君が着る
夏の終わりー。
鈴は最近流行りの音楽に耳を傾けながらベッドの上でぼんやりとしていた。
切ない恋心をメロディに乗せ、口ずさむと胸が締め付けられるようになる。
(・・・・・・私が、恋?アイに・・・・・・)
アイへの気持ちに気付いてしまってから、どう接していいか分からないでいた。
昨夜も夢に出てきたアイに、どきまぎしながら接したのだった。
はーっとため息をついて天井を仰ぐ。
「鈴・・・・・・聞いてるのか、鈴!」
ぴょこと狐姿のアイが顔を覗かせた。
「わあ!びっくりした・・・・・・なによ、アイ」
「さっきから呼んでいるのに全然聞いておらぬな」
アイは呆れたように言った。
「今日は神社の祭りだ。一緒に行かないか」
「えっ、行く!」
鈴は二つ返事で答えた。
そして、おずおずと鈴は尋ねる。
「アイはやっぱり狐姿のままだよね・・・・・・」
その表情で察したかのようなアイ。
「・・・・・・昨夜霊力はたくさん貰った。人型になれないこともない」
「えっ、ほんと?それじゃあ一緒に浴衣着て行こう!」
ぱあっと喜ぶ鈴。
「い、いや別にいつもの姿でも・・・・・・」
戸惑うアイに鈴は、
「いつもの服じゃ目立つでしょ!」
とぴしゃりと言う。
「そうだな・・・・・・」
アイは諦めたように言った。
鈴はわくわくしながら浴衣を探す。
「アイは白色が似合いそう!」
白地に金魚と水の流れが描かれた浴衣を見せた。
「悪くないな。では早速着付けてくれるか」
「えっ」
みるみるうちにアイは人型の姿になり、するりと服を脱いだ。
突然の出来事に鈴は軽くパニックになる。
必死に冷静さを保ちながら、
「じゃあ着付けるから・・・・・・」
と腰紐を握り締めながら手をかけた。
アイは凉しい顔をしている。
綺麗な真っ白の肌、スレンダーで少し小さめの胸・・・・・・
(わ、私ってば!何考えてるのっ)
ぶんぶん顔を振りながら着付けていく。
アイは不思議そうな顔で鈴を見つめた。
「よし、できた!」
端正な顔立ち、少し高い身長に白い浴衣がとても似合う。
しばらく見とれてしまう鈴。
「・・・・・・鈴は着ないのか?」
はっと我に返った鈴は、自分の着付けを済ませる。
アイの頭に耳が生えていることに気づき、耳をしまわせてから
2人で家を出て神社へ向かった。




