ファイト!-4
張り出された掲示を見上げながら美亜はしばらくその場を動けなかった。騒がしい本館の中央通路の掲示板の前で美亜はじっとその文字を辿った。
『奨学生選抜試験の告知』
「奨学生……」
美亜はそう呟きながら考えた。この学校では、毎年奨学生の募集を行い、授業料免除の特典を与えていた。
ただし人数は少ない。いま掲示板を見てその制度を思い出した。
もし奨学生になれれば授業料が免除になる。そうすれば、母の負担も少しは楽になる。
しかし、美亜はG組だった。成績順にクラス分けされる三年生の一番下のクラスだった。美亜自身勉強が嫌いなわけではなかった。小学校の頃はクラスでもいいほうで、先生の方から緑ヶ丘学園の受験を薦められたくらいだった。いまは、父のせいもあるだろうが、もう勉強をする気はさらさらなかった。ただ、どうにかしてお金を稼ぎたいとだけ思っていた。いまのアルバイト以外に何か仕事ができないかといつも考えていた。中卒で就職も考えた。しかし、どれも現実味がなく、家に帰って母の姿を見るたびに正気に戻らされるのだった。いま目の前に掲げられている言葉にも実感は沸かなかったが、自分にできる可能性のひとつであることなのは確かだった。
じっと見つめているうちに、美亜はようやく、辛うじていまの自分にできる母への孝行だと、結論を下すことができた。そして気合を入れて職員室に向かった。