花が想うは虚偽の蝶
花が想うは 虚偽の蝶
ひらりひとひら 涙色
そこにあるのは、小さな、可愛らしい水色の花。
触れたら壊れてしまいそうなほど繊細で、
でも、優しく何かを見つめている。
その見つめる先は、ひらりと舞う
薄紫色の小さな蝶だった。
もしもたったひとつ叶うのなら、
あなたにそっと触れる手が欲しい。
飛び舞うあなたを此処でずっと
見ているだけの日々は、
とても窮屈で、もどかしい。
あの日あなたが私に止まった時から、
ずっと。ずっとなのに。
でも、ある時あなたは私にこう言ってくれたの。
「僕の一番近くに、君が咲いていて欲しいな。」
嬉しかった。
願っていた気持ちがあなたに届いたと思った。
待っていてよかった、と。
それからあなたは、私の所に飛んできて
くれるようになった。
飛び舞う為のその羽を休めるために。
でも、暫くするとあなたは私を避けるようになった。
理由も聞かせてはくれなかった。
だから、私は、ただひたすらに待つの。
それから少し経ち、春も終わりに近づく頃、
蝶は水色の花に止まった。別れを告げるために。
たった一言、「ありがとう」と。
そしてふわりと舞い上がり、
春の空色に溶けていった。
短かったけれど、私はあなたに恋をしました。
生まれて初めて知った、甘酸っぱい気持ち。
あなたがくれた気持ちが嘘だとも知らずに、
私はあなたをただひたすらに好きでした。
最後の言葉さえも嘘だとは、疑わなかった。
私にはあなたの言葉が全てだったから。
それでも。あなたの気持ちが嘘だったとしても、
この気持ちは枯れるまで、
いえ、枯れてもきっと忘れません。
あなたもどうか、私を忘れないで。
どういう解釈をするのかは
読んでくださった皆様次第です。
ありがとうございました。