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第二十話

 綱紀粛正がうまく行ったから、次は富国強兵と言う話になった。


「国を豊かにするためには、高く売れるものを作り売ることだと思います」


「言うは易し、行うは難しですが、どのような方策をお考えでしょうか?」


 そんな感じで新たな仕事ははじまった。


 冒険者になる前に行っていた国と国の間の物価の違いを考えると、同じものを同じように作って売っても場所によって値段が異なるという結論が導き出せる。

 なぜ場所によって異なるかと言えば、その場所で入手しやすいかどうか、そのものを欲しい人が多いかどうか、と言ったことが影響してくるわけだ。

 それならば事前にどのようなものを欲する人が多いかを調査してから売りに行ったほうが得なはず。

 それは、時期によって異なるだろうから、長期的な調査になると思う。

 夏に暖かい毛皮の服を買いたい人はいなくても、冬の寒い時なら欲しがる人は多いだろうし、売れるだろうと大量に売りに来る人が多くて入手しやすくなったものが、それまで同様に高く売れる筈もない。

 そう言った見極めをしっかりやらなければ、せっかく売りに行っても、大きく利益が変わってしまうどころか、下手をしたら損失を出しかねないことは簡単にわかるんだよね。


 輸送の費用のことを考えれば、出来れば移動距離も短くしたいし。

 僕みたいに転移魔法で転移したり、荷物を魔法で運ぶことが出来るのであれば、距離はあまり関係ないけど、普通の商人はそう言ったこと出来ないもんね。

 勿論、魔法を使える商人を増やすことで将来的に可能にするのは理想だけど、今すぐには無理だからねえ。


 誰もが食べて使ってしまう食糧を輸出している光は現状ある意味最適なことをやっていると言えるのかもしれない。

 食糧を欲しがる人は減らないし、光の土地柄大規模の食糧生産がやりやすい分、多くの量を安定的に供給できる。

 安定的に供給できるから、他の国が無理に食糧増産に動かない分、利益を出すこと出来てきた。


 もっとも、他国も食糧増産に走りだすと、すぐに崩れてしまう程度の優位でしかないんだよね。

 光が継続的に不作になったり、値段を高くしようなんてすればすぐに他国も食糧増産を考えるはず。

 自国で増産するよりも光から買ったほうが得だと言うだけの理由なんだから、可能ならば自国で食糧生産したほうが、国力の安定と言う意味では有利なんだし。


 その意味では、どういう食糧がどこでどれだけ欲しがられているかと言うのを地道に調べて、それに合ったものを作るのが良いと思う。

 それは、光国内に対しても一緒。

 移動の距離のことを考えれば、下手に他国で売るよりも、光国内で売ったほうが得なんだから。


 光国内で売るためには、光国内で高く帰るようなお金を得られる手段を作ることも必要になってくるかな。

 どんなものでも買うためにはお金が必要になるわけで、それを払うための方法を考えると、どうやってお金を稼げるかということが重要になる。

 別の食糧を作って売ると言う手段もあるだろうけど、すべての場所が食糧を作るのに適しているわけじゃないし。

 ものを運ぶ人夫やいろいろな建物を作る人達も必要だし……


 いっそのことということで、運河を作ることを提案してみた。

 運河があればものの移動も容易になるし、それを作るための人夫達がお金を得ることで、光国内を産地とする食糧を買ってくれやすくなる。

 南北を結ぶ運河があれば異なる食糧を他の場所でも売りやすくなるし、何より、大華世界では南側にある光では、他国に売る=北側にモノを移動させる必要があるってことだから、南で作った産物を北に持って行きやすくなるんだよね。


 勿論運河を作るための費用はかなりの費用が必要となるけど、幸い光はそれなりの財政的余裕があるから、多少のことはできると思うんだよね。

 良くわからないけど、最近税収が増えているし。


 運河の船に積み込みやすいように、運河に向かって街道整備をするということも始めた。

 運河の港に町を作ることで、そこが物の流れの拠点にもなる。

 その港でも商いを奨励することで、船を持つ商人が運ぶものを増やせるようにもする。

 港での商いについては、他の町での商いとは違って税をかけないようにした。

 他の街での商いでは、多くは現地で使いたい人の元に渡る商いだけど、港ではこれからまた移動する商いなわけだからね。

 その中間地点だと分かっている所の税を取るのは、ちょっと違うんじゃないかな? とも考えたんだ。

 それに税がかからないとなれば、商人たちも港に来て商いをするだろうから、運河を利用する物も増えるだろうと。


 そうやって商いが栄えれば、商いのための仕事をする人、そう言った人達を相手に店を開く人、そうやってお金を得た人が冒険者組合に依頼をすることで、冒険者も増えるなんて循環が発生し始めた。

