失恋から始まる恋模様2
外川くんに送ってもらってから次の日、桜が私に抱きついてきた。
「聞いてよ〜、圭織! 新一くんが……綺麗な女の人と歩いてたの!」
と、半泣きしながら私にそう言ったから、本当に付き合っているんだって事実を突きつけられたような気がして、チクリと胸に針が刺されたような感覚がした。
それでも昨日よりは表情を出せるようになって、苦笑を浮かべながら昔のことを思い出してみる。
――確か、新一くんにはお人形みたいに可愛らしいお姉さんが居たんだった。真面目な彼が浮気をするはずがないから……、多分お姉さんだと思うけど、幼馴染みだったことを桜には言ってないしね、そのことを言えるはずがない。
と、そう考えながら、私は愛想笑いを浮かべてこう言った。
「……大丈夫だよ。樋川先生は……、真面目な人だし、桜を大切にしてるのわかるもん。だから、浮気なんてしてないよ。そんなに悲しまないで……、桜」
そう言葉にした後、そうかなぁ〜と呟きつつ、桜は赤くなった目元を隠すためにお手洗いへと行き、私は自分の新一くんへの諦めた恋心を隠そうとため息をつき、席へと座る。
それと同時に外川くんはすかさず、私の席に一枚のメモを置いて、仲の良い友人のところへと向かって行ってしまう。
外川くんが置いていったメモには、
――我慢しないで今は泣くこと。そしたら、いつかあの人が好きだったなぁって、良い思い出として振り返ることが出来るようになるよ。
と、そう書いてあった。その優しい言葉に、私は思わず泣きそうになった。
◇◆◇◆◇◆
「今日は湯川先生が休んでいるため、代理として俺、樋川新一が授業をさせて頂きます。よろしくお願いします」
と、放課後の塾の時間。教壇に立っているのは……、新一くんだった。
――運命って凄く、……意地悪だ。
と、私がそう考えていれば、教壇に立つ新一くんと目があったような気がした。