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第四話

 九歳になった。

 転移の魔法を使えるようになったから、行動範囲が飛躍的に広くなった。

 今までは、宮廷と都、その周辺ぐらいしか知らなかったからあまり興味なかったけど、この国が大国であることを認識することにもなった。

 僕の兄が皇帝を勤めるこの国は、光という国号を持つ。

 大華世界では、南方の農業生産力が高い地域の国にあたり、大華八帝と呼ばれる大国の中でも、有力な国として知られるようだね。


 元々、大華世界は、大華帝国が治めていたものの、天変地異により大華帝国の都、大京が壊滅。


 大華帝国皇帝は、地方巡幸に出掛けていて無事だったものの、弱体化したことを見た諸侯国が相次いで独立。

 行き場をなくした皇帝は、東の海に旅立ち、大華帝国は、東の小島でのみ続く小国に転落しちゃったんだってさ。


 それでも最初のうちは、諸侯も大華帝国の臣下を名乗り、大華帝国の名のもとに形式的な統一が行われたこともある程に。

 でも長く続くことはなく、瓦解しちゃった。

 この瓦解を樹に、大華帝国から、形式的にも独立する動きがおき、大国の王達が皇帝を名乗り出したんだって。

 その大国は七国あったために、大華帝国を会わせて、大華の八帝と呼ばれる。


 もっとも、大華帝国は人口千人に満たない離れ小島一つを治めるに過ぎず、大国と比較できるような国力を持ち合わせてなどいないみたい。

 皇帝を名乗り続けられるのも、占領したところで維持費用がかかるだけで、武力行使を誰もしたがらなかったみたいね。


 大国の緩衝地帯にある小国がたまに大華帝国の臣下を形式的に名乗り残存している以外は大陸での影響力もなく、旗印としても下手に国が残っているために敬遠されちゃうみたい。

 下手に大華帝国復興を唱えた場合、大華帝国自身が保身に走って、偽軍だと宣言しちゃうからだってさ。


 いくら大華帝国に攻め込むメリットがないと言っても、大華世界との交易が止まったら経済的に崩壊するのはわかりきってるし。

 大華帝国側には、旗印にされて得することは何にもないんだってさ。


 で、僕が皇族になっている光の国は、この大華の八帝成立時に帝国になった国の一つ。

 大華世界南部で、肥沃な穀倉地帯を治めている。

 軍事的には、そこまで精強な国ではなく、文化的にも中央の国と比較すると遅れていると言われやすいものの、豊富な経済力を背景に大華の八帝の一角を占めている。


 今は、諸国の勢力が均衡状態になっているために、小競り合い以外は大した戦がない状態が五十年ほど続いている。

 だからこそ、前帝だった父が男女合わせて60人近い子供を設けてもそこまで問題にならずに済んでいるんだよね。

 戦費の膨大な負担がないから、宮廷がある程度の贅沢は出来るし。

 それでも子供の数が多すぎて、僕みたいにおざなりにしか扱われない子供も多いけどね。


 逆にいえば戦乱の時代が始まれば第一に切られるのは、僕ら穀潰し扱い皇子。

 皇女達は、部下や他国への嫁要員に出来るだろうけど、僕達皇子はせいぜい養子に送りこめるかどうかだろうし。

 冒険者として活路を見いだしたほうがよほどいいというもんだと思う。



 魔法での移動で他都市や他国にも行けるようになったことで、現地を直接見る機会も出来た。

 微妙に言葉も違うところもあるから、そう言った言葉の違いも面白いね。

 商品の値段の違いはもっと格段なものがある。


 元々同じ大華帝国だったこともあって、銅銭は基本的に同じ価値を持つ。

 紙幣もそれなりにあり各国でそれぞれ異なるものの流通しているものの、大華帝国時代の銅銭と兌換できることが信用の源になっているほどだ。


 農業国である僕の実家である光は、食料品が安い傾向がある。

 海に面していもいるから、魚等の海産物もそれなりに流通しているしね。

 逆に、特に有名な産地がない工芸品は、値段が高くなりやすい。


 それが他国では、まったく異なる様相を見せる。

 陶磁器の有名な産地である庫松鎮のある蒼では、工芸品が安く食料品が高いと言ったことが起きるんだよね。

 特定のものが安かったり、すべてのものが高い国なんて言うのもあるわけで、興味深いよ。


 試しに子供のお使いの振りをして、商品を公行で購入し他国の公行で売るみたいなことをやってみた。

 これ、面白いように儲かるんだよね。

 勿論、買い取ってくれる額は店で売られる額と比較するとかなり割安になるから、一律で儲かるとは限らないし、僕みたいな子供はかなり足元を見られる。


 それでもすごい儲けになるんだから、すごいよね。

 もっとも、普通の商人の場合は魔法を使わずに時間をかけて、船や荷車を用いて運ぶわけだから、手間暇かかること考えれば、そこまで暴利をむさぼっているわけじゃないとも思うけどね。


 この輸送を効率良くするために、特殊な空間に荷物を入れて任意のものを取り出す魔法も習得した。

 もっといい構成にすれば、無限に物が入るみたいだけど、僕の今の実力じゃ空間内を二つに仕切って任意のものを一定量入れる程度が限界。

 それでも、全然違うんだけどね。


 物質複製の魔法もある程度は研鑽が進んできたので、武器この武器能性能をコピーして、武器での鍛錬も可能になった。

 やっぱり、本物を持って行うと違うね。

 重心や重いものを持つということでは、今までもやってきたけど、材質の違いによって全然違うというのが良くわかったよ。

 今はまだ、一刻ぐらいしか複製の効果は残らないけど、行く行くは効果時間を延ばし、複製したものの品質を良くすると言うことも出来るみたいだから、頑張ろうっと。


 他国の書物も見させてもらっている。

 光は文化が遅れているというぐらいだから、進んだ文化の知識も目にしたいと思うし。

 中原にある風は確かにすごいね。

 図書院の書物の冊数は、明らかに光の図書院と比較にならない位多かった。


 風の都には私塾も多く、特に科挙の前段階である童試を受ける予備校が多いみたい。

 科挙は、光でもあるけれど童試自体は希望者であれば、だれでも入れる。

 もっとも、ついていけないものは即退学になるため、ある意味では狭き門となっていた。

 逆に風の童試は、入るのが難しい分、卒業以外はそこまで落第させられることはないみたい。

 国による考え方の違いもいろいろあるんだね。


 それもあって、風では私塾が発達しているけれども、光では私塾があまり発達していないという面があるのかもしれない。

 光にも私塾はあるけど、科挙対策ではなく、実学中心で商人の子息や貴族の三男・四男、冒険者を志望する者が通うものという傾向があるみたいね。


 僕も私塾に入りたいけど、十歳未満は入れないと門前払いをされちゃった。

 来年は十歳になるし、今商売で儲けているお金を授業料にして、私塾に入りたいものだよ。

 独学である程度なんとかなっているとは言っても、先生にいろいろ教わりたいもん。

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