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第二話 そうしてぼくらは出会う

「…」


僕は無言だった、ただただ無言。

どうしてかと言うと、何故かと言うと…そこには…


「あら、お客人?今日は私の貸切にしようと思っていたのに」


ここは公共の場、学生の皆の学び舎。

そこを貸切とは、対したもんだ…と思っていたが、

なるほど、この人…山城光希ならありえるな。

そう思えてしまうほど、この女は凄かった。

…才色兼備。

そう呼ばれる程の魅力を持つのだ・・・この人は。

思うに、この人は、ここで夕日をみようとしたのだろう。

ここはかなりいい夕日スポットだ。

落ち着く。

…ただ、ここへはいつも一人で来ていたんだがな…まあ、必然的に一人だけど。


「山城さんか・・・ここを貸切とは、中々すごい事を言うんだね」


勿論、皮肉な言い方だ。

僕は皮肉をいう事が多いな…うーん、なんか悩みでもあるのかな?

案外満足な日々だと思うけどな…

そんな事を思っていると、この人はこんな事を言ってきた。


「この夕日…綺麗ですよね、私はこの夕日を見るのが好きです、あなたは?」


意外とこの人は世間体でいう普通に属する人に近いようで、

僕の唯一とも言って良いだろうこの景色を好むという特徴に類する事を言い出したわけだ。

フム、何を考えているかはわからないが、どうもこの人はこのままここにいて、夕日を見る気らしい。

僕は扉の方へ向き、そのまま進む。


「それはお邪魔してしまった…謝るよ、どうぞ心ゆくまでこの景色をお楽しみくだされ」


物凄くムカつく言い方で言い放った。

我ながらなんて性格の悪い奴なんだろうと思った。

…加えて、僕の発言に対して、一つも眉を動かさず、凛とした顔で、

僕にこの人はこう言った。


「そうね…この景色を見るのもいいわ、確かにここにいると落ち着いていられるわ…ただ、ただね?

私は鈍くはないと思うのだけれど、私がここにいることを知れば、すぐに駆けつけてくる人も、

この学園にはいるでしょう?それが怖いの…だから」


―私の、ボディガードになりませんか?-


そう、言われた。

…正直冗談だろ、と思った。

僕なんか眼中にないであろうに、

それに加え、僕なんかが手が届かないであろう人であるこの山城光希本人に、だ。


「いや…僕…そういう事したことないからなぁ…」


ここは丁重にお断りしよう、そう思った。

嫌な予感が僕の脳裏にずっとあったからだ。

この誘いに乗れば…降りれない。

終点駅までの一本ワンマン電車な気がするんだ。


「けれど、私は怖いのですよ…ここにいて、この夕日を眺めたいだけなのに、その度に誰かに襲われるという事を考えなくてはいけないのは…とても心狭いです」


じゃあくるなと、そう思った。

ただ本音を口にすればそれこそ面倒な事になりそうだと、

僕は思って、いや経験談なので、ここはそう思った。


そこで、僕はふと先ほどのイケメンくんを犠牲にしてやろうと思った。



「か、かもしれないけれど・・・僕は山城さんを守れるようなやつじゃないよ…ほら、同じクラスにいる

折原のが頼りになると思うよ」


これなら、流石に引くだろう。

康作はどのクラスでも匹敵する程のイケメンくん(残念)だ。

康作の名を出せば、僕より…と思うに違いない。

つかそう思え、頼む思ってください。


…だが、現実はこうだ。


「いえ、そんな事ないわ」


あるわ、むしろないなんて事のがないわ。

逆に僕はこの女の信頼を失おうと思った。


「も、もしかすると僕がボディガードだと、山城さんを襲ってしまうかもしれないよ?」


我ながら、すんごくベタだ。

それに決まっていう言葉は


「その時、つまりはあなたが襲いたくなったら襲えばいい…

ただ、その時は全力で叫び、助けを呼ぶけどね?」


…全く引く気なしかよ…。

そして、僕はいくつか試した。


「僕、実は女性恐怖症で…」


そんな事はない。

むしろ興味津々だ。


「なら、私のボディガードにふさわしいわ、襲ってこないから」


と、普通に薙ぎ払われた。



「僕は女の人の服が大好きなんだ、服フェチなんだ、変態なんだ、そんな変態に任せてもいいの?」


こればかりは、少し嘘だ。

僕は服フェチではなく、純粋に太ももフェチだ。


「問題ないわ、男は皆変態よ、ただあなたは女性恐怖症だから、安全ね?」


「どうしてそう言える」


「だって、私に付きっきりよ?私の監視下なら、あなたが動く事はないわよね」


くっ・・・こいつ・・・できる。

…それからも試しに試したが、この人は見た目に反して頑固で、もう返す事もできず、


「わぁーたよ!わぁーた…ひと月だ…ひと月だけだ」


「…短いわ…せめて5ヶ月ね」


というわけで、5ヶ月になった。

こうして…僕のボディガードの五ヶ月が始まった。



今日の日課

山城光希 頑固に頑固を加え、頑固押しによって、ボディガードを確保。

…全く、なんて神経してんだ。

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