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第十九話

「慈善事業に介入なされるのですか?」


「はい、と言っても孤児に対する慈善事業に対して、僕に少しお手伝いをさせてほしいといった程度です」


「ほう、どうなされるので?」


 孤児を保護すること自体は良いことだと思うんだ。

でもどうせなら、保護した孤児に教育を行うことで大人になったら使える人材に出来ないかな? って考えたんだよね。

僕自身、皇子でありながら父帝が退位してからはほとんど自発的な勉強や修行しか受けられない状態で育ったぐらいだから、普通の子供が教育を受けられるとはとても思えないんだよね。


 全部の子供に教育なんて言うのは、費用・人材的な問題でまず無理だとは思うけど、ある程度人数が限定できる孤児であれば話は変わると思うんだよね。

孤児の実態把握から始めるのであれば、いろいろ難しかっただろうけど、慈善事業の対象になっている孤児の数に対応した人材を用意すればいいわけだからね。


 人材の供給先だって目処はある。

科挙の浪人達に仕事してもらうようにすればいいわけだ。

僕みたいに真似ごとの科挙だけ受けたような幸運な存在は普通はいないわけで。

地方で行われる郷試に合格はしたけど、都で行われる会試に受かる人はその中の一握りの存在でしかないわけなんだよね。

郷試は三年に一回しか行われないわけだから、その間浪人になっちゃうわけだ。

実家が豊かなら、衣食住を保証されて学び続けるぐらいはできるかもしれないけど、そこまでのお金がない人はそのまま断念しちゃうわけだ。


 でも、郷試に受かるような人はそれなりの人材なわけで。

そういう人達に孤児たちを教育する先生になってもらえれば……科挙浪人の有効活用になると思うんだ。

会試での成績を公表しておけば、雇うほうだってどのぐらいの額で雇うかと言う参考にもなるし、もしその浪人が再度科挙を受けて合格しようものなら、多大なコネとなるだろうね。

人脈による派閥争いはあまりいいこととも言えないけど、先行投資になることぐらいは、すぐにわかると思うんだ。


 そして孤児のほうもだけど、徹底的な教育を行えば、うまくいけば科挙を受けられるような人材もいるかもしれないし、兵士の要員の供給先としても使えるかもしれない。

光は、割と兵士があまり強くないとされてきたけど、子供のころから徹底して鍛えた兵士がいればその評価も変わると思うんだ。


 女の子の孤児も家事や学問・医療技術を教えることで、裏方を担う人材に出来るんじゃないかな?

帳簿を自力でつけられる孤児となれば、軍や役所で大いに役に立つだろうからね。

そこまで行かなくても、結婚して子供を育てる際にその知識を自分の子供達に教えてくれれば、費用をかけずに一定の教育を受けた子供にしてもらえるわけだ。

一人の女の子が複数の子供を産めば、複数の人材要員にすることも夢じゃないわけで。

美しく育った子は養女にして、


 魔法は男女を問わず使える人は戦力になると思う。

僕が隊商護衛依頼で行ったように策敵や結界を張るのに、男女差が出るとも思えないしね。

使える人材を増やせれば、国として利益大きいし、見栄に実利が加わるとなれば、士大夫層が積極的にやってくれるはず。


 僕は、どんな感じにやるのか? と実演して見せる感じで展開しようと思ってる。

幸さんにも手伝ってもらう方向で。

科挙浪人は学問を教えるのは得意でも、家事はできない人が多いからね。

家事を出来る未亡人を積極的に雇って指揮してもらう方向で動いて貰う。

一人で全部やるのは無理だけど、適材適所で輪を広げていくことはできるからね。



 そんな感じで始めた事業だったけど、未亡人雇うこと自体が慈善事業になっちゃったみたいで、その未亡人に学問を教えることで本人達の子供に教育することにもつながったりして、孤児を使える人材にするということだけじゃなく、一般の子供にも教育をすることが流行り出しちゃったんだよね。


 孤児の人数が有限だったこともあって、孤児争奪戦に負けた士大夫が貧民の子供を教育すると言うことを思いついたことをきっかけに、子供達の教育を行う場を士大夫が設ける場を作ることにつながって行ったんだよね。


 文字や計算を理解する子供が急増していることで、親の変わりに子供が書類を提出したり、税に関する文書を読むなどして、役人の不正が判明することが出てきた。

役人は、相手が文字を読めないことや複雑な計算が出来ないことを良いことにでたらめな額の税を徴収していた例が結構あるみたいね。

その場では役人が慌てて撤回するだけでなんとかなっても、子供が先生に相談することで、もっと上の士大夫を通じて朝廷に話が聞こえてくるわけで。


 綱紀粛正に役に立っちゃったんだよね。

元々は綱紀粛正策だっただけに、ちゃんと効果が発揮されて良かったよ。


 そうなると、貧民の子供じゃない一般の子供も教育を受けたがるわけで、多少の費用を払ってでもと言う人向けの学舎が出来たりと、いろいろ広がっている。

そこでは、鍛錬なども行われているので、兵士になってからの活躍も期待されている。


 当初は都市部のみの動きだったけど、見栄を張るためにわざと地方でやる士大夫がでてくるなど、国全体に広がりつつある。

学問も読み書き計算のみならず、進んだ農法や輸送法等を教えると言ったことも行われているために、それを親に教えてと言うことも出て来ているね。


 一か所でうまく行ったことを他もまねをする、一か所でうまくいくからと言って他でもうまくいくとは限らないみたいなことが実地で分かってきたことで、一律の政策を行う愚かさなんてことが分かってくるなんて副産物もあった。

米より麦を作ったほうが良い場所、麦より米を作ったほうが良い場所なんてこともあるわけで。


 僕の思惑を超えていろいろ大きくなっているけど、まあうまくいっているから良いのかな?

兄帝には、綱紀粛正の目的を果たしたことで、お褒めの言葉をいただけた。


 魔法を使える子供については、専門的に教える場を作ることにもなった。

そこでは、冒険者の魔法使いを雇うなどして、冒険者組合との関係も良好になっている。

危険性が少なく安定的な収入を得られるということで、魔法使いが光に集まりやすくなった。

僕自身が構成のヒントを教えると言ったこともしたこともあるみたいね。


 平時に魔法使いに定住してもらえると、戦時に雇う声をかけやすいし、今のところは良いことづくめ。

そのうち他国もまねをし始めるから、すぐに崩れることだろうけど、やるに越したことはないよね。

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