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三題噺もどき4

星見

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななひゃくろくじゅうろく。

 




 威勢のいい風が、むき出しの肌を撫でる。

 ほんの少し、頬と額が出ているだけで。

 身体が震えるほどに冷たい。

「……」

 久しぶりの晴れ間がのぞき、こうして散歩に出ているのに。

 昼間よりも先に冬の訪れたような夜の時間。

 これからやってくる本格的な冬が不安になるほどに、寒い。

「……」

 そんなに寒いのなら止めてしまえと思うだろうが。

 ちょっとした運動と息抜きと、ついでにアレに対する警戒もほんの少し兼ねているので、止める理由がないのだ。続ける理由がこれだけあるからな。

 それにまぁ、そんなに長時間歩くわけでもない。

「……」

 吐く息が心なしか白く染まる。

 手にはめたグローブはあまり意味がないように思えてきた。こういうのは掌は防寒出来るが、指先はどうにも冷えてしまうなぁ。

 それなりにいいモノを使ってはいるつもりではあるが……やはりカイロくらいもってこれば良かったな。

「……」

 我が家には体調管理には口うるさい親のような従者が居るのだけど。

 いつも通りに出ようとしたら、珍しく玄関で呼び止められたのだ。

 買い物でもあったのかと思えば、寒いだろうからカイロを持っていけと言うことだった。

 しかしまぁ、寒いとは言えまだ11月だ。そこまではいらないだろうと断ったのだ。

「……」

 帰ったら、やっぱり必要だっただろうと呆れ顔で見られるのが目に見える。

 一応、私が主人で、アイツは従者なのだけど……同族から見たら奇妙な関係だろうな。従者に小言を言われたり、締め出されたりするんだから。

「……」

 まぁ、別にそれにどうこう思うこともないし、それくらいの関係が私には心地がいいのだ。

 主人と従者という関係よりは、家族という関係でくくられた方が、私は嬉しい。

 当の本人が、アイツがどう思っているかは定かではないが。

 ……私をあの塔から救ってくれたのは、アイツだからな。

「……」

 そんな昔のことはさておき。

 さすがに冷えた空気の中で散歩をするのも疲れてきた。

 今日は公園にも墓場にもいかず、適当に歩き回っていた。

 頭上には、月と、久しぶりに見た星が光っている。

「……」

 冬の夜空は、空気が澄んでいて輝かしいと聞くが。

 この辺りが住宅街なこともあってか、あまり芳しいとは言えない。

 それでも光星は見えるのだけど。

「……」

 並ぶ彼らには、それぞれ人間がつけた名前がある。

 どれもこれも神話に登場するような神だったり、はたまた動物だったり。

 初めに名前をつけた人間は、相当、想像力が豊かだったのだろう。

「……」

 あまり詳しくはないのだけど、この時期に見える星座は何が居るのだろう。

 冬……まだ夜空には秋が居るのだろうか。

 なんだったか……秋の四辺形というのだったか。かの有名なペルセウスの妻であるアンドロメダと馬の体に羽の生えた幻獣であるペガサスによって作られる、少し歪んだ四角形。

「……」

 そういえば、昨日他の調べ物をしている時にたまたま見かけたのだが。

 どこかに土星が見えるらしい。

 どれか分からないが……。あの一等光っている星だろうか。

「……」

 夜を生きる化物ではあるが、こうして夜空をみて何かを考えることは、案外あまりなかったかもしれないな。

 昼に太陽があるのが当たり前のように、夜には月と星があって当たり前であるがゆえに。

 こうして眺めるなんてことは、してこなかったように思う。

「……」

 しかし実際に見てみると、人間の作り出した星の並びと、それに連なる物語は、なかなかに面白いものがある。神話はまぁ、個人的な趣味で人並みの知識はあるからな。

 今度、星座の本でも買って夜空を眺めながら酒を飲むのも悪くない。

「……ぅ」

 今日は少々、風が強くてこれ以上はやってられないが。

 帰って、土星がどこに見えるのか調べてみるとしよう。

 ついでに、うちの従者も誘って。





「……だから寒いですよって言ったのに」

「……まぁまぁ」

「何がまぁまぁですか」
















 お題:馬・夜空・グローブ

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