燈火のあかし
「懐かしいな、良い思い出だ」
アイはふふっと目を細めて笑う。
「アイにも色々あったんだね・・・・・・お別れするとき辛かった?」
「我には寿命がないからな、先立たれるのは仕方のないことだ。しかし嫁いだ後も、老いた後も生涯傍にいれたことを良かったと思っている。」
ちくん、と鈴の胸が痛んだ。
(アイにこんなに大切な人が居たんだ。たまたま神社で会って、何となく一緒にいる自分とは大違いだ・・・・・・)
なぜこんな気持ちになるのか鈴には分からなかった。
その夜、夢を見た。白髪のおばあさんに覆いかぶされている。
おばあさんは言う。
「わしが見えるのか・・・・・・鈴。すぐに髪を切るのだ・・・・・・」
「は、はいっ」
思わず反射的に答えてしまった。
おばあさんは消え、そのあとすぐにいつもの神社に切り替わる。
アイの姿が現れた。ドキッと胸が高鳴る。鈴はおばあさんに言われたことを話した。
「ああ、それはいわゆる守護霊だよ。いつも鈴に話しかけているけど、見えないようだからね。夢に出てきたんだろう」
「えっ、あの人が守護霊なの。髪を切れってなんでかな・・・・・・」
「髪はね、依り代になりやすいんだよ。悪霊が寄ってくるから助言をくれたんじゃないか」
「そっか・・・・・・き、切ってもアイには影響ないんだよね?」
「我が悪霊だと言うのか・・・・・・?」
アイは笑う。
「違うそうじゃなくて!大丈夫ならいいの・・・・・・今週末にでも切りに行くわ」
アイは鈴の手をすっと手を握り、鈴の目を見据えた。
「・・・・・・心配してくれたのだな。可愛いなお前は」
「し・・・・・・心配なんてっ」
動揺する鈴の唇をすかさず塞ぐ。
「!!んんんっ・・・・・・」
胸の鼓動が早くなる。
(だめだ。ドキドキする・・・・・・なんでアイはこんなに綺麗なんだろう)
薄れゆく意識の中、鈴は湧き出る想いに気づかないふりをしていた。