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神さま、知っていますか?  作者: 鯣 肴


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第三章 僕の友だちは夢をくれた。

「おい、大丈夫なんか、トモ。」

え? あれ?そんな筈はない。目の前に突然、カンちゃんが現れた。そして、そう言いながら僕をゆすっている。これは、僕の過去じゃない。本物のカンちゃんか?

《汝の目の前の男は、汝が望んだ男である。これは啓示である。》

あらら、お墨付き出てしまった。本物確定ということらしい。じゃあ、僕がすべきことは一つしかない。

「カンちゃん、ごめんなさい。勝手に酔って騒いで。暴言吐いて。止めてくれたカンちゃんにひどいこと言って。あげくの果てには、その場からカンちゃん置いて逃げ出して……。」

僕は、全身全霊謝った。土下座して。そして、身を乗り出してカンちゃんの足に縋り付いて泣いた。

「おいおい、忘れたんかあ?俺はちゃんと言ったで、俺は友だちを見捨てないってな。」


 そうだ、忘れていた。僕は一人じゃないんだ、卑屈になってどうする。

僕にはカンちゃんがいる。あれ、僕なんで、自分の過去を見ていてあんなに不満だったんだろう?終わったことを気にしても仕方ないのに。なんであんなに寂しいとか思うんだろう?そうだ、カンちゃんに会ってからだ。それから僕は、人と関わることが楽しいと感じて、今のままでは物足りないと思うようになったんだ。だから、今見る過去は物足りないんだ。


《汝は鍵を掴んだ。》

「……。これは―――-」

高校時代の記憶。しかし、さっきまでは見れなかった部分。これまでは友だちが一人もいなかった僕が、高校デビューで友達を作ろうとするところだった。


 僕は、高校デビューに失敗した。

「友達100人欲しいです、お願いします。」

高校初めての自己紹介で、俺の高校デビューは頓挫した。練習通り言えたのに。しかし、それは当然のことだった。言っていることと自身の(かも)し出す雰囲気があまりにも異なり、他の生徒たちは僕と関わらないことを決めてしまっていたのだ。ただ一人を除いて。


 放課後、僕は机で突っ伏していた。誰もいなくなった教室で。失敗した、結局中学校といっしょか。何も変わらなかった。誰か、教室に入ってきた。

誰だったかなあ?確か、なんか包丁みたいな名前してたなあ。まあどうでもいいか。その男は僕に近づいてくる。俺とその人以外誰もいないんだから、消去法でそうだと分かる。その人は俺の目の前で立ち止まった。

「友達100人かあ、それお前には無理やろ。近寄るなオーラ出過ぎやから。」

え?この人はなんて失礼な人なんだ。いや、僕をからかいにきたのか?違うか。僕は後ずさりした。もしかして、僕、今からいじめられる?目的はカツアゲ?


 この人はこの後とんでもないことを言い出す。僕の予想を大きく裏切る。

「まあ、でも、俺がお前の最初の友達になったるわ。」

「と、とりあえじゅよろしく。」

僕は即座にそう答えた。思いっきり噛んじゃったが。焦ってて、考えずに、反射で、思わず……言ってしまった。

「でな、俺は友だちを見捨てないんや、絶対にな。これから長い付き合いになるなあ。」

笑いながらそう言う、カンちゃん。誰かが友達になりにきてくれるの待ってたからうれしかったんだよな。こうやって教室にいたのも、どうせだめだって思っても期待してたからだ。そうだ、これだ。このときの気持ちをもっと味わいたくなって、これから先にもこんなことがあると期待するようになったんだ。


 "僕"の中から戻ってきた。ということは、僕は夢の形を掴んだみたいだ。

じゃあ、僕の夢は……。どう言えばいいか分からない。まだだめだ。僕は、自分の夢がぼんやりとこんなものかなあと掴んだだけなのだ。

「お帰り、トモ。」

「うん、ただいま、カンちゃん。」

さて、僕の夢の鍵になるのはカンちゃん。じゃあ、カンちゃんに聞けば答えが見つかるのかな?そう思って口を開こうとしたところ、カンちゃんが喋り始めた。

「俺な、急に神様に呼び出しくらってんよ。びっくりするで、ほんと。トモが神様に選ばれとうし、ほんまびっくりしたんやで。ほんなら、急に神様が、鍵よ来たれ、とか言うねんで。で、気づいたらここに送られてたんや。

目の前にトモおるし、立ったまま気絶しとったと。んで、俺はかえって冷静になって、お前ゆすってたんや。」

カンちゃんもいろいろ急展開で少し焦っているらしい。最後の方、早口だった。それに、話長かった。

「今まであったこと俺に話してみい。」

僕の顔を見て、僕が求めていた言葉をくれた。僕は、ここに僕が連れられてきてからの経緯を話す。


「なるほど。たくさんの人が友達になってくれること。それが夢のような気がするけど、少し違う感じするねんな。」

「うん……。」

「トモ、お前は一つ思い違いをしてるんやで。それは夢についてや。ええか、夢っていうのはな、叶えるもんなんや。これで分かったやろ。」

なるほど、はっきり分かった。夢というのは自分で叶えるもの。叶えてもらうものじゃない。自分がそれに向けてがんばって、夢を実現する。つまり、待ってるだけではだめだ。僕は、ただ待つだけではなくて、カンちゃんみたいに、僕が誰かの友達になりに行かないといけないんだ。


 いけないんじゃない、僕がそうしたいんだ。つまり、それが僕の夢。

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