望月の
鈴は夜が待ち遠しかった。
美しい女狐のアイは今宵も静かに鈴の側に寄り添う。
おぼろ月の下、冷たい窓を北風が音を立てて揺らしている。
あれから何日経っただろうか。
アイに体温は感じられないが、鈴の鼓動は早まり身体は火照るばかりであった。
そっと唇を重ね、手を絡めながら優しく微笑みかける。それだけで狂おしく、身体中が痺れるような感覚に襲われた。
(好きになっちゃいけない相手なのに・・・・・・)
気づいた時にはもう引き返せなかった。冷静な自分はもう機能していない。側にいたい、もっとアイを感じていたいと身体が言うことを聞かず抑えられなかった。
もう一度、唇を重ねる。
「可愛いな、鈴」
耳元で囁くアイ。鈴の吐息が深く漏れる。
「もう・・・・・・!そういうことしたらもっと止まらなくなっちゃうんだから!!」
「止まらなく・・・・・・とは?」
アイが意地悪そうに笑う。
「アイと・・・・・・もっと近づきたい」
「・・・・・・契りを結んで良いのだな?」
こくん、と震えながら頷く。
夢のような夜が明けるまで、2人は重なり合い求め合う。
腕の中で鈴は静かに眠る。頭を優しく撫でながら、その姿を愛おしそうに、そして少し切ない表情でアイは見つめていた。
「時間の限り・・・・・・お前の側にいよう」




