紅のうつし心
祝詞を唱えて、心を込めて感謝と祈りを捧げる。
アイの身体がうっすら光りエネルギーが満ちていく
「平穏で幸せな毎日が続きますように」
心の中で、そう願った。
「・・・・・・それだけでよいのか?」
当たり前だ、この祠はアイの祠だから願いが筒抜けなのだ。
「あんまり個人的なお願いしたら、アイに聞かれちゃうじゃない」
鈴はぷいっと横を向いた。
「この毎日が・・・・・・続くといいんだがな」
一瞬見せた憂いを帯びたアイの表情を鈴は見逃さなかった。
「な・・・・・・なんでそんな表情するのよ」
不安そうにアイの手を握る。その手を握り返しながらアイは微笑んだ。
月明かりが2人を照らす。
いつもの、夢の中と同じだ。
「アイ・・・・・・私ね」
ぎゅっと目を閉じる鈴。
「あなたのこと、好きみたい」
(言っちゃった・・・・・・)
驚いているであろうアイの顔がまともに見られない。
しばらく下を向いていると、アイは頰に優しく手を添え、そっと口づけをした。
いつもと違い、霊力は奪われなかった。
鼓動が一気に早くなる。
「ーそなたは昔から変わらぬな。無邪気で、素直で愛おしい」
(ーー昔?)
鈴は首を傾げた。
「やはり思い出せぬのか。遠い昔、我と契りを交わした、少女よ」




