失恋から始まる恋模様4
「……圭織、わかっただなんて言わなくて良いんだよ。本当に断りたいなら、アイツに自分で断らせればすむことなんだから。アイツの都合で、……圭織がそう言う必要なんてないよ」
と、そう言う優しい声の持ち主は、……間違えなく外川くんだった。
――あっ。また、外川くんに助けられたんだ……。と、そう私は考えれば不思議と涙が引いていった。
そう考えていたうちに、外川くんは恐らく新一くんに視線を向けていて、あの優しい声が怒りの満ちた声へと変わり、こう言う。
「……圭織に構ってないで、早く愛しい彼女さんのところに行けば? ……アンタの彼女さんが圭織に嫉妬して、何かしたのならば……俺は許さないから」
そんな優しすぎる、外川くんの言葉に再び涙が出そうになった。
◇◆◇◆◇◆
新一くんが路地裏から去り、私と外川くんの二人っきりとなった。
私は助けてくれた外川くんにお礼を言おうと、彼の方へと振り返ると……。
学校での姿とは、別人ように変わった外川くんの姿があった。
ふわふわと癖毛に見せた栗毛、その目に囚われそうになるくらいに惹きよせる、……まるで海のように青い瞳をし、モデルをしてても違和感のないほどの整った顔をしている。
「……外川、くん?」
と、思わずそう呼べば、外川くんはニコリと穏やかな笑顔を浮かべた。
――あっ。間違えなく、外川くんだ。と、何故かそう思ってしまって。
そう思っているうちに、外川くんは私から少しだけ離れ、こう言った。
「俺ね、ハーフなんだ。この見た目だから目立つでしょ? でも、カラーコンタクトは入れたくなくて、前髪で隠してたんだ。だから……、このことは誰にも言わないでね、桐沢さん」
と、そう言った外川くんの言葉に私は勿論、縦に首を振った後、さっきから気になっていたことを言葉にした。
「……どうして外川くんは、そんな格好をしてるの?」
まるで執事と、童話の白ウサギのモチーフにした洋服を何故着ているのかと、気になっていたのでそう聞いてみれば、外川くんは照れながら笑った。