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戦場のどん詰まりで椅子を並べるだけの俺が、人々の心を休ませている話 ~戦果ゼロ職、数値にも記録にも残らない“水平”の仕事~  作者: 御門


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第19話 最初の客

第19話 最初の客


戦場の端は、静かだった。


音が消えたわけではない。

剣戟も、怒号も、遠くで続いている。


ただ、ここには届かない。


主人公は、カウンターの向こうに立っている。

手は置かず、寄りかからず、ただ立つ。


湯は沸いている。

木の匂いは、まだ新しい。


椅子は四つ。

間隔は揃っている。

どれも、きちんと前を向いている。


誰もいない。


それでも、主人公は動かない。


しばらくして、足音が一つ分、近づいた。


ノアだった。


剣は下げたまま、歩調も速くない。

立ち止まり、カウンターを見る。


何も言わない。


主人公も、何も言わない。


ノアは、視線を落とし、椅子を一つ引いた。

音は小さい。


腰を下ろす。


湯を見る。

カウンターを見る。

それから、主人公を見る。


「……変わったな」


主人公は返事をしない。


湯を注ぐ。

木のコップを、前に置く。


ノアは受け取り、少しだけ間を置いてから口をつけた。


「悪くない」


それだけ言って、黙る。


沈黙は、長く続いた。


ノアは飲み終え、コップを戻す。

椅子を引く音が、また一つ。


立ち上がり、何も言わずに背を向ける。


去っていく足音が、戦場の音に溶ける。


主人公は、カウンターの向こうに立ったまま、

湯の残りを確かめる。


減っている。


それだけを確認して、

何も変えずに、そこに立ち続ける

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