白波の
「鈴ちゃーん!早く早く!」
アルバイト仲間たちが砂浜から叫ぶ。
照りつける太陽、暖かな風。
慣れない砂浜が走りにくく、鈴は少しよろけた。
波打ち際でみんなで戯れる。
「気持ちいい〜」
足に冷たい波がかかり、
波が引くたびに、海原へグッと引き寄せられる感覚になった。
「泳ご!」
一斉に海に飛び込む。
「あれ?鈴ちゃん浮き輪?」
鈴は少し恥ずかしそうに、浮き輪でぷかぷか浮いていた。
アイは浮き輪に乗ってゆらゆらしながら、
「泳ぐのは不得意なのか。」
と尋ねた。
「う、うるさいわね・・・・・・運動は苦手なのよっ。海も久しぶりだし」
ぷいと横を向く。
アイは笑いながら波に身を任せていた。
「なら、あまり皆と離れない方が良いのではないか」
そう言われて鈴ははっとする。短時間でかなり波に流されて沖に出てしまった。
焦って岸に向かってバタ足をする。
なかなか進まない。
「大丈夫か」
アイが心配そうにしたその瞬間、
「鈴ちゃんー!後ろ!!」
遠くから響く仲間の声。
一際大きな波が鈴を襲った。うねりを帯びた波の力で身体が引き千切られそうになる。鈴は波に飲まれて息ができずパニックになる。
(苦しい、痛い。助けて・・・・・・)
鈴の意識が遠のいていく。
すると、身体を強く掴まれた気がした。
(しっかりするんだ!鈴!!)
頭に響くその声。うっすら目を開けると、人型になったアイがそこにいた。
アイは水の中で力強く鈴を抱き抱えるようにしながら近くの岸に運んでいく。
鈴はむせながら、
「アイ、助かったよ、ありがとう」
とお礼を言った。
「お前は・・・・・・放っておけないな。今夜、また霊力を貰いに行くぞ。」
(そういえば夢以外でアイのこの姿を見るのは初めてだ・・・・・・)
意識した途端急に胸の鼓動が早くなった。
抱き抱えられているのも急に恥ずかしくなる。
夢の中とはまた違いリアルな感触が鈴の頭を痺れさせた。
(なんでアイにこんなにドキドキするんだろう。まさか私ってばアイのことを好きに・・・・・・)
岸に着くとアイの姿は消えていた。
「アイ・・・・・・?」
ぼんやり遠くを眺めていると、心配そうな表情で仲間たちが駆け寄ってきた。