103:体育祭一日目・終わった後の食事会
「「「カンパーイ!!」」」
体育祭一日目は無事に終わった。
だが、体育祭は全三日間の日程で行われるため、明日からもまだまだ競技は続く。
が、それはそれとして、一日目を無事に乗り切った事は間違いないので、戌亥寮の食堂では有志のメンバーと言う名の寮生およそ七割が集まって、食事会、反省会、明日以降に備えた会議を兼任した集まりを催していた。
「スズ、マリー、イチ、三人とも、一日目の結果が良かったようで何よりだ」
「ありがとうね、ナル君」
「頑張りましたからネ。結果が出て何よりでス」
「ありがとうございます。しかしナルさんは……」
「俺については仕方がない。あのルールじゃ無理だ」
と言うわけで、俺たちも食堂へと移動して、反省会をしつつ夕食を取る。
実際、俺の今日の競技……10000m徒競走については、あのルールの中で出来る事はやったと思うんだよな。
あれ以上の記録を出そうと言うのなら、俺と『シルクラウド・クラウン』の組み合わせでも使える、燃費がそれなりな加速系のスキルでも用意してもらわないと、どうにもならない。
あるいは戌亥寮一年生の面々で、俺以外にも10000mを走れる人間を見つけ出し、代わってもらうかだな。
バイクに乗った先輩は無法と言っても良い速さだったし。
で、俺の反省点についてはこんな感じだが。
スズたちにもそれぞれに反省点や改善点があるのだろう、積極的に話し合っている。
それと周囲の生徒たちも同様で、嬉しそうに今日の武勇伝を語っているものも居るが、同じくらいに悔しそうにしつつどうすればよかったかを話し合っているものも居る。
当たり前なのだが、この場に集まっているだけあって、みんな積極的と言うか、前向きと言うか、真剣である。
「さて、明日の競技はどうなっていたっけ?」
「ジャンルとしては投擲・射撃の部門と障害物競走の部門に分かれてるね。競技の合計数が今日よりも多いから、その分だけ時間の被りも多いかな」
「つまリ、今日と違って友人の競技を見に行くのが難しいわけですネ。という事ハ、明日は各自単独行動になりそうですカ」
「出場種目は……ナルさんが強行突破で午後の最後。スズが円盤投げ、イチが射的、マリーがやり投げになっていますね」
ではついでに明日の事についても確認しておこう。
まず、俺が出場する強行突破は、そのルールの都合もあって、二日目の最後、他の競技が行われていない時間に行われる。
つまり、ある種の目玉になるわけだな。
そして、他の競技は今日と同様に、校内各地で学年と時間をいい感じにばらして、テンポよく進められることになるようだ。
時間を確認した限りでは……頑張れば、スズたちの競技を俺が見に行くことは出来そうだな?
スズたちが俺に同行するのは、待機時間とかを考えると出来そうにないが。
「うん、行けそうだな。出来る限り見に行くから、頑張ってくれ」
「ナル君……うん、待ってるね」
「ありがとうございまス」
「頑張ります」
ちなみに、護国さんはパルクールに出場するとの事。
さっきメッセージが来ていた。
脳内で検討した感じでは……まあ、消化具合によってはギリギリ見に行くことも出来そうかなと言う感じだ。
ただ、折角メッセージを送ってくれたのだし、頑張ってみようとは思うところである。
「しかし、今日の競技に合わせてかなり偏った調整をしていた場合には、これから明日に備えた調整をしないといけないのか。大変だな」
俺は明日の強行突破について改めて考える。
あの競技は、周囲から降り注ぐ妨害を如何にして凌ぎつつ前進するかと言う競技であり、単純に頑丈なだけでは駄目で、妨害への対策を考えないといけない。
一応、幾つか考えては来たけれど……半分くらいは出たところ勝負になりそうか。
「そうだね。でもそう言う人ならたぶんこの場には来ていないか、今日の自分の競技が終わった時点で調整に向かっていると思うよ」
「ですネ。スキルの変更くらいなら事前に決めておいたものをセットしておくぐらいですガ、それ以上をするなら早め早めに動くべきでス」
「イチとしては、そもそも、そこまで偏った調整はするべきではないと思いますけどね。扱いきれないと思うので」
「それはそうなんだけど、デビュー戦を飛ばした子は此処でアピールしないといけない場合もあるから。そういう子だと、無理をしない訳にもいかないんだと思うよ」
「世知辛いと言う奴ですネ」
「まあ、事情は理解しますけど」
仮面体の調整か。
俺は大規模なのは自力でやらないといけないから、逆に一般的な辛さとか面倒さは分からないんだよな。
スズたちの調整については心配していない。
この三人が終わらせていないとかあり得ないからだ。
「あ、そうだ。ナル君」
「なんだ?」
と、此処でスズが何かに気づいたように俺へと話しかけてくる。
「改めて言う事になるけれど、体育祭三日目の特殊決闘・プロレスでは私とナル君は敵同士。だから、明日はこうやって話し合うのも無しね。私は真剣にナル君に挑んで……勝つつもりだから」
「分かった。それなら俺も真剣にスズへと挑んで、勝たせてもらう。だから、情報の交換も無し。そう言う事だな」
「うん、ありがとう」
体育祭の競技に誰が出るかを決めた時にも出た話題ではある。
だが、明日以降に出すわけにもいかないから、今日の内に出したと言うところだろう。
なんにせよ、俺の答えは変わらない。
真剣に、全力で、ただ決闘に臨むだけである。
「いつの間にか体育祭三日目、注目の一番扱いになっているんですよネ。今年の特殊決闘・プロレス」
「そうですね。トーナメント表は発表されていないし、システム都合で初戦は同寮対決にならない事が確定しているのですけれど」
「どっちが勝つと思いますカ?」
「さあ? ただ、どちらが勝つにしても、二人の関係性に変化は起きないと思います」
「まあそうですよネ。ナルとスズですシ」
しかし、スズと決闘する事になったら……まあ、色々と考えることになるだろうな。
スズは俺の仮面体の事も、俺自身の事も知り尽くしているだろうし。
俺を倒す手段は確実に持ち合わせているはずだから。
「とは言え、まずは明日の事だな。明日の体育祭二日目も頑張っていこう」
「うん、そうだね」
「ですネー」
「はい」
俺はこう言って、話を切り上げたのだった。