 冒険者が増えれば宿屋等も増えるわけで、そこに移動する人が通る街道も栄えるわけだ。


 そうやって人が集まると、新たなことをやってみようと言う人も集まるみたいで。

 いろんな職人が集まって、工場こうばを作ると言ったことも行われた始めた。

 船を修理したり新造したりする工場は勿論のこと、物を運ぶための荷車に関わる工場、日用品を作る工場などがどんどんできている。

 評判の良い工場になると、他の街からも買いに来る人がでてくるために、より一層栄えるようになる。


 よその町に買いにに行かれちゃうと、せっかく会っても買ってくれなくなっちゃうからと品質管理を大事にするみたい。

 品質管理を大事にしない所は、余り儲からないからと、職人がほかの街の工場に行くなんてことが起きたりと、結構競争が激しくなったんだよね。



 結果的にだけど、他国に売れる産物がいろいろ生まれ出した。

 船なんかは流石に無理だけど、日用品の中でも、陶磁器なんかは名物と呼ばれる産地に肩を並べるのは無理にしても、それなりの値段で売れる。

 そりゃまあ、よそで買ったほうが良いなら売れないのが日用品だし、ごく自然の流れなのかもしれない。

 元からある町にある工場ならば、長年のお得意様がいるけど、新しい街じゃすぐに乗り替えるお客さんが多くなるのもその傾向に拍車をかけたみたい。


 勿論他国のものも買うことは多い。

 運河を船が行き来することを考えたら、売るだけじゃ成り立たないんだしね。

 それでも、売る物の額のほうが高ければ、富がそれだけ国に得られるわけだからね。

 富国という目的を考えたら、買うものよりも売るものが多いほうがいいわけだ。



 富国がある程度できてきたから次は強兵だけど、この工場達が結構大きくものを言ってくれた。

 職人が育ちつつあることで、武器の工場を作るのに便利な状況になり出したんだよね。

 旧来の武器職人もいるけど、そう言った職人は旧来の技術を守ることに熱心で、新しいものをなかなか作ってくれない。

 作らなくても、売れるんだから作る必要ないしね。


 でも、運河沿いの新しい工場の職人たちは、売るためにはどん欲に注文に応じてくれる。

 結果として、武器の質が良くなり始めた。

 魔法についても、兵士達に魔法を教えるためのお金を払うだけの富が手に入るようになった。


 兵士達が文字を使えるようになり出していたことも幸いした。

 魔法を使うための亀甲文字を教えやすくなっているんだよね。

 この亀甲文字は、普通に書くと何になると言うことを教えることで、覚えてもらえやすい。

 知らない字を意味から覚えるのは大変でも、この字は、普段使う場合はこの字だと分かっているだけで、理解のしやすさが格段に違う。


 そう言ったことが試行錯誤の結果わかったので、魔法を覚えさせる為の兵士を選ぶために兵士に積極的に文字を教えるようにした。

 これは、いろんな副産物も生み出した。

 命令を口に出して言うだけではなく、文書で出すことが可能になったために、伝言を繰り返すことで中身が変わることが防げるようになったことが大きいね。


 それ以外にも、報告や書かせることが出来るようになったことで、状況の変化が記録できるようになった。

 これが意外に大きくて、その内容を発表させることで競い合うようになってくれた。

 より自分を高めることで、他の人に自慢が出来るし、上官も褒めやすくなったわけで。


 魔法を使えるようになる兵士も少しずつ出てはいるけど、兵士の質が底上げされることのほうが大きいのも確かかな。

 将来的には、孤児たちを兵士にすることも出来るし、強兵と言う意味でも、希望は持てそうと言うことになった。


 これも、今は光でしかやってないけど、他国も使えるとなればまねしてくることは避けられない。

 隠そうとして隠せることでもないし、やらなければ他国よりも遅れると言うぐらいの気持ちで行っている。


 それでも、うまく行った時は嬉しいよ。

 予想以上のことが起きることが多いのも確かだけどね。


 今回の政策だっていいことばかりじゃないとは思う。

 兵士が文字を覚えることで、反乱の相談がしやすくなるなんてこともありそうだしね。

 それでも、うまくいっているうちはそのまま進めていくってことで良いんじゃないかな。


「棒、お主を宰相補佐に正式に任ずる。今後も、良き献策を致せ」


 兄帝からおほめの言葉と共に役職就任を命じられた。

 宰相補佐って言うぐらいだから、正式な科挙で合格してないといけないと思うんだけど、良いのかな?


 ……特に誰も異議を唱えないから良いんだろうね。

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