ごちそう
朝の通勤が嫌いだ。
満員電車に揺られ、知らない者同士が体を密着させて、
運ばれる様は、なんだか人間扱いされていないようで、
嫌いだ。
でももっと嫌いなのは、朝のトイレだ。
高校2年生の娘、中学3年生の息子との、我が家に一つしかないトイレの争奪戦。
大概敗れて、駅まで我慢することになるのは、私だ。
毎日、規則正しく訪れる便意が憎い。
通勤時間の駅のトイレも行列が出来ている。長い列が出来ている。
うんこをしたい男たちが大勢並んでいる。ここにいる全員の大腸から、
うんこを取り出して、ブルーシートの上に、置いたら、どのくらいの量になるのだろう。
日本中のうんこを集めたらどのくらいの量になるんだろう。世界中の…。
やめよう・・・。
50歳を過ぎて、加齢のせいだろうか、味覚が変わってきた。
若いころ好きではなかった、フキや、奈良漬け、わさび漬けなんかが、
死ぬほど美味く感じる。だから、年齢を重ねるのも、悪くないと思えてくる。
50歳でこんな調子なんだから、70歳あたりでは、うんこさえ、おいしく頂けるようになっているんじゃないかと思う。父は、今年80歳なので、新たな味覚の領域に突入しているはずだ。羨ましい限りだ。
そういえば、昨晩は、酒のつまみに、クサヤを焼いて食っていた。うまそうに。
あんなの私から言わせれば、うんこみたいなものじゃないか。匂いとか。
やっぱり私の説は、正しかった。
私のトイレの番が回ってきた。さあ、「ごちそう」をひねり出すとしようか。