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夢の続きは山登りから  作者: 二宮シン
6/13

闇を斬る黒き刀

 シエルと別れてそろそろ三日が経つだろうか。エルピスが成長したので三日前には遥か彼方に山頂が見えていた。だが寝るか食うかしている時以外は登っているわけなので、とうとう山頂が目前に迫ってきた。しかし、マックダフが残していると言った壁がどこかで待ち受けていることは確実で、それへ立ち向かうためには黒斬りを引き抜くことは大切だ。

「だからといって、刀と対話しろって言われてもな」

 持ってみてわかるが、微かに普通の刀とは違う感覚はある。エルピスも調べてくれて、人霊に似た意思のような物が宿っているらしい。

「それと、もう近いと思うよ」

「壁がか?」

「その通り」

 ウィスプとバンシーを吸収して成長したエルピスの力は、もはや弱って首にもたれかかっていた時とは比べ物にならない。視界一つとっても、この三日で明確な一本の線で輪郭が表されるようになり、こちらが集中すれば後ろすら脳裏に浮かぶようになった。盲目の侍を題材にした時代劇をいつか見たことがあるのだが、本当にいたとしたら、まさにこういった世界が見えていたのだろう。

 更にはウィスプの使っていた防護壁と、そこらに転がっていた狼の死体を使ってバンシーの魔法も使えることが確認できた。青葉から遠くに離れても問題がないことも大きい。これだけの力があれば、壁に挑む準備をエルピスは終えているだろう。後は青葉が黒斬りを引き抜くだけだ。

「とりあえず、今日はここまでにしておくか」

 頂上にあと数百メートル登ればたどり着くのであろう木々に囲まれた平坦な地面に横になると、ふと、この山に登ってからのことが思い出されてきた。

「お前、覚えてるか? 登り始めた最初の一日のこと」

「崖の下から這い上がったときのことかい?」

「そうその時だ。あの時は大変だったな……慣れない視界で急な山を登るなんて無茶をしてよ。何度も転んで、何度も足をくじいて、その度に治してもらっていたよな」

「お腹が減ったっていうから、木の実を取ってきてあげたのになかなか皮が剥けずにもいたね」

「それは、初めの頃の視界が悪すぎたからだっての」

 なんて、そんなことを二人で笑い、懐かしみ、思い起こしていく。もう死ぬのだと諦めていた崖の下からここまで来たのは本当に奇跡だ。だが何よりの奇跡は、エルピスと出会えたことだろうと心から思える。恥ずかしくてそんなことは口にできないが、いつか正直になったら伝えよう。感謝の言葉を。

 だから、越えていく必要がある。白霧の山に残された最後の壁を、二人で乗り超えるのだ。


 人間、目が見えなくなれば他の器官が発達して補うなんて話を聞いたことがあるが、体感的には間違っていない。契約者としての力もあるだろうが、嗅覚も聴覚も研ぎ澄まされ、感受性も高まった。それだからか、目が覚めてから一時間も登っていくとどす黒い感覚を捉えたのは。

「いよいよってやつか」

 結局黒斬りは抜けなかったが、エルピスの成長に比例して青葉も成長している。異世界から来たということを他の星から来たと例えられたら、まるでか弱い地球人たちと比べて圧倒的な力を持ったスーパーマンにでもなった気分だ。

「なんなら、先に行って確認してくるけれど?」

 煽るようなエルピスに、ここまで育ててやった恩を忘れたのかと返しておく。

「まあ、ここさえ超えれば史上初になる白霧の山の登頂者だ。ボクも鼻が高いよ」

「そういうのは乗り越えてから言うもんだ。さて、行くぞ」

 出会ってから一か月もたっていないのに、青葉とエルピスの呼吸は合っている。こういう運命だったのかと青葉は思いながら、邪気とも取れる感覚のする方へと一歩ずつ慎重に歩いていく。どんな壁でも斬ると覚悟を決めてたどり着いたのは、大きく枝分かれした大樹が存在感を放つとても広い場所だった。その大樹の下には、輪郭だけでもわかるような甲冑が項垂れて座っている。中に人がいる気配はしなく、非常に静かだが、そこら中に剣や槍などの武器が散乱し、血の臭いが漂ってくる。

「ん、んっんー……ああ、またここまで人が来た」

 声は一つだったが、転がっている武器すべてから同じ声がする。マックダフがあえて教えてくれた相手のことだ、そう簡単にはいかないとわかっていたが、ざっと見て百に届くほどの武器が声をあげているのだ。不気味で、掴みどころのない相手がどこにいるのかと集中して全方位を確認するが、動くものはない。だが、エルピスはこの声の主に覚えがあるようだ。

