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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
3:体育祭編
123/499

123:体育祭三日目・特殊決闘プロレス・決勝の後

「スズが目を覚まさない?」

「はい。控室に転移させられた後に何かあったのか、決闘中の何かが原因なのかは分かりませんが、決闘終了後に念のためにと控室に行った先生が気絶しているスズさんを発見。目を覚ます様子が見られないため、保健室へと移送したそうです」

「分かった。直ぐ行く」

「そう言うと思っテ、ルートは確保してありまス。後は走るだけですネ」

 特殊決闘・プロレス、一年生の部の決勝が終わった後。

 優勝者の為のセレモニーが始まるのが二年生の部と三年生の部が終わった後である上に、俺とスズの決闘でリングの強度が怪しくなったとかで整備が入ったので、俺は暇な時間を得ることになった。

 なので、暇な間にスズと合流しようと思ったのだが……その前にイチとマリーの二人からもたらされた情報は『決闘を終えたスズが目覚めず、保健室に運ばれた』と言うものだった。

 よって、俺たちは保健室へと急行。

 そこで保健室の先生に事情を訊く事になった。


「それで先生。スズの容体は?」

「私の仮面体の機能を使ってざっと調べた感じでは、肉体的には異常なし。頭を打った様子もないし、内臓におかしなところもない。ただ眠っているだけね」

 スズは保健室のベッドに寝かされていて、呼吸に合わせて静かに少しだけ体が動いている。


「気になる点としては……魔力の回復速度が異常に遅い点ね。魔力が底をついているのは決闘で全力を振り絞ったのならあり得る範疇だけれど、普通の人の100分の1以下のスピードでしか魔力が回復していないのはあり得ない事よ。まるで回復した端から何処かに吸い取られているかのようね」

「「「……」」」

 どうやらスズには何かが起きているらしい。

 となれば、目を覚まさないのもそれが原因だろう。

 では、そんなスズの為に何が出来るかと言われれば……悔しいが、出来る事は見当たらない。

 俺の仮面体の機能にも、使えるスキルにも、他人を癒せるようなものは存在しないのだから。


 コンコンッ


「どうぞ」

「失礼する」

 と、ここで保健室に誰かが入ってくる。

 炎のように真っ赤な髪の男子生徒で、たぶんだが先輩だ。

 赤髪の先輩はスズの事を一瞥した後に、俺たちの方を向く。


「どうかしたのかしら、陽観(ひみ)君」

「女神からご神託がございました。先生につきましては、このメッセージの通りに対処していただきたいそうです。それと、そちらのナルキッソス御一行にはこちらのメッセージを渡すようにとの事です」

「「「!?」」」

 赤髪の先輩……陽観先輩から、まさかの言葉が出て来た。

 神託とはいったい、いやそれより、何故この場で?

 スズに起きた現象と女神に何かしらの関わりがあると言う事だろうか?

 いや、そもそもとして、本当に女神からのメッセージなのだろうか?


「では、私はこれにて失礼させていただきます」

「……。分かりました、ありがとうございます」

 とりあえず陽観先輩の信用性は確かな物のようで、保健室の先生は陽観先輩が去ると共に、何処かへ連絡すると共に、スズに与えるためのものであるらしい点滴を準備し始める。

 イチが念のために点滴の内容をチェックしたりしているようだが、ごく一般的なもののようだ。

 なので、俺は陽観先輩から送られてきたメッセージを見てみる。

 そこにはこんな事が書かれていた。


・スズの現在の不調は魔力不足によるもので、魔力が回復するようになれば自然と目覚める。

・スズが決勝で見せた異常な量の魔力は、魔力の前借をしたようなもので、現在はその返済中。

・スズの体調や栄養状態にもよるが、一日もすれば目覚めるだろう。

・なお、魔力の前借である以上、返済に当たっては利息が発生しているのだが、真っ当な利息であるので、安心していいらしい。


 だそうだ。


「魔力の前借……」

「そんな事が出来るんですネ。ある意味でハ、マリーの『蓄財』の別バージョンのような物でしょうカ」

「かもな。ただ、マリーのと比べて、使った後の負荷が段違いに重い。普通なら、俺との決闘程度で使うような代物じゃなかったのは確かだな」

「それだけスズの思いが重かったと言う事ですかネ」

「そうなるだろうな……」

 とりあえずスズが目覚めたら、一度怒っておこう。

 そんな危ない力に手を出すんじゃないと。

 女神曰く、利息は真っ当との事だが、利息が真っ当でも返し切れないだけ借りたら、死ぬまで目覚めない事だってこの分ならあり得るのは明白だ。


「ナルさん、怒っていますね」

「流石にな。俺が裸になっても、ちょっと周囲に迷惑をかけるだけだが、スズのこれはそうじゃないからな。怒らない訳にはいかない。俺は自分の命を投げ打って何かを為そうと言う考えには否定的なんだとは、改めてはっきりと伝えておかないと」

「そうですカ。ではそれを伝えましょウ。きっト、スズにはいい薬になると思いますネ」

「だな」

 しかし、あの黒い魔力……何処かで覚えが……。

 あー、そうだな、縁紅との最初の決闘で似たような魔力を感じた覚えがあるな。

 あの時よりも今回の方がもっと量が多くて、嫌な感じだったわけだけど。


「それでナルさん。この後はどうしますか?」

「スズが目を覚ますまで待つ。先生と相談した上でになるが、飯とかも持ち込んで待たせてもらおう」

「分かりました」

「でハ、そのようにしましょうカ。交渉して来ましょウ」

 その後、俺たち抜きで体育祭は何事もなく終わり。

 女神の予測通りに一日経ったところでスズは目覚め。

 目覚めたスズに対して、俺だけでなく護国さんからも説教が入り、俺たちの体育祭は何とか無事に終わる事になったのだった。






「スズ。次からこう言うのは無しだ。恒常的な後遺症はなかったかもしれないが、一時的な後遺症があるのも駄目だ。俺はスズが傷つくような状況になる事を望まない」

「うん、分かったよナル君。次からは気を付けるね。でもその……色々と発散できて、私は楽しかったよ、ナル君」

「そうだな。それはそうなんだろうな。まあ、楽しかったのは俺も否定はしない。だからこそ、次からはきちんと気を付けてくれ」

「うん。分かったよ、ナル君」

 なお、寮ごとの対抗戦に関しては、いつの間にか虎卯寮がだいぶリードしていて優勝。

 戌亥寮は特定個人の成績は良くても全体的には1位を取り逃していたとかで、4位になったとの事だった。

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― 新着の感想 ―
神託がありました。『眠り姫を起こす方法は唯一つ。そう、それは王子様のキこの馬鹿姉がぁ!!』だそうです。
> 決闘中の何かが原因 まぁ、まず間違いなく例の薬の代償でしょうね > 俺とスズの決闘でリングの強度が怪しくなったとかで整備が入ったので、俺は暇な時間を得ることになった。 スズの炎と爆発でボロボロに…
想い焼いて魔力の前借りか、 今後他の人が自滅覚悟で借金する可能性がでてきますね そして決闘で借金ありって響きはギャンブルの香りがしてきますね アビスのイメージがポンコツ方面なので そこにギャンブル臭…
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