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第六話

 十一歳になった。

 来年には冒険者組合に登録できるようになるから、冒険で仕事が出来るようになるね。

 まあ、金銭的なものは既に商品の移動で儲けているから、あんまり気にしなくてよくなりつつはあるんだけどさ。

 授業料を払っても、貯蓄することが可能な程度の資金があるし。

 宮廷を今追い出されても、何とかなりそうな気はする。

 もっとも、お使いのふりはそろそろ厳しくなるから、公行に登録するとなると、その費用を払って治貯蓄できるかと言うと……授業料と両方はつらそうだね。


 絵画構成は、ようやく出来るようになった。

 初めて絵画構成できるようになったときには、文字を絵のように表示するのに精いっぱいでまともな効果を発することはできなかったけど、その絵に意味をもたせて、頭の中の構成・呪文を含めて、十次元の構成程度は出来るようになった。

 まだ、派手な絵を用いないといけないから、隠密性に問題はあるけど、大きく一歩前進できたのは嬉しいよ。


 私塾の人達は何も言ってくれなくなった。

 どうしたんだろう?

 授業料払っているんだから、いろいろ教えてほしいんだけどな。


  仕方ないから、独学を再開している。

 絵画構成が出来るようになったことで、飛躍的に幅が広がったから、ある程度独学でも大丈夫な面はあるんだけどね。


 絵画構成を使えば、輸送用の空間も極めて大きく作ることが出来るようになった。

 これを用いれば、転売も比較的容易にできるようになると思ったけど……


「一度に買い取ってくれる量のほうが制限ある。今までは少量だったから問題なかったが、こんなに大量は無理だ。ここまでたくさん仕入れたなら自分で露天でも良いから店を出して売ったほうがいいんじゃないか? 公行での買い取りは、あくまで売れ残りの買い取り程度のものだ。初めからここに売りに来られても、その困る」


 と言われちゃった。

 そうなると、売るための時間が必要になって、鍛錬や学習がおろそかになってしまう。

 簡単に儲けることはできないね。


 魑魅魍魎を倒した時にその肉を大量に保管すると言った用途に使ったほうがよさそうだね。

 まさしく必要な時に必要なだけ魔法を使えるようにするという前提を事前調査が不足していてうまく出来なかった例と言うことに、今回はなっちゃったかな。

 公行についてもうちょっと詳しく調べることにもしたよ。

 利用するだけしておいて、どういう組織かちゃんとわかってなかったし。


 公行とは、商人の同業者組合なんだってさ。

 余ったものを融通しあったり、緊急に必要な品を発注するのに呼びかけたり、資金の貸し借りをすると言った権能を持つ存在。

 だから、僕みたいに公行に頼って物を売買するのは、邪道もいいところだったみたい。

 反省しなきゃね。


 今までの売買でもそれなりの蓄えが出来ているので、冒険者組合に所属できる十二歳になるまでは、見聞を広げるほうに重点を置くことにした。

 その一環として、大華帝国本島にも行ってみたよ。


 人口千人に満たないと文献にあったけど、千人に満たないどころか、百人ぐらいの村って感じの場所だった。

 何でも、大華の八帝が成立する前までは、名目上でも君主と仰いでいたためにそれなりの資金を大華帝国に送金したり、諸侯の館があってそこを維持するための物資を持ってくるついでに貿易が行われたりとしたんだそうだ。


 でも、大華の八帝成立でそういったものがなくなってしまい、お金もなく貿易もなくなり、島だけでは人口が維持できなくなってしまったんだって。

 結果、人口流出が続き、過去の文献等が多少残っているだけの孤島の村になってしまったとのこと。

 村長みたいな人が今も皇帝を名乗ってはいるけど、あくまで伝統的な呼称であって大華世界に覇を唱える気も能力もないと笑っていた。


 ただ、文献はよその図書院では見かけないものが結構残っているね。

 その中の一つで、絵画構成に透明化を混ぜて絵画構成自体を透明にして見えなくするという技法の存在を知った。

 確かに、絵画として構成が描かれてしまえば、後は透明になっていても良いんだもんね。

 無詠唱と組み合わせて、隠匿性能を上げてわかりにくくすると言うのは、手の内を読まれないようにすると言う意味でも結構大きそうだ。

 構成の部分の一部が透明化に回る分、複雑なことがやりにくくはなるみたいだけど、絵画構成自体かなり複雑に出来る方法だし、有利さのほうが大きいかな。


 その延長で、複製魔法で作られるものを透明化することも研究してみようっと。

 武器が透明になれば、相手がよけるのも難しくなるだろうしね。

 もっとも、僕自身も見えなくなっちゃうわけだから、透明なものを見られるように眼を強化する魔法と併用しないといろいろ問題かな?

 鞭みたいにまっすぐ動かない武器だと、大きくものを言うんじゃないかな?


 魔法自体を透明化する研究も並行して行っている。

 火矢が透明なまま飛んで行って、目標でいきなり発火するみたいな状況に持っていければ、見せ技としては大きいだろうしね。

 勿論、火矢は飛んでいる間に相手を恐怖にさせる視覚効果もあるから、一概にどちらが有利とも言えないけどさ。


 僕自身も透明になって透明な攻撃を繰り出せば、視覚に頼る相手は大きく混乱させることが出来ると思う。

 聴覚や嗅覚も遮断出来る魔法を併用すれば、かなり優位に戦いを進められるはずだ。

 冒険者は、戦闘に敗北すると死ぬリスクが高いみたいだし、少しでも優位にもって行かないとね。


 魔法で傷や病を治す方法も学んではいる。

 あまり治療の魔法に頼るとろくなことにはならないみたいだけど、かと言っていざという時のために使えないのは論外なわけで。

 僕自身に使うのはともかく、病に苦しんでいる人が目の前にいないのに研究できるのにしてなかったから救えないなんて、後悔してもしきれないと思うしね。


 いろいろ研究や鍛錬を繰り返して、冒険者組合に加入する準備をする日々だね。

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