「レッドキャップ……絶滅したはずなのに、どうして」

「知り合いか?」

「子供でも知っている化け物だよ。軽口を言いながら戦える相手じゃない」

 あれだけの力を得たエルピスが動揺している。それほどレッドキャップとやらは強力な存在なのだろうか。

「しかし、絶滅したってのは?」

「本来人に宿るべき人霊が、避難先としてではなく武器そのものと契約を果たして力を得た、いわば武器霊……剣や槍を意のままに操って、本人自身も甲冑に身を包んで人を襲う。それが街の武器屋や騎士団の武器倉庫でも暴れはじめたから、安全のために国を挙げての絶滅作戦が行われたはずなんだ」

 でも、それが目の前にいる。話を黙って聞いていたのか、欠伸をしているから寝ていたのか区別がつかないレッドキャップは、大樹に身を預けていた甲冑に宿ったのか起き上がった。

「ご親切に説明してくれてありがとうね~。うん、本当なら君の言う通り絶滅に追い込まれたんだけれど、たぶん最後に残った僕をクラッドの人たちが保護してくれたんだ」

 ここにきてクラッドの名が出てくるとは思ってもみなかった。サラマンダーとアートルムという武力をもつクラッドがわざわざ保護した相手となると、なにをしてくるのか想像もつかない。

「一応警告しておくぞ、俺たちをこのまま通してくれるのならクラッド絡みでも見逃してやる」

「見逃す? ああ、だめだよそんなことしちゃ。バニッシュさんに怒られちゃう。なんていったって、サラマンダーのバニッシュさんですら白霧の山を登り切る相手は怖いらしいからね。だから僕は言われたとおり、この山に挑みに来た人たちが最後に通るこの木の下で皆殺しにしなくちゃならないんだから」

 欠伸が聞こえてくると、そこら中に転がっている武器が宙に浮かび上がる。

「だから、君たちも死んじゃえ。死んだ後は山の動物さん達が食べてくれるからさ」

 あどけない声で皆殺しだとか死んじゃえ、だとかを口にするレッドキャップから得体のしれない嫌悪感を覚えながら、西洋の大剣を引き抜いた。

「最後の戦いだ、鞘はもう必要ないな」

 引き抜いた後、そのまま鞘を手に取ってレッドキャップが宿る甲冑に投げると、それに続くよう突撃した。荒削りと違い、切れ味はないが固い大剣ならば、垂直に構えれば折れることなく甲冑を貫けるはずだ。なんなら倒れるだけの衝撃でもいい。倒れてくれれば頭の防具を引っぺがして、直に攻撃を叩きこめる。とにかく急いで攻めて、なにか想定外のことをしてくる前に勝負をつけるのだ。

「周りの飛んでくる武器はボクが防ぐから! 一撃で仕留めてくれよ!」

 エルピスが突き進む前方以外を防護壁で囲むと、不慣れの大剣を甲冑に突き刺した。運よく脆いところにぶつかったのか、大剣はそのまま甲冑を貫いて背後の大樹に突き刺さった。

「終わった、のか?」

 甲冑は動かず、声も聞こえない。辺りの武器も地面に落ちていく。こんなあっさり、勝負はついてしまったのだろうか。

「なんてね」

 気を抜いてしまった一瞬、レッドキャップの笑い声と共に大剣は甲冑の腕に掴まれ、落ちていたナイフが飛んでくる。ギリギリのところでエルピスの防護壁が間に合ったが、一息つく暇もなく甲冑が顔面を殴ってきた。鉄の拳をもろに食らってしまいふら付いたが、どうにか距離を取った。しかし大剣は刺さったままで、レッドキャップはそれを引き抜くと操る武器の一つとした。

「なんだ、今の攻撃で死んじゃえばよかったのに」

 武器を奪われ、周囲に獲物が舞う中でようやくレッドキャップの純粋な殺意と真っ黒い悪意に気が付いた。しかし、今貫いたというのにレッドキャップはピンピンしている。

「エルピス、レッドキャップは本当に武器に宿っているのか?」

 四方を防護壁で囲んだエルピスは、それどころじゃないと声を荒げたが、知る必要がある。だからもう一度聞くと、絶滅させるときは武器の倉庫かなにかに閉じ込めて爆破したらしい。そうやって一人ずつ殺していったとエルピスは言うが、もしかすると武器に宿るのではないかもしれない。

 考えるのだ。青葉が日本から持って来た頭脳と剣道で鍛えた精神、それからこの世界で知ったことを重ねて熟考する。鋭利な武器が宙を舞い、甲冑自体も大剣をもって防護壁を壊そうとしているから、時間は限られている。それでも落ち着いて、冷静になるのだ。この純粋な殺意と真っ黒い悪意を照らし合わせる。そこへ武器を自在に操る現状と、貫いても痛みすら感じていなかったレッドキャップが宿っている甲冑――宿っている?

