第三十四話
「西方より、軍勢が攻め込んでまいりました!」
準備がある程度整った所に、予言にあったと思われる軍勢が二つ攻め込んできました。
なんでも攻め込んできた軍勢は、金角、銀角とそれぞれ名乗っているようで、それぞれ別の軍勢が偶然同時に攻め込んできたということっぽいのですが、それが演技で双方ともに連動していに保証もありません。
実際同系統の名前ですから、裏でつながっていても全然驚くに値しないのですが。
ただ、いくら辺境とはいえ光の覇権が及ぶ地域で戦い合うのを黙認することなどできません。
軍を繰り出し、他地域への撤退を勧告します。
言葉が通じない可能性もありましたが、行商人から、特に大華世界の言葉が通じないという情報がなかった通り、大華世界の言葉で問題なく通じました。
もしかすると彼ら自身の言語は別にあるのかもしれませんが、その辺は情報が不足しているため分かりません。
こういうことも事前に聞いておくべきでしたと後悔はするものの、今は問題ないので交渉を行いましょう。
「戦うなら自分の領域で行ってくれませんか?」
「ここがお前達の領土だと言うのは、お前達が勝手に言ってるだけだ。土地があり敵がいれば戦う。それが戦士の道だ」
「土地は神のもの。土地を所有する等と訳のわからないことを言われても困る」
……話になりませんでした。
国が違えば考え方も違うと言うのは、分からなくもないのですが、だからと言って我々がそれに従う理由にはなりません。
戦いを行うしかないという結論に。
ある程度の軍を前線に見せつけておいて、後方に転移魔法等で軍勢を集めて一気に追い出すための作戦に備えます。
そこで半分予想していたことが起きました。
金角銀角の軍が敵の敵は味方と手を組んだのです。
どちらとも戦う予定でしたから問題ないと言えばないのですが、土地があり敵がいれば戦うと言っていた人が、それまで戦っていた相手と手を組むとか、戦士の道って難しいんですね。
もっとも、我々にとっては願ったりかなったりです。
下手に片方のみから味方するなんて言われたら、動きにくくなったのも確かですからね。
幹部はそんな甘言に引っ掛かったりしませんが、前線兵士は味方すると言っている相手に対して攻撃を命じたところで躊躇するでしょう。
まとめて遠慮なく叩き潰せる状況を作ってくれましたことを金角、銀角達に感謝します。
……まとまった所で、敵は烏合の衆だったようです。
単純に三等魔法を複数打ち込んであげただけなんですけどね。
仮にも大華世界全体に影響すると予言されるような襲撃を行うなら、これ位耐えてもらえないと拍子抜けしてしまいます。
跡形もなく打ち破ったものの、金角・銀角はまだ生存していましたので、彼ら自身は強かったようですが……
「野蛮人には、戦いの作法と言うものがないのか?」
「そうだそうだ。大魔法でいきなり攻撃なんて卑怯だぞ。軍勢同士が戦ってこそ戦の道だ」
「戦の道と言う人がそれまで戦っていた人といきなり統合するのは、問題ないんですか?」
尋問を始めましたが相変わらず話が通じません。
もっとも、これは予想の範囲内ですけどね。
「その辺のお題目はともかくとしまして、本当の目的や今後についてお話しいただきたいと思います。戦の道と言いながら戦いあっていた直後に利害から一つにまとまれるような方々であれば、理解はできますよね?」
「うぐ」
「……老君に試練を与えるように命じられた」
老君? 誰でしょう?
神仙としては、太上老君様辺りが有名ですが、まさか関係ありませんよね?
太上老君様は、いにしえの賢者老子様が神仙になられて、霊薬の多くが太上老君の考案であるとされています。
「その辺で、勘弁してあげていただけぬかな?」
絵姿で見たそのままの御方がおられます。
太上老君様が出てくるとは、なんでまた。
今回の戦い一回ですんなりと終わるとは思っていませんでしたが、ここでこのような大物が出てくることは、流石に想定外ですよ。
今回の元ネタは、西遊記です。




