とあるシェアハウスの一室。
街の明かりがまばらになった午前1時。
私は課題に追われていた。
いつもは話し声で溢れて少しだけ狭苦しく感じる作業部屋だが、今夜は違う。
他の部屋の電気はほぼ消えている。私以外誰もいない。
そんな中で私は
「わからないわ、どこに書いてあるんだ…」
「いやそれ聞いてないが」
なんて独り言にしては少々やかましい不満を垂れ流していた。
気がつけば30分が経っていた。
少し伸びをして再び作業に戻ろうとした私は、どこからか視線を感じたような気がした。
ふと振り返るとそこにはクッションにもたれかかっている一人の少女がいた。
長い黒髪の少女は何をする訳でもなく作業をしている私の斜め後ろでゴロゴロしていたのだ。
彼女の赤い瞳と目線が合うと、少し体を起こして彼女はこう言った。
「いっぱい喋ってて、私寝るから」
頭の上に浮かんだ「?」の文字を取り下げる間もなく彼女は私に背を向けて再び横になった。
それから数時間、抱えていた重荷をひとまず精算した私は一つ、深いため息をついた。
そして振り返る。やはり少女が横になっている。
ソファの上とはいえ、それはどうなのだろうか。
そう思いながら私は彼女にやや薄めのブランケットをかけ、荷物を抱えて部屋を後にした。
時計の針は午前3時を少し過ぎたあたりを指していた。