第77話 ウォルド領 冒険者ギルド
俺達4人はウォルド領へ走っている。
すると大きな城門が見えてきた。
城門の貴族入口には並ばず、一般の入口に並んだ。
「はい次」
門番に促され前に出る。
「身分証を見せて」
「田舎から4人で冒険者になる為に出て来たので。持っていません」
「そうか、冒険者にか。その割には後ろの2人は歳を食い過ぎているな。1人500円だ。身分証がないと出入りの度に500円かかるからな、早く登録しろよ」
なにか余分な事を言われた気がする。
多分、歳の事はオルガさんとルイディナさんのことだ。
この世界では19歳や21歳は、もうおばさんに片足を突っ込んでいる年齢だ。
後ろを振り向くとオルガさんと、ルイディナさんは苦笑いをしている。
ここは我慢か。
4人分の2,000円を払い門をくぐる。
冒険者ギルドは街の城門近くにあった。
どの街の冒険者ギルドも街から、出入りしやすい様に門近くにあるようだ。
アレン領と同じ作りだ。
だがアレン領より建物は大きいかもしれない。
スイングドアを開け中に入ると、仕事を探す冒険者がまだ何人も残っていた。
時刻は朝の8時くらいのはずで、アレン領にいた時ならもう今日の依頼を決めて城門を出ている頃だ。
7つある受付の内、空いているところに向かった。
ミディアムでキュートなカールで、赤みがかった金色の髪をした女性がいた。
「おはようございます。どんなご用でしょうか?」
「4人で冒険者登録をしたいのですが」
「登録は初めて、でしょうか?」
「いいえ、以前登録していましたが期間が開いたので」
「身分が分かるものがあれば、そこから再登録できますが」
「いいえ、最初から登録します。元々ランクは低かったので」
「わかりました」
クス、クス、クス。
『おい聞いたか。再登録でもランクが同じって。Fかよ』
『笑っちゃうぜ』
『それに男1人に女3人だとよ』
『ハーレムかよ。しかもその内2人はおばさんだぜ』
後の方から俺達のことを言っている4人組がいる。
『気にしなくていいからエリアス』
ルイディナさんが、小声で言う。
さすが大人です。
「私は受付担当のマリサです。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
この人がこれから俺達の担当者か。
俺達の稼ぎ次第で、この人にも歩合が付くのか。
ふと、そんなことを考える。
「ではこの用紙に記入してください。書けなければ代筆いたしますが?」
「大丈夫です、俺が書けますから」
俺はそう言うと事前に決めておいた名前を羊用紙に書いた。
まず俺の名はオマリ。
なぜ俺はオマリなのか?
いきなり名前を変えると戸惑うと思い、思い付いた短い名前のオマリにした。
オルガさん達は元々3人で『紅の乙女』パーティーを組んでいた。
でも今は俺を入れて4人になるから新たなパーティーになる。
だからオルガさん達は、名前はそのままで再登録する事にしたんだ。
元々、ランクも低かったし。
しばらくするとギルドカードができて渡された。
なにかあった場合に備え、カードには簡単な情報が記載されている。
マリサさんが言う。
「御存じかと思いますがギルドカードは身分証明となりますので、無くさないでください。紛失されると再発行に5,000円かかり、貴方達が死亡された時の身分証にもなります。大切にしてください」
「分かりました」
そしてオルガさん達にギルドカードを渡す。
よく考えたら元々オルガさん達は、Eランクのパーティーで有名ではなかった。
だから再登録する必要はなかったのでは?
まあ、いいや。
「しかしすぐに死亡の身分証になりそうだな」
「男も女も弱そうだ」
俺達が言い返さないから、調子に乗って声が大きくなっている。
「しかし男は良いが、女は勿体なくないか?」
「お前、あいつらの顔を見てないのか?3人共醜女じゃん」
「穴があれば良いって男もいるからな、アハハ!」
俺はオルガさん達を見た。
いつもならルイディナさんが、真っ先に『いいから、いいから』と手をヒラヒラさせて言いそうなのに。
3人共下を向いて卑屈な顔をしている。
俺はこんな3人の顔を見たことがなかった。
ふと見るとオルガさんの顔から水滴が1粒、2粒と落ちた。
そして床を濡らしていく。
「あははは!おばさんが泣いてるみたいだぜ」
「おい、やめてやれよ」
「そうだぞ、ブスでも生きる権利はあるんだ」
「ブスだから客も引けないから、冒険者か。嫌だね~」
パメラさんが手で顔を覆う。
「「「 ぎゃははははははは!! 」」」
「「「 ぎゃはははははは!! 」」」
「「「 ぎゃははははははははは!! 」」」
「「「 ぎゃははははは!! 」」」
〈〈〈〈〈 ガチャ!! 〉〉〉〉〉
俺の中で何かが壊れ外れる音が聞こえた。