 バンシーは死体に宿る人霊だから、死体に取りついて死体を操っていた。だから宿っている本体を行動不能に追い込めば勝つことができた。一方でレッドキャップは甲冑を貫いても何一つ変化はなかった。

 そして、レッドキャップの絶滅方法は武器そのものを壊すのではなく、武器の置かれている空間ごと爆破している。

「まさか――」

 今も攻防の続く広場をぐるりと目にする。ここに飛んできている武器は、バンシーが死体を操っていた場所よりも遥かに広い。エルピスもあれだけの力を持って、ようやく青葉から離れられる距離が増加した。バンシーが人霊で一二位を争う猛者だったのだとしたら、レッドキャップが武器を操れる範囲が広すぎる。


 ――武器に宿ることに成功した、いわば武器霊。

――絶滅させるときは武器の倉庫かなにかに閉じ込めて爆破した。

――遥かに広い。

――武器を操れる範囲が広すぎる。

 これらから導き出されるレッドキャップの居場所は――。

 

そういうことか。


「レッドキャップ、お前の手品は見破った」

 武器が舞う中でそれだけを言ってやると、エルピスもレッドキャップも動きを止めた。

「お前は武器に宿るのではなく、武器の存在する空間そのものに宿っているな」

 途端に宙を舞っている武器たちが、先ほどよりも強烈に防護壁へ叩きつけられ始めた。

「その反応からして、図星のようだな!」

「う、うるさいよ! だいたいそれがわかったからって、どうするのさ? ここには火薬も閉じ込めておく倉庫もないよ。武器で斬ることができない僕を、どうやって倒すんだよ!」

「たった一つだけ、手はある」

 ハッタリだ、レッドキャップは声からして焦っているのがわかる程に青葉たちを殺そうとしている。しかしエルピスが感づいて、最後の力を振り絞って防護壁を全方面に再展開する。

「もう長くはもたないから、頼むよ」

「まかせろって、言えたらかっこいいんだがな」

 苦笑いを浮かべてから、ベルトに挟んである黒斬りを握る。


 ――クラッドのように闇に紛れて影の様に生きる者たちがおる。悪意を持ち、力も持ち得る存在のことだ。時にそういった存在はただ斬るだけでは斬れぬことがある。そういったものを斬ることこそが、黒斬りの役目だ。

――黒斬りと対話するのだ。声を聞くと思ってもらえればそれでいい。とにかく、黒斬りの声を聞く努力をしろ。

 ――さすれば斬れぬものはない。


 答えてくれ、黒斬り。お前が斬るべき相手が目の前にいる。守るべき仲間も目の前にいる。たどり着く頂きも目の前にある。そのすべては、お前が抜けてくれることによって解決する。だから黒斬り、力を貸してくれ――

 突然、マックダフが賭けて、エルピスが守っている青葉が握る黒斬りが脈動したかのような感触が手に伝わると、頭に中に声が響いた。


「『黒牙一閃』、それこそ我が持つたった一つの技。お前はただそれを叫ぶのだ」


 それだけの言葉を放つと、黒斬りから感じていた意思のようなものは消えていった。だが、最後に教えてくれた。黒斬りの、所謂必殺技を。


「黒牙一閃――!」

 叫びながら右手で掴んでいた黒斬りは鞘から抜けると、居合切りと同じ角度を斬った。しかしその一撃は剣先の何倍も先まで真っ黒いであろう斬撃と同じ形の衝撃波を放った。

 場には沈黙が流れた。浮遊している武器と、とうとう防護壁を超えてきた甲冑、そして居合切りの格好のまま固まっている青葉。

「――決着だ」

 黒牙一閃はレッドキャップの宿る周囲の空間を斬った。それによって、レッドキャップはこの空間から逃げるよりも先に斬られたようで、辺り一面、雪が降る様に消滅していく。ただ地面に舞い落ちることなく、エルピスに吸収されながら消えていった。

「勝ったんだよね、ボクたち」

 現実味がないのか、レッドキャップの残した粒を吸収していくエルピスの言葉は疑問を含んでいたが、何よりもの証拠が青葉に現れた。

「髪、白かったんだな」

 エルピスがなにをいまさらと青葉を見やれば、その瞳は開いていた。エルピスの力が、マックダフのかけた盲目の魔法を超えたのだ。

「はは……君もなかなか、男前じゃないか」

 二人して、いつの間にか笑い出していた。白く短い髪と緑色の翼、それから体にくっ付いているような緑色のちいさなドレス。青葉はようやく、契約を結んだ相棒をその目で見ることができた。それは、白霧の山を登り切ったことと同意義だ。



 大樹を超えて、木々や葉が生えていない岩肌が露出している噴石のような岩がゴロゴロ転がる山頂手前で、もう何年も見ていなかったように思える日の光を瞳に映しながら歩いていく。よく見れば、着ていたジーパンもTシャツも穴だらけで、腕と脚は切り傷と打撲の跡だらけだ。だが、気分はどこまでも晴れていた。

