表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/98

第92話 幸せの終わり

 今日も俺達は南の門からウォルド領に向かう。

 素材買取と解体を依頼し、預けた分の買取金をもらいに行くためだ。


 アーマン村長から果物を門番にあげるのは、もうやめてほしいと言われた。

 お駄賃にと思って始めたが俺達が通る門番の、希望者が多くなり本来の仕事をしないらしい。

 それはすまないことをしました。



 俺達はウォルド領に住んでいないので、街を離れる時にギルドに買取してほしい素材を預けて行く。

 そして次に来た時に、そのお金をもらい次を預けて行くんだ。


 魔物も種類によって金額が違う。

 だから買取依頼を出す時も考えないといけないことだ。


 例えば甲羅が固く防具になる素材なら、ホーネット(蜂)、キラーアント(蟻)、ブラックビートル(カブトムシ)、レッドスコーピオンなどだ。


 でもこれを毎回出していたら、供給過多になり買取額が下がる。

 だから1度出したら、次はジャイアントスパイダー、ポイズンスパイダー、センチピード(毒ムカデ)など、毒の素材を採取できる素材だ。


 だが思っていたより、預けていた素材の金額が安くなっていく。


 買取カウンターのモーリスさんに聞くと、ドラゴンが現れ物流が滞り食べ物の消費はあるが入ってきても僅かな上に高価だ。

 食料が高騰し素材の買取など、二の次らしい。

 逆に食用になる魔物や魔獣なら大歓迎だそうだ。


 物資が入ってくるはずの一番東アレン領の、界隈にドラゴンが現れ始めたという。

 アレン領とウォルド領の中間にある『クリームシチュー発祥の地』と言われたテオドーラ村も襲われている。

 

 そして数日前には今いるウォルド領寄りの、エターブの町がドラゴンに襲われ壊滅したそうだ。


 あくまでも人伝いの話で、どこまでの被害なのかはわからないが。


 そして探索隊を派遣しドラゴンを探しているが、見つからないと言う。

 住処がわかればまだ攻めようがあるのに。

 次は一番東のアレン領か、いいや隣の村が襲われたこのウォルド領が襲われるの番だ、とかそんな憶測が飛び交う。


 領主のノルベール公爵も蔵を開き、貯えを街に卸しているが底をつきかけているとか。

 そして商人ギルドも力を貸してくれてはいるが、足元を見てこの機会に値上げをする商人も多いとか。

 ある意味、商売なのでそれも仕方がないと思うけど。

 売れるものが無くなった時、この街はどうするのだろう。


 俺がいるジリヤ国は内陸にあり、四方を山や隣国に囲まれている。

 王都を国の中心に作り、それを守るかのように周りに東西南北に6つの州を、更に王都寄りの東西に2つの州を置き公爵家を配置し外敵に備えている。

 

 その王都寄りの東の州が、今いるウォルド領だ。

 ウォルド領に繋がる他の州は一番東のアレン領か、西側の王都しかない。

 北南の他の州とは街道がなく、行き来が出来ないのだ。

 あくまでも王都寄りの東西の2つの州は、王都防衛用の州として造られていた。




 人々はどうするのだろう?

 この街を捨て東の王都に逃げ始めている人もいるようだ。

 食べるものが無くなってからでは、遅すぎるから。


 そんなことを思いながら、俺達はヴィラーの村へ戻って行く。

 ウォルド領街道から北上するヴィラーの村に続く道は凸凹して悪い。


 俺達はそこで一旦、立ち止まった。

 以前から考えていたことだったが、道が悪すぎる。

 

 オルガさんに頼んで凸凹の道に、Wind slash(ウィンド スラッシュ)を放ってもらった。

 ウィンドスラッシュは、ウィンドカッターの様に剣技で風魔法を飛ばす技だ。

 だがスピードも遅く、奇襲や牽制には使えてもメイン攻撃にはならない。

 だからあまり使わない。


 だが凸凹した道を平らにするなら別だ。


 ヒュン!ヒュン!ヒュ~~ン!


 もう1度だ。


 ヒュン!ヒュン!ヒュ~~ン!


 そしてウィンドスラッシュで切った土を、ストレージに収納していく。

 土がぬかるのは粘土質で水が土に染みこまないからだ。

 そしてぬからないところは、土に有機物が混ざっており土に水が染みこむからだ。


 だから俺達は事前に山で有機物が混ざった土を探しておいた。

 ストレージから平らになった路面に土を巻く。

 そして水捌けが良い様に、山で採取してきた砂利石を更に均等にひいた。


 街道に続く道が良くなれば村の人達も、ウォルド領に穀物を売りに行く時に楽になるだろう。

 俺は自分に出来ることを、村のためにするだけだ。



 作業をしながら以前、会ったファイネン公爵の言葉が思い出される。


『相手は空を飛ぶ。森の中を進み山脈に向かい、しかも出せる兵も500人だな。攻めてくれば別だが、こちらから攻めるのは得策ではない。そして空にいる魔物にどの様な攻撃手段があるというのか。侍女達には可哀そうだが、攻めても勝ち目はない』



 村に近付くにつれ様子が変な事に気づいた。

 遠目で見る限りでは所々、煙が出て門番も居ない。


 俺達はAgility(素早さ)UPで走って村に向かった。

 誰もいない城門を開け村の中に入る。


 すると建物は壊され燃えている。

 血溜まりが道の至る所にある。

 

「に、にげろ。エリアス様…」

 見ると南門から入ったところにあるアルマン食堂の建物が壊され、アルマンさんが頭から血を流し倒れていた。

 周りには誰のものか分かる、女物の衣服の端切れとたくさんの血が流れていた。


「大丈夫ですか、アルマンさん。オルガさん、早く回復魔法を」

「えぇ、任せて。命の鼓動よ。躍れ命の躍動、汝の傷を癒せ。ウォーターヒール!」

「俺の事は良いから、早く逃げてくれ。エリアス様までやられちまったら」

「どういうことですか、教えてください」

「奴が来たんだ。もう終わりさ」


〈〈〈〈〈 グワァ~~~~~ン!! 〉〉〉〉〉


 大きな鳴き声が俺達の屋敷の方から聞こえた。


 俺達は向って走る。

 

 すると大きな影が浮かび上がった。


 緑色のグリーンドレイクが翼を広げていた。

 口にはメイドのアーネさんを咥えて。


 そしてお腹の辺りを2、3度噛んで、止めを刺しそのまま丸飲みをした。


「お母さん」

 パメラさんの声が聞こえた。


 グリーンドレイクの腹は、たくさんの人を飲む込んだのであろう。

 元の倍はあろうかと思うくらい膨らみ、満腹の様な顔をしていた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んで頂いてありがとうございます。
もし面白いと思って頂けたら、★マークを押して応援して頂けると今後の励みになり、とても嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