第七話
十二歳になった。
冒険者組合に登録できる年齢になったということで、早速冒険者組合に来た。
「冒険者になりたいので、手続きをさせて下さい」
「冒険者志望の方ですか。冒険者組合加入には試験が必要となりますが、大丈夫でしょうか?」
「ええ、私塾に入りそれなりに鍛錬・学習しているので、大丈夫かと思います」
「ならば、冒険者組合の概要について細かい説明は特に要りませんか?」
「いえ、一応お願いできますか? 具体的なことまでは教えていただけませんでしたし」
「それ、私塾側の怠慢ですね。……ま、それはともかくとして、冒険者組合は大華帝国が国内の冒険者を把握・管理するために設置した役所が発祥になります。そのため、名目上は大華帝国に所属することになっているため、大華世界では、どこの国にも所属しない集団扱いとなります。ですので、戦争に関しましては冒険者組合は中立の立場を取りますね。依頼があれば傭兵を斡旋はしますが、積極的にどこの国を応援すると言ったことは致しませんし、特定の国の依頼を受けているからと言って、その国の敵対国の依頼は受けないと言ったことは致しません。科挙を受けるなどして正規に仕官される場合は、冒険者組合の籍をはずしていただく形になりますし、冒険者時代の実績は仕官しても無視されることが多いようですね」
「仕官のために使えると言ったものではないということとですか?」
「いえ、勿論武名等を聞いて武科の科挙を受けることを勧められると言ったことはよくある話です。ただ、科挙に受かった後は、冒険者だったかどうかは関係なく扱われることが多いという話です。自国での実績がすべてになるということですね」
「なるほど。冒険者として優れた実績を残しているからと言って、出世が早くなるといったことはないのですね」
「武名を理由に重要な作戦を任されやすいと言ったことはありますから、まったくないとまでは言いませんが、基本的にはないようですね」
僕は皇族だから、光の科挙は受けられないし、特に影響はないけど、立身出世を目指す人にとっては、重要な話なんだろうな。
「冒険者組合は冒険者の方に依頼を斡旋し、依頼料の一部をいただくことで組織を維持しております。ですので、依頼料の三割五分は冒険者組合の取り分となります」
組織維持にも、お金がかかるということなんだね。
ちょっと三割五分は高い気もするけど、いろいろな手間暇を考えると妥当なのかな?
「冒険者組合加入試験の試験結果によって、十級から一級まで分けられており、十級と判定された者も、冒険者としての実力が上がったと判定されれば、級が上がって一級まで上がることも珍しくありません。また、高い級で受かっても実績がなければ、下の級に落ちます。一級になりますと、昇段試験が受けられます。段は初段からはじまり、実績によって昇段試験を受けられると判定されると、徐々に上がって行きます。段の上限は制度上も受けてはおりませんが、せいぜい五段までが限界で、十段を超えた者は記録のある限り一人しかいません」
段持ち冒険者は、世間的にも尊敬されているよね。
最初は僕は何級からはじまるんだろう?
それなりの基礎はある筈だから、十級と言わず八級ぐらいになれると良いな。
そして最終的には、段持ち冒険者になりたいよ。
「段になりますと、指名の依頼が多くなります。冒険者組合としても、折り紙つきの実力の持ち主として、安心して紹介できますので、積極的に斡旋します。指名依頼を受けていただくと功績評価が上がりやすくなりますよ。また、指名料と言うのがありますので、組合の取り分を引いた金額分指名依頼を受けた方の報酬があがります」
指名で依頼されることもあるんだね。
確かに、依頼する側だって、依頼を成功できる実力がある相手に依頼したいと思うよね。
お金出すんだから、失敗されたらたまったものじゃないだろうし。
追加料金を払ってでも、指名すると言う人はいるんだろうね。
僕も、指名依頼を受けられるようになってみたいね。
「冒険者になる方は、組合員札が発行されます。この札は冒険者組合員としての資格を証明するものになります。札ごとに冒険者組合の台帳と照合すれば、本物であるかどうかすぐにわかりますので偽造はほぼできません。札には名前と階級のみが記載されていますが、台帳と照合すればどのような依頼をどのように処理してきたか等の記録がすぐに読み出せますので、別の国にある組合支部に行っても、依頼を受ける際の判断材料として使用されます」
組合員札かあ。
戸籍の身分は表にほぼ出せないだけに、助かるね。
まあ、今まで僕がいろんな国にいけていたみたいに、普段はあんまり重要なものにはならないかもしれないけど。
でも、子供と大人じゃ身元を証明しないといけない機会は、段違いに違うのかな?
十五歳にならないと、租税台帳には載らないから子供が証明する札なんて持ってないというのは常識だし。
「組合本部は、大華帝国元帝都にあります。ただ、元帝都自体は、天変地異以降危険地帯になってしまっている為、段持ち冒険者以外は出入りが禁じられております。そのため、本部の職員はすべて段持ち冒険者となっております」
ああ、支部があると言うからには本部もあるわけだね。
元帝都は、人が住めない場所になったと聞いていたけど、冒険者組合本部自体はあるのかあ。
元帝都は、僕も行ったことはないし、一度は行ってみたいな。
大華帝国本島にあった文献よりももっと珍しい文献がいろいろあるんだろうし。
「冒険者組合の概要については、こんな感じでよろしいでしょうか?」
「はい、ためになりました。ありがとうございます」
冒険者組合も奥が深いんだね。
私塾でも触りは聞いていたけど、本格的なことは放任主義だったせいで教えてもらえなかった。
もしかしたら聞けば教えてもらえたのかなあ?
職員の人は私塾の怠慢と言っていたけど、僕が熱心な学生じゃなかったから教えてもらえなかったんだろうか?
そうだとすると、反省しないといけないね。