それは正解であっても、、、、
私には5歳のときから、あるものが見えていた。
5歳のとき、私は大きなショッピングモールで迷子になってしまった。
私は母を探すために、周りを歩いたが、どうしても見つからなかった。
すると、どこからか男の人がやってきて、こういった。
「君はお母さんとはぐれてしまったんだね。こちらにおいで、連れて行ってあげるから。」
その時、私は母の「知らない人について行っては行けない」ということを思い出し、一言、
「あなたは知らない人だからついていかない」と。
その男の人は、困ったような顔をして、
「君は僕を知らないはずはない。君は3歳の頃に、僕の案内に従って進み、見事お使いを成功させただろう」
幼い私にも、記憶に残った、あのお使いのときの案内。
その時の声を思い出して比べると、たしかにそっくりだった。
「仕方ないなぁ。しょうがないからまた、上から案内してあげるよ。」
と彼は言って私の前から消え、声が聞こえてきた。
「君は、そうだなぁ、、、ガイドラインに従って、右に進んだ」
いつもの彼のアナウンスだった。
彼のガイドはいつも的確だった。ガイドラインと言う名の矢印に従うだけで、ほぼ正解にたどりつける。
歩いていくと、無事母に再開することができた。
「ほら、いただろう。おゆき。」
と彼は言って、ガイドラインとともに声も消えていった。
==============十数年後=======================
16歳になった私は、未だに彼の声も聞こえていた。
声どころではない。
視界には、常に自分に有益かを判断する、ゲージが付き
0~100%で判断できる様になっており、
85%以上なら丸、60%以下ならバツが視界に浮かぶようになった。
私はいつも、彼の指示で90%以上のことしかしないように心がけていた。
これのおかげで、この前告白されたときも、冷静に断ることができた。
後にその男は生粋のクズ男だと言うことを知って、
更に彼の言葉を信じるようになった。
友人関係も極めて良好だ。
常に”人生の正解”を選び続けることに何ら疑問を抱かなかった。
あの日までは。
===============ある日=========================
来週は親友のまこの誕生会をする予定を、いつものメンツである、
かんな、ゆいか、さき、けんじ、そして私の5人で祝うことにした。
私は、彼の声に従い、いつものメンツに提案するために、先に下調べをしていた。
すると、彼が私のスマホの画面を見て、こんなことを言ってきた。
「君は、この”数量限定 奇跡のホールケーキ職人の作る、最高のフルーツケーキ”を買うといい。
個数は限定2個で一個は売り切れているなら、希少性は高い。
値段も手頃だし、まこはフルーツが好きだから、必ず喜ぶだろう」
私もその意見に賛成し急いで予約した。
また深くも考えずに。
================次の日ーいつものメンツにて==============
私は、彼らに、”数量限定 奇跡のホールケーキ職人の作る、最高のフルーツケーキ”を予約したことを伝えた、伝えることについては、95%の成功が約束されていた。
はずだった。
このことをみんなに伝えた、すると、ゆいかは唐突に、
「ふざけないでよ。なんで毎回毎回あなたが、そう、まるで答えを知っているかのように、
何も相談せずに決めるわけ。私だって、ケーキを色々考えてきたのに、崩してくれるわけ、
しかももう用意してあるとか、よほどたちが悪いわ。
前も言ったよね、”今度は一緒に決めようって”なんでまたそう勝手にやっていくわけ。、、、、」
「落ち着きなよ、ゆいかちゃん。あの子だって、きっとまこにとっておきのものを用意したかったのよ」
「そうよ、たしかに勝手に決めるのは、腹立たしいけど、次手に入るものじゃないしね」
と、かんなとさきが咎めたが、
「確かに、勝手なふるまいばっかだよな。いつもいつも。こっちが気を合わせてるっていうのに。
この誕生会だってそうだろ、まこには普段感謝してるから、いいと思ったわけで、
お前が勝手に仕切って、勝手にやって。自分だけ感謝されようって言うその、
”自分ちゃんとしきれて喜んでもらえたわ”ってジコマンするのこっちがつまんないんですけど」
けんじもどうやら、怒っているようだ。
私は、廊下の方を向いた、選択肢には、”今すぐ、????を言って廊下に飛び出す。正解率98%”
と見え、丸が浮かんでいた。
私は丸に突っ込むかのように走り、一言
「そんなに文句があるなら、来なくていいよ!!」
私は荒げて叫び散らし、廊下を走って行った。
================まこの誕生日2日前=======================
私は一人着々と準備を進めていた。
準備をしていくことに対しての正解率は100%。彼の声も、
「これぐらいの友人トラブルは、よくあるものさ。
問題ない、君が祝ってあげればいいんだ。
他のやつはケチで、人を祝ってすらやらない残念なやつなのだろう。」
といっていた。
そうこうしているとまこから、メッセージが届いた。そこには、
「ごめんね、明後日他の子達に、呼ばれちゃったからそっちの誕生日会に行くね。
ほんとごめんねm(_ _)m」
私は、スマホを床に叩きつけた。
