神風や
「京都以外にも、こういう鳥居あるんだ・・・・・・」
そう呟いた瞬間、
ざあっ!と鈴の右手の木が大きく揺さぶられた。
「きゃっ!」
そこには、色とりどりの羽を持った、大きな翼の鳳凰が現れ、フッと姿を消した。
「アイは、見える・・・・・・?そこの」
「なんだ?」
「大きな孔雀みたいな鳥が・・・・・・今は気配しかないけど」
「変なことを聞くな。見えたなら、居たんだろう。気配を感じるなら、まだこちらの様子を伺っているんじゃないか」
アイは当たり前のように言う。ひそひそ地面に向かって話す鈴に、すれ違う観光客が首をかしげる。
鈴は本堂に向かい、着くと賽銭を入れた。
「お賽銭は、確か投げちゃダメなんだよね。お金は大大事にしなきゃだから」
「その通りだ。だれだってお金を乱暴に投げられたら嫌だろう」
アイはふふんと答える。
ちょうど祈祷の時間だったらしく宮司が現れたので、手を合わせ、祈りを捧げた。
二礼二拍手一礼をし、せっかくなのでおみくじを引くことにする。
「おみくじを引くときは」
アイが得意げに話す。
「これについて教えてください、とか助言をくださいと唱えてから引くと良い結果が出る」
「えっ、そうなの」
鈴は唱えた。
「今の私にアドバイスを下さい」
引いたおみくじを見ると、小吉。
「唱えたのに・・・・・・!小吉じゃないっ」
鈴が文句を言うと
「おみくじはな、単なる運試しではない。そこにあるメッセージがお前の守護霊や神様からの助言なんだよ。唱えてからだと確実なアドバイスがもらえる」
おみくじを見て、鈴はハッとした。
ー気に病むのはやめなさい。良き出会いとともに今、時が解決してくれますー
「ホント・・・・・・だ・・・・・・」
鈴は胸がいっぱいになり、涙が溢れた。最近忘れるようにしていた心の奥の感情が、蓋をあけたように一気に溢れて心がきゅうっと締め付けられた。
傍でアイが優しく見守る。
「鈴、すぐそこに狐のいる鳥居があるだろう。そこをくぐると良い」
アイは近くにあるとても小さな鳥居を指差して言った。