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夕星の夕へ

 白狐のアイが来てから約一カ月が経ち、一緒に過ごす生活に鈴はすっかり慣れてきていた。


普段の生活では鈴の足元をついてきて、可愛らしい。



アイはカスタードクリームと桃が好きなようで、これらをあげるとぴょんぴょん跳ねて喜ぶ。



 そして夜は時々、アイに霊力を分け与えており、今宵も月明かりの下アイは時々夢に出て来て鈴の霊力を吸い取っていく。



相変わらず人間の姿をしたアイは綺麗で、緊張してしまう。



「これだけは、いつまで経っても慣れないわ・・・・・・」


鈴が呟く。


「おや、まだ慣れないのか・・・・・・純な娘だ」

アイは意地悪そうに笑う。



鈴は悔しいやら恥ずかしいやらで、どうにかなりそうだった。


「ねえ、霊力はあげるからもっと別の方法はないのかしら」



「・・・・・・あるにはあるが」

ちょっと考えるアイ。



すると突然、アイの手が鈴の身体をするりとなぞる。



「!!!・・・・・・何するのっ」



「お前が手っ取り早くと望んだんだろう。契りを結ぶのが一番効率がいい」



契り・・・・・・。


その言葉の意味を考える暇を与えることもなくアイは容赦なく鈴の胸元に手をかけた。



「ちょ、ちょっと待って!!! 」


アイがぴたりと手を止める。


「なんだ」


心臓の鼓動が速くて苦しい。


「何しようとしているの、アイ・・・・・・」


「契りを結ぼうとしている」


悪びれもなくさらりと答える。


「ええと、古典で習った契りは約束とか、その、男女の営みという・・・・・・」



「今日はよく喋るな、鈴。嫌なら嫌とはっきり言えばいいだろう」


「い、嫌ではなくて・・・・・・アイは綺麗だし、こうしてるとドキドキするけど!でも、心の準備が・・・・・・って何言ってるんだ私は!」



全てを察したように、美しすぎる女狐はふふと笑みを浮かべる。


「い、いつもので大丈夫です・・・・・・」



少しの間の後、鈴とアイは静かに唇を重ねる。

アイの長い銀髪が風になびいてかすかな音を立てる。



ふと鈴は、懐かしいような、何かを思い出しそうな不思議な気持ちになった。


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