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第7話◇みんなnoteに書くことがあるのに

 さて。

 私もサークルさん見てみようかな。

 noteのネタにできそうなこと、見つかるといいけど……。


 かなめを納得させられる内容と文章量の記事を、一つくらいは書き上げないといけない。


 こういう「オールジャンル」と銘打たれた同人誌即売会では二次創作のサークルが多いのだけれど、私はあまりアニメや漫画にハマることはなかった。

 そのため、一次創作――オリジナルの物語が書かれた漫画や小説、グッズ系のうちのアニメキャラが全面的に押し出されていないものや、文具系に見るものが偏ってしまう。


 とはいえ、事前情報は全くないので、まずは机の上のものを眺めながら通り過ぎていく。


 ポスターと、販売物と、値札やポップと。

 こうして客観的に見ると、スペースごとに見栄えが違っている。


 個人的に吟味している時にじっと見つめられると困ってしまうタイプだから、逆にポスターで売り子さんの視線が遮られていたり、何かの作業中でこちらを見ていなかったりするサークルの机上の、「ご自由にお取り下さい」と書いてあるチラシやハガキ大のカードをそろりと取っていく方が気楽だった。


 あとはチラシ置き場で気になるチラシを探す。


 それぞれのペーパーや名刺などの紙片には、自分の活動内容――「漫画書いてます、通販方法の詳細」とか「今後のイベント参加予定と小説の新刊予定」とかの概要や、活動拠点のサイトのURLが書いてある。

 その中に、自分のnoteのアカウントやそのQRコードを掲載している人もいた。


「noteへのリンク書いてる人もいるんだ?」


 試しにスマホを取り出して読み込み、リンク先に飛んでみる。

 すると、そのアカウント主がこのイベント「コミックアクセス5」に参加するという記事が、目につきやすい一番上の位置にパッと表示された。


 そっか。

 こういうふうにグッズや本を作る同人サークルさんたちにも使われてるんだ……noteって。

 お仕事をしたい人のためのノウハウ記事を売るとか、お金を稼ぐマネタイズ系みたいな記事が多いのかと、勝手に思ってた。


 プレゼンみたいなことも、みんなやってるんだね……。


 そういえば、さっきタザキさんの在庫の本にもつけたし、かなめの手伝いをした時もつけていたな、チラシ。

 言われるままに販売物と一緒にお客さんに渡していたのだけれど、そういう役割がきちんとあったのだ。


 素直に「すごいな」と、私はチラシ類を手にしながら思う。


 こういうことを形にしている人たちは、みんな、それぞれ何かしたいことがあって。

 それを誰かに届けたいって、届いて欲しいって、心から願っているんだ。

 だからこそ、伝わるようにとこういうものを作っているんだ。


 だけど――私の中には、そういうものはあるのだろうか?

 かなめが言う通りの「何か」は。


 それとも、そういうものがないからこそ、いまだに何も書くことを思いつけないでいるのだろうか。


「ここまでしても思いつかない人は、きっと書く必要がない人なんだよ、かなめ……」


 熱気に満ちたざわめきに、私の行き場のない独り言は、ゆるりと溶けるように搔き消えていく。


 私は今回も、以前までのイベント参加と同じく、さしてかなめの期待に応えられそうにない様子の自分に気が付いてしまって、ガッカリした気持ちになっていた。


 どうしてみんな、そんなに心に、強い情熱のようなものを持っていられるんだろう……。


 きっとこういう作業にはお金も手間もそれなりにかかっているはずなのに。

 こんなに頑張って何かを作り出している人たちの気持ちに、何でか、私は全く報いることができていないし、自分もそういう人にはなれない。


 それはとても「人でなし」のように思えて、嫌だった。

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