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第二話

 僕の父である今上帝が、僕にとっては兄にあたる長男の朱幣に譲位を行ったんだよね。

 皇子だった僕達はあっという間に、皇弟に過ぎない存在に。

 今まで、上の兄達に交じって受けられていた授業はなくなり、近衛兵と一緒に訓練させてもらっていたことも継続は難しくなった。

 皇子は自由にいろいろできたけど、皇弟となるとそんな気楽な扱いでもなくなっちゃうみたいで。


 でも、ある程度の文字が読める、鍛錬の方法を教わっていたことでそれを継続させるぐらいはできそうだ。

 図書院の出入りはある程度できるし、走りこみや運動程度の場所は困らない。

 重いものは庭の岩を移動させるとかすればいいわけだしね。


 文字を覚えるのに便利そうだということで、論語を読み始めることを始めた。

 春秋等の経書も読めるだけは読んでおきたいね。

 先生達も言っていたもん、論語と経書はすべての学問の基本だって。


 実学や魔法の本も読んでおいたほうがいいみたいだけど、まずは文字を覚えるのが基本だし、段階を踏んでかな。


 鍛錬については、棒を持って振るうことをやり始めてみた。

 独学なので、これが正しいのかはわからないけど、今までの段階を踏んでと言うことを参考にすると、最初は軽い棒から始めて、だんだん重くすると良いみたいだね。


 そう簡単に重い棒は見つからないから、落ちている枝を加工したり、岩を加工して石棒として振ることも始めた。

 重いものは大きくなりやすいけど、大きくなればなるで重心を取るのに苦労するようになった。

 重心さえわかっちゃえば簡単に扱えるようになるんだけど、そこまでコツをつかむのが大変。

 それが楽しいという面もあるけどさ。


 そうなると重いだけじゃなくて、変形している棒をいかに扱うかということにも興味が向く。

 重心をつかんだ後は、それをどう動かすと一番効率いいかということを試しても見る。

 全身で振るうんだけど、僕自身が成長すると、持ち方も変えないといけなくなるなんてことが分かって、面白いよね。


 でも、正直独学だけじゃ限界を感じている。

 自分で工夫するのは楽しいけれど、近衛兵の人達に教えてもらっていた時のように、わからないことがあればすぐに聞けるということがなくなったのはかなり痛い。

 勿論自分で考えてと言うのも必要なんだろうけど、間違ったことを突き進んでいるんじゃないか? なんて不安に思っても誰にも聞けないわけだしね。


 宮廷を抜け出してとも考えたけど、僕はまだ五歳の子供に過ぎない。

 流石に、教えを請うにも無理があるよねえ。

 不安だけど、今できることをやるしかないか。


 勉強のほうも、わからないところは侍従に聞いてみたりはするけど、その侍従も知らないことがあったりして困っちゃう。

 宮廷の侍従だからにはそれなりの学識あるんだろうけど、僕たち兄弟は増えすぎて学識よりも人数が重視されているのかな?

 勿論、、兄帝の侍従などはもっと優秀なんだろうけど、僕達穀潰しにまわってくる侍従に能力を求めるほうが酷だと思う。

 結果、独学を深めることになった。


 文字を学ぶだけの筈が、どのような意味なのかが気になり出し、解説書も読むようになった。

 春秋であれば、左氏伝と言った良質な解説書があることを知る。

 学び始めると、これをうまく読むために他の書物を読んで解説を求めると言うことが広がり、自然と様々な学問に手をつけることになった。


 算術・農学と言った実学からはじまり、魔法についても学ぶようになった。

 頭の中に構成を作るというのが実際としてわかりにくかったが、一度成功してからは書物に書いてある通りに徐々に使用できるようになった。


 魔法は、陰陽五行を中心に、様々な概念を組み合わせて構成することにより発動させることになる。

 逆にいえば、概念をいろいろくわしく知れば知るほど、様々な種類の魔法を使えることになる。

 となると、経書も大事だが、実学に精通することこそが魔法上達の要となるわけだ。


 魔法使いに学者タイプが多くなるのも、当然の話なのかもしれないね。

 幸い、僕には学ぶ時間の余裕はそれなりにある。

 肉体的な鍛錬も大事だけど、様々なことを学んでいくことで、戦力強化をしていきたいな。

 天地の理を知ることで、魔法を強化できるということなんだろうけど、今は基礎段階に過ぎない。

 書物で得られる知識にも限界があるし、良い先生に巡り合えればいいなとも思う。


 今は、年齢的に難しいかもしれないけど、僕だって成長するんだ。

 成長するまでは独学で基礎を身につけ続けて、応用については、先生に教えてもらうという方向で良ければいいのかな。

 本当は基礎についても、先生がいたほうがいいのかもしれないけど、最低限は先生に教えてもらえたんだし、贅沢を言うべきではないのかもしれない。


 普通はこの最初の一歩で先生に巡り合えないことのほうが多いんじゃないかな? って思えるし。

 勿論、今も先生に師事出来る上のほうの兄達が羨ましくは思う。

 でも、僕が三十三男に生まれてしまったことは変えられない話だ。


 今は出来ることをやって前に進むしかないよ。

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