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指揮棒

作者: ぃっゅぁ

テスト勉強から逃れたかったので初めて書きました。不純な理由です。

誰しも何かしらにつまづくこと、ありますよね。それをどう乗り越えるのか。そんな話です。

目が覚めた瞬間、カーテンの隙間から太陽の日が降り注ぐ。光り輝いている。だが、私の心の太陽はココ最近ずっと沈んだままだ。まぶたが重い。あれほど楽しいと思っていた学校も、今はちっとも行きたいと思わなくなってしまった。

今年の7月。部活のコンクールに向けて、練習が始まった。それと同時に、何か、まるで、これから雷雨が降ってくるんじゃないかと思うような、そんな不安を、私は感じていた。


このままの私が、コンクールに行けるのか━━━━

自分なりに部活は一生懸命取り組んでいるつもりだ。つもりでも、どうしても弾けない譜面があった。先輩は大丈夫と言うけれど、いつかは弾けるようにならなければいけないと、自分に言い聞かせていた。だが、弾けるようにはなかなかならない。周りはどんどん進んでいく。部員がインテンポで弾いている音が、耳の奥にずんと響いてきた。ただ1人、私だけが、ずっとスタートラインに立ったまま、動けない。むしろ後ずさりしてしまっているのではないか、マイナスになっているのではないか。やがて、私は部活をする意味があるのか、生きている意味はなんなのか。そんな疑問を持つほどに追い込まれていった。

そんな思いを抱えたまま、時間は過ぎていく。コンクールは待ってくれなかった。コンクールはあと1ヶ月ほどに迫っていた。


「部活、辛いかもしれない。」

そう、ぽつりと、今にも消えてしまいそうなほどか細い声で呟いた。

「力みすぎなんじゃない。」

母は続けた。

「すぐ他人と比べないでさ、自分と紳士に向き合いなよ。」

「どういうこと?」

「それは私にも分からない。」

思わず自分の口がぽかんと開いた。

「はぁ?」

「取り敢えずやってみなって。」

「自ずと道が見えてくるはずだよ。」

母の言葉はどうにも理解し難いものだ。だが、母の言葉はいつも私のことを救う手助けをしてくれていた。


昔、母に中学時代の部活でのトラウマをずっと引きずっていることを話した。

辛かった。

私のトラウマを言葉にし、口にする度に、あの時の辛い記憶が、今まさに起こっているのでは無いかと錯覚するほどに、鮮明に蘇ってきた。辛かった。当時、学校のトイレで密かに泣いたことも思い出した。そんな私の話を聞いた母親は、なんと声をかけてくれるのだろうと期待していた。返答は

「ふざけてただけじゃない?」

だった。

そんな訳がない。

そう強く思い口にした。

だが母は続けて

「そんな悲しい思い出にしてないでさ。自分のこと、からかってたんだって思った方が上手くいくじゃん。」

ハッとした。

私はなんて愚かなのだろう。

そういえば、あの頃の友達は本当に私のことを憎んでいたのか、嫌いだったのか、悪意を持っていたのか。そんなことは、彼らにしか分からない。なのにどうして、私は勝手に、彼らは私を憎んでいると、嫌っていると、決めつけていたのか。一気にかかっていた雲が晴れた。自分を追い詰めすぎていただけだった。


そんな出来事を思い出した私は、母の「自分と紳士に向き合うべき」という助言を、実行してみることにした。

するとどうだろう。

自分が、「周りより劣っているからできない」と放り出していた問題に、別のアプローチで解決できないかと考えるようになった。その途端、楽器を弾く手が、異様に軽くなっていった。オート機能が着いているかのように、成功をなぞっていく感覚を、たしかに感じていた。


そうだった。部活に入ってすぐは、新しさの連続で、部活が楽しくて楽しくてたまらなかった。希望に満ち溢れていた。これからどんな生活になるのか、成長した自分はどうか、想像をふくらませ、寝る前には日記を書いたりもしていた。


その気持ちが今、ここにある。たしかに、ここに。

譜面をなぞる手、弦を抑える指、ネックを支える腕、弦を弾く指、そして心、その全ては、ブレーキという言葉を忘れ去っていた。


ついに、コンクール本番。

カーテンの隙間から太陽の日が降り注ぐ。光り輝いている。晴れている。私はすぐに飛び起きた。まるで修学旅行当日の朝のように。


急いで支度をした。緊張と同時に、どうにも抑えきれないワクワクが胸の奥を右往左往していた。


シーンと静まりかえる中、足からてっぺんまで希望に満ちた指揮棒が、シュッと、そしてしっかりと、前を向いた。



結果がどうなったのかは読む人によって変わります。

具体的に部活で何を悩んでいたかは思いつきませんでした。というか分かりませんでした。小説ぽい表現をしてみたかったのでいい体験になりました。

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