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第五話

 十歳になった。

 私塾に入れるようになったので、都で評判の私塾に入ることを目指すことにした。

 冒険者組合の組合員に慣れるのは十二歳からだから、二年間冒険者になるためにみっちり基礎を身につけよう。


 ……の筈だったんだけど、断られちゃった。


「私は、君に何を教えればいいのかね?」


「冒険者になるための基礎を教えてほしかったんですけど、ダメでしょうか?」


「ダメも何も、私は何を教えればいいのか教えてくれ」


 評判が高い私塾だけに、入塾試験があってそれを受けたんだけど、門前払いをされちゃった。

 やっぱり、身分を隠さないといけないから、庶民のふりして受けたのがいけなかったのかな?

 こういう私塾だと、身元がしっかりしてないといけないのかもしれないし。


 試験そのものはそれなりの成績を出せた自信はある。

 学力試験では、ほぼ解けたと思うし、実技試験では、他の人よりも高度な技を見せられたと思うしさ。

 だけど入塾を断られちゃったんだから、身元が引っ掛かったとしか思えない。


 まさか、皇帝陛下の弟ですなんて素直に言うわけにもいかないから、諦めるしかなさそうだね。


 仕方ないので他の私塾もまわることにする。

 やっぱり、入塾試験があるところは、身元がしっかりしていないという理由で断られてしまう模様。


「君に教えられることはない」


 なんて言われちゃったら、強くも言えないしね。

 何度か断られたものの、入塾試験がない私塾にたどりついて、ようやく通えるようになった。


 もっとも、もっといろいろ教えてもらえるものだと思っていたのに、あんまり教えてもらえないんだよね。

 わからないことを質問しても、自分で調べたり考えたりしたほうが答えにたどりつけるのは早いなんて言われてしまって。

 これじゃあ、授業料払って私塾に通う意味が感じられないよ。


 ただ、動物や魑魅魍魎としか対戦経験のなかった僕にとって、人との対戦が出来るようになったのは大きいね。

 僕が子供だからと手を抜いてくれているみたいで、僕が完勝してしまうのが多いのは……僕が皇子だって、ばれてるのかな?

 名前は隠してないけど、朱なんて苗字は珍しくもなんともない苗字だし、僕達皇子兄弟の名前全部覚えているような暇人は、まずいないだろうし。


 剣技の正式な型を教えてもらえたのは嬉しかった。

 先人が開発しただけに、理にかなっていると思えるものが多いし。

 体格によっても、それにあった型が違うと教えられて、なるほどなあと思ったよ。

 僕みたいな子供に適した戦い方、大人の戦い方がそれぞれ異なるんだね。


 今は、全体重を載せて一気に攻撃する型があっているように思えるけど、もっと大きくなったら、力を元に、武器の重さをうまく操って攻撃したほうがいいみたい。

 両方やってみたけど、今は両方しっかり区別して出来るようになることを目指す感じで良いのかもね。


 魔法については、構成を組むのに流派的なものがあるのを教えてもらえたのは新鮮だったかな。

 でも、どの流派もこだわるところがありすぎて、非効率に思えちゃうんだよね。

 思想に則って構成をくみ上げると言うことみたいなんだけど、実際に便利か? と言うと疑問符をつけざるを得なくなっちゃう。


 道を大事にして、道を中心に据えた構成ばかりを行い、道から外れた構成は邪道として使用を禁止するとか、法則を大事にして、その法則から外れる魔法は誤差の範囲だから存在しないものとみなすとか、なんか不完全なんだよね。


 勿論、悪いことに使えないようにするための制限をすることは必要だと思うから、一定の制限が必要なんだとは思うけどね。

 ただ、それを悪くない使い方まで制限するのはどうかな? って思うんだよね。

 悪く使える可能性のある使い方は制限して、そういうものは自分で研究しないと使えないようにして抑止力にするということなのかもしれないけど、僕の透明になる魔法や鍵開けの魔法が結構簡単に構成組めたことを思えば、効果はほとんどないんじゃないかな?



 執務室覗きは今も日常的にやっている。

 最近では、報告書の見物は結構な頻度でやっていて、間違いや外国ではどういうことが行われているかと言った注釈を書くのが楽しくなっちゃっている。

 勿論、誰が書いたかもわからないような怪文書を丸々信じるなんていう人はいないだろうけど、参考程度にしてもらえればそれで十分だしね。

 明確な間違いや非効率を省ければ、それで十分だし。


 それにしても、文官の報告書が実態とかけ離れたものが多いことは気になるな。

 不作なのに重税が酷くなって人々が苦しんでいる地域が近年まれに見る大豊作で、税率を下げたのに税収が上がったなんて書いてあるのは、何を言っているんだ? 僕理解できないよ! だし。


 ただの荒れ地に過ぎない場所の開拓が進んで大豊作なんて書いてある報告書もあるし。

 実態を見ていないのに勝手に書いているのか、明確に騙す意図があるのかわからないけど、どちらにしても酷いことには違いないから、実態を調べるように注釈を入れておく。

 書類だけ見るんじゃなくて、実態調べればすぐにわかることだと思うんだよね。


 ……二カ月後、節度使の人事異動が発表されて、注釈を入れた節度使が解任されたり、捕縛されたりしたから、実態を調べてくれたんだと思っておくね。

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