空に満つ
今日は雲一つない良い天気だ。仕事も休みときたら、出掛けずにはいられない。
「今日はどこに出かけようかなあ」
鈴が伸びをしながら呟くと、
「北が良さそうだ」
横にいるアイが答える。
アイは簡単な占いや予知ができるらしく、鈴の日常に度々助言をしてくれることがあった。
「北・・・・・・そうだ、北にある大きな公園に行こう。歩いて行けるし」
すんなり行き先が決まり、鈴は準備を始めた。
家を出ると5月のあたたかく爽やかな風が鈴の頬を撫でて心地よい。
15分ほど歩いて公園に到着する。
平日なのにたくさんの人が集い、思い思いに過ごしていた。
ベンチに寝転がる人、ヨガをする人、犬の散歩中の人、走り回る子ども・・・・・・。
鈴もその中に溶け込んでいく。坂を登り、公園の敷地内を進んでいき、木陰の大きな岩に腰掛けて深呼吸する。
「自然はいいねぇ、こう、力がみなぎるようでさ。」
アイに目をやると目を細めて気持ち良さそうに風にそよがれている。
「そういえば少しお腹が空いたな・・・・・・あ、敷地内の喫茶店に行ってみよう」
鈴が立ち上がり、アイもぴょこんと歩き出す。
(・・・・・・こうしているアイはすごく可愛らしいのに・・・・・・夢のアイはなんだか色っぽくてドキドキしちゃうんだよね)
そんなことを考えながら喫茶店へ向かっていくと、鈴は何かの気配を感じた。
その気配の方向を向くと、鮮やかな漆塗りの鳥居があった。
アイの方をちらと見ながら尋ねる。
「・・・・・・気になるから、ちょっと寄ってもいい?」
「気になるなら行くがいい」
アイは無表情だ。そっと鳥居の方へ歩いていくと、真っ赤な鳥居が幾重にも重なりトンネルのようにそびえ立っていた。
鳥居の迫力に、鈴は息を飲む。この奥には何かが「いる」気がするのだ。
「どうした、行かないのか」
アイがくすりと笑いながら尋ねる。
「い、いくわよ!?・・・・・・鳥居が素晴らしいなって、感動していたのよ」
「なるほど」
アイは全てをお見通しのような顔だ。
鈴は名前と住所を言い、深々と礼をして歩みを進める。幾重にも重なる鳥居をどんどんくぐっていく。