親友様の願い
僕、ナギサ ユキーシャに向けられた笑顔で、花嫁殿は政略結婚相手である親友、アスカに一目惚れしてしまっていたことには直ぐに気づいた。
けど、ナギサはどんなに花嫁殿に恋情を抱くことになったとしても……、俺を依存することはやめないだろうと思う。
自画自賛に聞こえるかもしれないけど、それは事実だ。……だって俺とアスカは二卵性双生児の双子だから。産まれたばかりに捨てられ、幸いなことに施設の方に見つけられた俺達は、ちょうど八歳の頃に別々の養子先に引き取られた。
アスカはそれがトラウマになってしまっている、だから……もう一度出会えた今、コイツの性格上、今まで“兄”に甘えられなかった分、それ以上の長い期間依存することだろう。
花嫁殿はきっと、アスカを心から愛してくれるだろう。……強く思えば、コイツにも確実に伝わることは間違いない。
が、俺が離れようとすればアスカの心は、確実に壊れてしまう。
このままじゃいけない、そう思って一線引いた親友関係になろうとした。……けど、三日経った時、アスカの目から光が消えたから、俺はコイツの側から離れることは出来ない。
花嫁殿、お願いだ。
直ぐには変化はないかもしれない、だけど諦めずにアスカを愛してやってくれ。
本当は臆病で、不器用で、さみしがりやのアスカなんだ。そんなコイツの心の中に入り込める女性は、きっと君だけだから。
どうしても、アスカを愛すことが不安になった時、その時に俺達の関係の真実を教えてあげるから。だから……、アスカの側にいることをやめることだけはしないでやってくれ……。
「ナギサ、ナギサ?」
「はい、何でしょう?」
アスカは俺達が兄弟だと知られることをあまり好まない。だからせめて、花嫁殿を不安がらせないように敬語で喋り続けることしか出来ないから。
「……花嫁殿は何時まで俺と一緒にいてくれるかな。何時までこんな関係に耐えてくれるのかな……?」
と、そんなアスカの言葉に俺は、何も答えることは出来なかった。