どうやら、液晶は割れ、中の液は漏れ出し、画面は黒く染まって行った。
なんで、まこまで、そう勝手なの。
私はただ正しいことをしようと思って。
私の涙の滲んだ視界には、一つの選択肢が、出ていた。
”今すぐ、まこと??する正解率不明”
正解率は、表示されなかった。だが同時に、彼が姿を表した。
「君は、正解を選ぶのだろう。
僕が君に言えるのは、正解は所詮”君自身の思い込みなんだよ”。
君はあの5歳のときに迷子になった。
その時君は、迷子になってしまった。ということから、焦りの感情が出ていた。
しかし君は、実は最初から、お母さんがどこに行ったか、ある程度は見当がついていただろう。
だから、僕は君の中の記憶から、君が持っておいた方向を、ヒントとして、視界に浮かべただけ。
でも、君は他人と関わるようになってから、特に、この正解を気にしだしたよね。」
確かにそうだ。正解は正しい道に私を進めてくれるから。いつでも。
「でも君は、もう知っているだろう。
”自分にとっての正解が、他人にとって正解であるかは定かではない”と言うこと。
君が、テストのときの正解が見えるのは、君自身が学習したから、結果が見えるのであって、
勉強しなきゃ見えない。
当然君は他人について勉強しなさすぎた。
いつも自分の中で定義した正解をたどっているだけだ。
ゆいかだって、けんじだって、君にこういっただろう。
”勝手なふるまいばっか”
”なんで毎回毎回あなたが、そう、まるで答えを知っているかのように、
何も相談せずに決めるわけ。”
君は過信しすぎたんだよ、自分の正解を。」
私は理解できなかった。なぜガイドの彼がそれについて指摘しているのか、
なぜ、彼があのとき止めようとはしなかったのか。
「君はどうやら、、、、、理解しきってないようだね。
仕方ない。これを見せてあげるよ。」
彼はそう言うと、手元から光を取り出し、私の目に押し当てた。
=================あのとき=======================
目を開くと、かんな、ゆいか、さき、けんじがいて、ゆいかとけんじは怒って立っていた。
視界が動き私は、廊下を向いていた。
”今すぐ、文句を言って廊下に飛び出す。正解率98%”
と私の視界に浮かぶ選択肢が表示された。
前見たのとは異なり???が文句になっていた。
すると、上から、
「君は、なぜこのときの正解率が98%か、考えたことはあるかい?
これは、”すべての選択肢のうち、98%の内容がこれだった”ってこと。
君にも見えるだろう。残り2%」
”謝罪して、みんなで考え直す正解率2%”
確かに私の視界にはこの選択肢は、存在していた。かんな、ゆいか、さき、けんじのいる方に。
=============================================
私の視界が急激にブラック・アウトし、もとの視界に戻った。
「君は、これでわかっただろう。
ちゃんと君には、”みんなを幸せにできる可能性のある選択肢が存在していること”
やっとわかっただろう。
もう、これを理解した君には、選択肢は、いらないよね?」
私の目の前には、選択肢が表示された。
”選択肢を残す:人生に対しての正解率0%”
”選択肢を消す:人生に対しての正解率100%”
私は、覚悟を決め選択肢を消した。
でも彼はなぜかまだそこにいた。
「おめでとう。君は今、自立する可能性を選べた。
君に最後に、この言葉を言おう。
”君の人生に正解は存在しない。同時に、君の人生に不正解も存在しない。”
さあ、まだ間に合うから、君の大切なもの取り返しておいで。」
彼は微笑んで手を振っていた。
私の意識は急速に戻って行く。
元の世界に。
==========================================
なぜかまこの「ごめんね、明後日他の子達に、呼ばれちゃったからそっちの誕生日会に行くね。
ほんとごめんねm(_ _)m」というメッセージはなく、いつものメッセージ画面だった。
私はメッセージを入力しようと、いつものメンバー4人のいるグループをだした。
予測変換には”ごめんね。ちゃんと皆の気もちを考えて動くべきだった。
明日、集まって一緒に計画させてください。”
と書かれていた。
私は今なら、やり直せる。
正解を考慮せずに。みんなで楽しく。
メッセージを送信するとすぐに4の既読がついた。
=================エピローグ=====================
その後、返信が来た。
ゆいか、けんじからは、自分たちも言い過ぎたこと。
みんなでまこを祝おうということになった。
まこからのあのとき見たメッセージは来ず。無事に当日を迎える、、、、
=================誕生日会当日======================
「「「「まこ誕生日おめでとー」」」」
その掛け声から始まった誕生日会は、とても楽しいものだった。
普段見られない、みんなの笑顔。
「次、みなちゃんの番だよ~」
とゆるい声で言うゆいか。
私ははっと気づいた”ゆいかにはじめて名前でよんでもらったことに”
私は、今とてつもなく、嬉しくて、楽しい。
ずっとこんな正解も不正解もない楽しい人生が続きますように。
私は心のなかで祈った。