 そんな色も光も闇も見える視界の先には、山頂を覆う濃霧の手前で岩に腰かけるマックダフがいた。

「ついに、ここまで来る者があらわれよったか」

 マックダフは岩から降りると、振り向いて青葉を見る。エルピスもだ。

「ノームとして生まれ、使命を背負って数百年。ついにすべてを託す時が来たのだな」

 マックダフは歩み寄ると、一つだけ詫びることがあると髭を掻いている。

「登りきった者が成長すると言ったが、あれは人を集めるための嘘だ」

「なんとなく、そんな気はしてたよ。目が見えないまま凶悪な人霊を倒して、最後に残してあったレッドキャップすら打倒すること、それこそが成長なんだろ?」

「レッドキャップは後から付け足したが、実にその通り。お前さんは見事にそれを成し遂げた。リャナンシーとの契約という、この世界の住民なら必ず拒否するであろうことも含めての」

「もしかして、ボクが青葉に出会ったのって、あなたの導きなのか?」

「さてな。ただ弱い者同士が引かれあった結果だよ」

 真実を話す気はないだろう。しかし、マックダフは自らのかけた魔法を超えたエルピスに微笑むと、岩に立てかけてあった鍔のついた真っ白な装飾の鞘に納められた刀を手に取る。

「名は雲霧。白霧の山がかつて噴火した際に採取した鉱石から作った、黒斬りと同様の一振りだ。今のお前さんなら、雲霧に宿った大昔のネイバーの声も聞こえるだろう」

 黒斬りからも声が聞こえた。それは今思うと言葉の種を介さない純粋な日本語だったような気もする。だとしたら、黒斬りと雲霧に宿った声の主は、この二刀を打った職人なのかもしれない。

「答えてくれ、雲霧」

 受け取って目を閉じ、集中すると輪郭だけの視界が広がった。二つの視界を手にしたのだと頭で整理していると、雲霧は一言だけ残してなにかが消えていった。

「ミストレナート」

 そう呟けば、一瞬にして真っ白な刀身から山頂を覆うような濃霧が広がった。

「黒斬りにて敵を斬り、雲霧にて敵より逃げる。それが本来の在り方だったんだが、お前さんたちならもっと有効に使えるだろうよ」

 さて、とマックダフは風が吹いて濃霧が晴れたら伝えるべきことがあると真剣な面持ちになった。

「この世界、パーガトリーには元々光と闇の二つの種族に分かれていた。善の道を歩く人間と四大精霊、それから人を傷つけない精霊と人霊が光であり、悪の道を行く人間とバンシーやレッドキャップなどが闇だった。今までは光を白竜アルブムが、闇を黒竜アートルムが操り、均衡が保たれておったのだが、知っての通りアートルムが数十年ほど前に乱心し、世界を照らす炎として光の側にいたバニッシュを闇の一員とさせた。四大精霊であるワシも、ウンディーネもシルフも黒炎を手にしたバニッシュには敵わん。だが、ワシの魔法を超えたリャナンシーと、その契約者であるお前さんなら、『大昔』よりパーガトリーを包もうとしている闇を――魔を払えるかもしれない。ネイバーにとっては対岸の火事かもしれんが、手を貸してくれないか」

 頼みこむマックダフに、青葉は頂上から見えるパーガトリーを一望した。

「俺は、元いた世界が汚くて嫌いだった。どこもかしこも汚い空気で、人の間にもそんな空気が流れていて……だがな、ここから見える世界は例えようもないほどに純粋で綺麗だ」

 思いっきり体を伸ばして深く深呼吸をすると、マックダフに振り返る。

「この輝かしい世界を、闇に包ませはしない。覚悟はある、俺は戦うよ」

「……ありがとうの」

「ちょっと格好つけすぎだけれどもね」

 余計な横槍を無視して、マックダフは一瞬で麓にまで戻れると手を差し伸べてくる。

「すまない、もうすこしだけ、ここから見える景色を見ていたい――俺が死ぬ思いで登ってきた、この山を」

 ならば存分に目に焼き付けろと、マックダフは岩に腰かける。

遠くに見えるのは、湖だろうか、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。あの大きな壁は、村で聞いた街を囲む市壁だろうか。これからはああいったところで生きていくのだな。

 静かな時間が流れた。エルピスもマックダフも世界を目にしている青葉に声をかけず、ただ待ってくれた。

 『やってみる、ではない。やるか、やらないかだ』――いつか見た古い映画の台詞だ。青葉ここから始める自分に同じ言葉を投げかけた。

「俺はやる。行こう、世界を救いに」

 青葉の本当の戦いは、この時から始まった。それでも、後悔は一欠片もなかった。



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