プロローグ
よろしくお願いします
「雪野 暁さん、俺と付き合ってください!」
やじ馬どもが集まり、笑っている奴もいれば、まるで可哀そうな奴でも見る目をしている奴もいる。
周りの視線が突き刺さるように痛い。あまりにも痛いので一瞬、危機一髪な黒髭になったかと錯覚してしまった。
「フフッ 面白い冗談ね?あなたのような人間が私と釣り合うとでも思っている
の?」
「え、い、いやそうとは」
「……いいわ、付き合ってあげる」
雪野 暁 の予想外の発言は、周囲の時間を少しの間凍らせた。
「え?」
変化のない日常。面白くもない高校生活。上辺だけの友達付き合い。そんな所に俺の居場所はない。
今は古典の授業中なのだが、教室にいても名前も覚えていない先生の禿げた後頭部を見るしかないので、鍵のかかった屋上に逃げてきた。
ガチャ
屋上の扉を開ける音が聞こえたので少し身構える。
当然の権利かのように入って来た男は俺の担任の先生……などではなく
「よう一樹、お前も授業さぼってんのか」
「それはお前もだろ」
友達は居ないが知り合いなら一人いたな。こいつの名前は「桐ケ谷 氷室」こいつとは腐れ縁で中学から一緒だ。
氷室は生徒会長で頭もよく、男の俺から見てもカッコイイし、その上金持ちときたものだ。実に腹立たしい
「おれは月城先生に頼まれてお前を連れ戻しに来たんだよ」
「悪いが俺は帰らないぞ、ここは第2のマイホームなんだ。4月は気候がいいから昼寝には最高なんだよ」
別に俺は本当にココが気に入っているわけじゃないが授業中、ここに来る奴なんていない。こいつを除いて。
「どうやって入ってきたんだ?鍵かけてあっただろ」
ところで俺がどうやって鍵のかかった屋上に入れたかは言わないでおく。
「こんなの俺にかかればちょちょいのちょいだ」
氷室は俺に針金を見せて満面の笑みを浮かべる
「大丈夫だ!最悪生徒会長特権ってことにするから」
それのどこが大丈夫なのだろうか、あとそんな特権ねぇよ
放っておけばこいつもいつかは帰るだろう
「なぁ一樹、お前俺と賭けをしないか?」
「なんで俺がそんなことしなくちゃいけないんだよ」
俺は人付き合いが億劫でここに居るんだ。わざわざこいつと仲良くしてやる道理はない。
「そうか、じゃあ条件をつけてやろう。」
「俺は心に決めたことは貫き通す性分だから、如何に良い条件とは言え賭けには乗らん」
「シンプルに金をやろう」
「ママに賭け事をしてはいけないってしつけられているので…」
「じゃあ出席日数半分免除してやるよ」
生徒会長バンザーイ
「勝負はポーカー一回勝負、負けた方が学園一の美少女「雪野 暁」に告白する」
氷室は真顔でそういった
こいつやべぇ「雪野 暁」って今まで数々のイケメンと、芸能事務所とかの誘いを全部断ってきたやつだろ?そんな奴に告白したらどんなにボロカス言われるかわからない
「も、もうちょっと簡単な罰ゲームでオネガイシマス」
「簡単だったら面白くないだろ!」
「お前絶対性格悪いわ」
「そんなに褒めても罰ゲームは軽くしないぞ」
「ほめてねぇーし お前が負ける可能性だってあるんだぞ?」
「……俺、ポーカーで負けたことねぇから」
あれ、そのセルフどこかで聞いたことあるような……
「……さぁ、ちょうど昼食の時間だ、昼休みの間にでも告って来いよぉ」
人事だとお思ってやたら嬉しそうに言いやがって
因みにポーカーの結果は俺がブタであいつはワンペアだった。
正直その程度かよとは思ったが負けた俺がなんと言おうと負け犬の遠吠えでしかないので口には出さない。
そして話は冒頭にさかのぼる
「え?」
「どうせ罰ゲームか何かで私に告白したんでしょう?かわいそうだから付き合ってあげるわ」
まじで?俺哀れまれてつきあうことになったの?
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