きっかけ
春、僕は入学して数日しか経っていない大学のキャンパス内を歩いていた。講義自体はまだ始まってなく、ここ数日は履修登録についてだとか新一年生のみを対象としたオリエンテーションが続いているため、キャンパス内は新入生だらけだった。
そして新入生が集まるこの期間、盛んに行われているのが部活やサークルの勧誘活動である。新入生獲得のために大小様々な部活やサークルがブースを設けて説明していたり、ビラを配ったりしている。
そんな騒々しい中、新入生である僕の手にも、例外なくたくさんのビラがあった。キャンパス内を歩き回っているうちに、断る間もなく次々と押し付けられてしまったのだ。
今も、僕はとあるイベントサークルについて、そのサークルメンバーである二人の女の先輩達から説明を受けていた。いや、正確には半ば無理やり受けさせられていた。
「ウチは月一で飲み会を開いたり、みんなで夏は海に行ったり冬はスキーをしたり、とにかくいろんなことしてるから楽しいよ。和気あいあいとしているし」
片方の茶髪のセミロングの先輩がそう話す。
「君、カッコイイし、きっとイケるって。ね、今日やるお花見だけでもいいからさ。まずは雰囲気だけでも知ってもらいたいな。ていうか、個人的にすごく来て欲しい。君いるときっと人が集まると思うんだよね」
もう一人の同じく茶髪でロングヘアーの先輩にそう言われた。
僕はその後何度も断ろうとしたのだが叶わず、最後には半ば無理やり花見に連れて行かれることになってしまった。
そんな辟易とした気分で参加することになった花見が、僕の運命を変えることになるとは、この時思いもしてなかった。