましたネ」
「……。何とかはなるはずです」
「と言うわけで、少なくとも月曜日の午後は復習に当てるべきだと思います。土日で詰め込めれば、そっちの方がいいんだけどね」
予定表にテスト勉強と言う項目が書き加えられる。
自信? あるはずもない。
ちなみに決闘学園の期末テストは、各個人の各科目でそれぞれのレベルに合わせて授業を行っている都合上、それぞれのクラスでテスト内容が異なる。
また、このテスト結果によっては二学期以降の座学の授業をどこで受けるかも変わってくる。
具体的には、100点満点中、96点以上かつ希望するなら上のクラスに上がれるし、39点以下なら下のクラスに下がるか長期休暇を利用した補習授業を受けることになる。
補習授業を受けることになれば、当然ながら寮を出て自宅に一時帰宅するのにも制限がかかるし、夏休み中にあるらしい夏季合宿中も幾らか制限を受けると聞いている。
なので、出来るだけいい点を取りたいわけだが……。
「スズ……出来る限りでいいから教えてくれ。マリーも頼む……」
「仕方がないなぁ。ナル君は」
「でハ、頑張って教えるとしましょウ」
「すみません。イチも一緒にお願いします」
「うん、任せて」
うん、俺にはスズとマリーに泣きつく他ない。
こんなところで、俺は一人でも大丈夫だなんて意地を張るような勇気とプライドは俺にはない。
余談だが、イチは俺よりも成績は良いが、油断は出来ないと言う位置に居るらしい。
油断しなければ39点以下は取らないだろうけど、逆に言えば油断をしたら怪しい……と言う感じのようだ。
もう一つ余談だが。
護国さん、羊歌さん、吉備津、縁紅辺りは座学でもほぼトップクラスと聞いている。
うーん、徳徒、遠坂、曲家が俺よりなのを考えると、甲判定者は両極端に思えるな。
「で、三つ目。マリーの誕生日が7月18日なので、此処は誕生日会をやります。これは決定事項です」
「……。初めて聞いたんだが? マリー」
「初めて話しましたからネ。聞いた事が無いのは当然でス。ですガ、スズ。その話は期末テスト後にしておこうと言っていたではありませんカ。ナルのテスト勉強の邪魔になるのは明らかでしたシ」
「折角の機会だから話しちゃおうかなって。ここで黙っておく方が、後で、なんであの時に、って話になりそうだし」
「それハ……そうですネ」
三つ目の予定は完全に想定外の物だった。
いやまあ、一年の何処かに誕生日があるのは当然の事なのだけれども、マリーは明かさなかったし、そう言う話題が出たこともなかったので、気にする事も出来ていなかった。
うーん、何か誕生日プレゼントを考えておかないとな。
「ちなみに私の誕生日は2月3日。ナル君の誕生日は1月3日。護国さんは10月22日だね」
「あ、うん。そうだな」
「ではイチも。イチは9月23日です」
「なるほド。でハ、マリーが一番のお姉さんだったわけですネ。実ハ」
スズがどうして護国さんの誕生日を知っているかについては、誰も突っ込まない。
だってスズだしな。
本人に聞いたのか、調べたのかは分からないが、何処かで知ったからこの場で話しただけだろう。
必要なのはどうやって知ったのかを知る事ではなく、その内容を覚えておくことである。
「で、話は最初に戻るわけだけど……」
「とりあえず小隊での訓練は夏休みに入ってからでいい気がしてきた」
「ですネ。これからちょっと忙しそうですシ」
「突発的な何かが入ってくる可能性もありますから、日程に余裕は持たせておきましょう」
「うん、そうなるよね。じゃあ、その方向で組んでいこうか」
その後、俺たちは一応の日程を組んで、基本的にはそれに従って行動をする事にした。




