第三話 魔性って怖いよね
「ところで、具体的にはどうすればいいんですか」
と、僕は質問する。
実にシンプルにボディガードというものの本質を僕は知らない。
というか、知っている人のが少ないと言えるんじゃないか。
むしろ知っている方が人生経験豊富過ぎて、僕には理解し難いものだ。
「具体的には、ボディガードをしてくれればいいわ」
今、一瞬でこの人と意気投合ができないなと思った。
そんな人のボディガードを僕はする必要があるのかどうか・・・と思ってしまうぐらいだ。
というか、する必要性皆無だ。
この人に手出しをしようものなら、その人の首はこの人の周りが放っておかないだろうし。
「ボディガードの概要を教えて欲しいという事です、第一に僕はまだ納得はしていない・・・
ボディガードなら、ファンクラブの人たちがするでしょう?あの人たちはなんだかんだ言って、
あなたの事を守ってくれているだろうし」
それを言うと、彼女の頬が少し膨れ、少し子供じみた言い方で
「それは本質の私をわかっていません、私の本質を知らない人たちに守られているというのは、
あまりにも実感が湧きません、それにあの人たちはそれなりの下心もある…
それをどう危険視せずにいられるでしょうか?」
いや、まあそうだけど…。
下心ない男なんていないだろう。
それをこの人は…つか、面倒くさいな…今に始まったことではないけれど。
「よしわかった、わかりました…とりあえず、山城さんのボディガード…僕しかできないってんなら、僕がやりましょう…ただし、条件があります」
この条件提示…果たして飲んでくれるだろうか。
「この5カ月間、付き合っているという噂はないようにしてほしい」
こればかりは、守ってくれるd
「それはそれで面白そうね」
実に楽しそうですね!本当に!すっごい笑顔!うん、いい笑顔!
じゃねぇよ!なんでそんなに楽しそうなんだよ!
普通に微笑というものなのに、すんごくわかる。
いや、悪質以外に現す言葉が見つからない程だ。
「僕は極力人との接触を避けたいんですよ」
僕は心の底から思う。
相変わらずの夕日が綺麗に映えていて、この人の美をより一層際立たせた。
だが、僕は揺れない。
恋心なんてものは捨てたんだ。ときめきすらも。
いらない感情というわけではないだろうけれど・・・
どうも、失った時の事を、僕はトラウマに抱えているようで。
「あら、接触をそんなに避けたいの・・・そう」
少しがっかりしつつ、彼女は僕に近づいてきて
「でも、私はあなたが思う以上にいじわるだから、いじわるしちゃうわ」
こういうの…なんて言うんだっけ…
たしか…魔性の…女とか…言うんだっけ…
「すごく魅力的な提案ですね、ただ僕には刺激が強すぎて、ボディガードどころではありません
ささ、今日はもう帰りましょう」
僕はささっとこの人を誘導しなくては、という使命感に捕らわれた。
当たり前だ…自分で何か感じ取っていけないものを感じたのだから。
どうにか山城さんは僕の誘導に従ってくれて、学校を後にした。
「はぁ…どっと疲れた…」
ようわけわからん人だった…。
あんな人と五ヶ月も…思うたびにさらに疲れそう…。
そう僕は無駄に思うのだった。